医学教育を学ぶ機会は多数あります。一般的なものは教育機関がその組織に属している職員を対象に行う講習会や研修〜多くはfaculty developmentと呼ばれます〜に参加することです。これは、その組織で求められている教育者を育成する目的で実施されるものですから、教育者個人に求められている能力を修得することができると期待できます。その他に、様々な組織が各種テーマのワークショップ、セミナー、講演会等を提供しています。何が自分の教育活動に必要なのかを考え、おおいに活用されるとよいでしょう。
しかし、一泊二日の講習会等に参加しても、そこで聞いた内容を批判的に吟味し、取捨選択、応用して自分の教育現場にあてはまる教育活動を計画して実施することは容易ではありません。実は、短期集中型のワークショップでは十分に学べないということは20年前から指摘されており、実践しながら長期に学習し、フォローアップすることの重要性や、理論を実際に応用する学習の重要性が認識されています。アメリカでは教育機関がフェローシップと呼ばれる1〜3年の教育プログラムを提供していることがあります。教育に興味を持ち、教育業務を担うことを期待されている教職員が勤務時間中に定期的に医学教育の講義・討議に参加することを所属部署が認め、機関として人材育成を行うシステムです。これを実施するためには教育機関内にそれを実施できる組織があることが前提です。定期的に教育の基礎を学び、議論することで教育への関心が高まります。部署を超えたネットワークが作られます。こうしては知識ではなく実践のための能力である医学教育を習得します。どのような教育を行い、そのためにどのような教育者が必要とされるかは、教育機関によって異なります。教育機関が教育者を育てる意義は非常に大きいと考えます。
医学教育者、臨床研修指導医養成のための講習会を定期的に実施している医学部、大学病院も多いと思います。その教育機関のめざす医療者育成・教育の理念を創造・共有し、それを実現するための教育プログラムの構築、必要とされる指導者育成、教育ツールの開発、教育成果の測定など、組織ならではの講習会を実施していただきたいと思います。教育者育成は、教育機関のアクティビティを向上し、教育成果をあげ、競争力を高めるために必要なことなのです。