7月23日24日に日本医学教育学会が広島で開催されました。また、7月27日には文部科学省主催の医学・歯学教育指導者のためのワークショップが東京で開催されました。医学教育のグルーバルスタンダードと教育の質保証、そして日本の臨床実習についての議論が続けられました。これは、ECFMGが「2023年から国際的な認証機関によって教育水準が保証された大学の卒業生だけに受験資格を限る」と公表したことが発端となっています。日本には大学の認証制度はあっても医学教育の認証はありません。また、カリフォルニア州の「臨床実習は72週以上」という基準ではほとんどの大学は認証されないことになり、日本の医学部卒業生がアメリカで臨床を研修する道を断たれるのではないかと危惧されました。
これまでは各国がそれぞれの状況で医学教育の保証(認証評価)及び/あるいは医学部卒業生の保証(医師資格試験)で医師の質の保証を行っていました。医学部卒業生の輸入国であるアメリカ、人の移動が自由となったEUに新たな状況に対応する必要が生じ、グローバルスタンダードと医師の質保証について議論が続いています。WHOの関連機関であるWorld Federation for Medical Education WFMEが医学教育のグロ-バルスタンダードを提示し、増加している医学部の教育の質を保証しようと活動しています。
これまで日本の医学教育の評価は医師国家試験の合格率でした。国家試験が膨大な知識の詰め込みを必要とするものになってしまったため、それ以外の本来の医学教育、例えば臨床実習の質と量の改善を妨げているのは明らかな事実です。日本の国家試験がより高い医師の質を求めて出題範囲、問題数を増やしていったことを考えると、それがグローバルスタンダードからかけ離れ、医師の質の向上を妨げていると評価されているのは残念な状況です。韓国が医師国家試験に臨床の実技試験を取り入れ、医学教育の認証制度を入念な計画の基に開始した話を学会で聞くことができましたが、我が国の医学教育を取り巻く制度も近い将来改善し、本来の医師養成を後押しし、教育の質を評価するものになって欲しいと考えます。文部科学省のワークショプで医学教育課の新木課長が「グローバルスタンダードを超える医師の養成」を達成目標として掲げられたことに期待しております。