鹿児島大学 医歯学教育開発センター

教員日誌医歯学だより

No.21 オタワ会議

オタワ会議とは、医学教育の分野における学習者評価(試験、成績判定など)を討議する国際学会で、2年毎に行なわれます。今回で16回目となり、久しぶりにオタワでプレカンファレンス2日間と3日間の学会として開催されました。開始された当初はOSCE(客観的臨床実技試験)をいかに導入、実施するかがホットなテーマだったのですが、現在では入試から臨床研修、生涯教育まで、臨床の実践の場の評価も含めて、様々な発表が行なわれます。

最新の話題は、プロフェッショナリズムで求められている能力、資質、臨床の現場で発揮されるコンピテンシーの評価、そして、そのような能力、資質を獲得することのできる入学者の選抜方法などです。コンピテンシーを修得すべき能力とし、客観試験(多肢選択問題形式の国家試験など)とOSCEなどのシミュレーションによる試験を適切に実施し活用することに加え、それでは評価できない能力を指導者が現場で観察し、評価基準に従って定量的に判定するだけではなく、記述(narrative)でポートフォリオに記録していく評価が、正式な研修評価として導入されている国、領域もあります。医学教育における評価は多様化し、変化しています。多肢選択問題の試験の合否だけではなく、医療者に求められている能力を適切に豊かな情報で評価し向上に活用するための進化です。本質的な医療者の評価へのチャレンジです。

評価が学習を促すといわれます。医師、医療者の持つべき臨床能力を医療現場での態度・行動で評価し、その結果を教育・研修に還元することができ、そしてその活動が質の高い教育として評価されるのであれば、医学教育に携わるものとして納得がいきますし、迷いがありません。試験対策という言葉とは縁の無い教育の実践です。

今回の国際学会に世界各国から2000人を超える参加者がありましたが、日本からの参加者は5名のみでした。私は鹿児島大学で現在実施している医学生の成長の過程に関する研究発表をさせていただきました。先進的な取り組みをしている海外の動向を理解し、日本で更に発展させなければいけないという思いを再認識した学会でした。

 

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