私が教授として本センターに赴任したのは2008年10月1日でしたので、10周年を迎えることができました。鹿児島大学の教職員、地域医療機関の皆様、患者会の皆様に支えられ、学生に応援されながら、新しい教育を提案し、実践することができました。心より感謝申し上げます。
現在、助教1名、兼務教員としてIT関連の専門家である村永文学講師、日本での歯学教育のリーダーの一人である田口則宏教授が加わり、3名の学外協力研究者、事務補佐1名で、医学教務係の支援を受けながら運営しております。他の医学部の教育センターに比べて、専任教員は非常に少ない組織ですが、教務委員会をはじめ、非常に多くの教職員が教育に関わる望ましい体制となっています。
本ブログはしばらくお休みしておりましたが、改めて教育に関する情報発信を行う場にと思い、再開いたしました。
当センターは医学教育に関する様々な業務を行っておりますが、私の研究テーマは「プロフェッショナルとしての医学生の成長」について調査、分析です。2014年の本ブログで「医学生の成長」について記載したように、医学教育の目標は、単に、知識や技能を身につけることではなく、患者と社会のために医師として考え、振る舞い、学び、生活することを身につけたプロフェッショナルな「医師」を育成することです。学生や研修医が成長するプロセスをを分析し、教育に役立てたいと思っているところですが、そこで重要とされているのが、「人」「地域社会」との関わりです。患者・ご家族、先輩医師、同僚、チームとして関わる医療専門職、そして地域の文化、生活、医療や保健・福祉の制度の中で、医師・医療者としての役割を果たしながら、自分に必要とされ、また期待されていることに対応しようと経験することが学びとなります。医師としての喜びも挫折や悩みも全て、「人」「地域社会」との関わりが生み出すものであり、それらを経験として成長します。いつしか「自分のため」に学んでいた学生が、「患者・地域のため」に考え、努力する姿勢を身につけていきます。
鹿児島で学生・研修医が学ぶ良い点は、厳しくも温かい「人」とのふれあいがあり、教育の場で常に「地域社会」が意識され、多様な文化・価値観を尊重した医療を学ぶことだと思います。医療の制約を実感する場面では、生き方、人生観を考えます。また、社会の中で学ぶとは、自分の行いがどのように社会に影響するか、そして自分自身がどれほど期待されているかを実感し、学ぶことや行動に責任を持つことを自覚します。すべてが医師としての成長に必要な要素です。
鹿児島での生活が10年になると、大河ドラマ「西郷どん」の薩摩言葉が違和感なく理解できるようになっていましたし、島の場面では、島の空気、そして本土からの距離を感じながら楽しんでいました。郷中教育での先輩後輩のつながりは、現在の鹿児島にも生きており、それが医学教育を支えています。今、私が仕事として関わっていることに、どれほどの歴史、文化が影響しているか、改めて理解しましたし、それらに恥じない次世代育成を私の残りの任期3年半で、しっかりと勤めていきたいと考えております。
今後ともご支援の程、よろしくお願い申し上げます。