診療のご案内

関節リウマチ

どんな病気?

 我が国には、関節リウマチの患者さんが70~80万人といらっしゃると考えられています(人口の0.3~1%)。発症年齢は40歳代がピークです。女性の発症は男性の3~4倍です。

 複数の関節に長期間炎症が続き、関節が破壊されます。関節を包んでいる滑膜という組織が増加して血流が増え、白血球が侵入してきます。それにより引き起こされる炎症で軟骨や骨が溶かされます。

 関節リウマチが生じる機序には不明な点が多いです。自己免疫疾患の一つで、本来細菌やウイルスなど外敵を攻撃すべき免疫が、誤って自己の関節を攻撃します。遺伝的要因と、喫煙、歯周病などの環境要因が密接に関連し、関節リウマチの発症に関与します。

 症状は微熱や倦怠感を伴うことが多いです。また、抑うつなどの精神状態と関節リウマチの活動性は密接に関連しています。初発症状は、手または足の関節痛或いは手のこわばり感です。手指に朝のこわばりが、30分以上持続します。関節が対称性に腫れて痛みを伴います。関節炎が持続すると、軟骨・骨、および腱などの周囲の組織が傷害され、関節が変形し、機能障害が生じます。手術が必要になることもあります。これらによる日常生活動作ひいては生活の質の低下を生じさせないことが最も重要な長期目標です。

 関節以外の症状としては、リウマトイド結節と呼ばれる皮下のしこりが有名です。血管炎が生じると皮膚潰瘍や神経障害を生じます。手指や足趾の壊疽、臓器の梗塞、上強膜炎、間質性肺疾患、気管支拡張症、胸膜炎などを合併することもあります。

 慢性炎症に伴う貧血、骨粗鬆症もしばしば認められます。関節リウマチのコントロールが不良の状態が長期間続くとアミロイドーシスという病気が発症し、消化器症状や腎不全を合併します。また、動脈硬化が加齢以上に進むことで心血管疾患のリスクが高まり、平均寿命が約10年短縮するといわれています。

検査と診断は?

A 炎症反応の検査
  1. 赤沈
  2. CRP
B 免疫学的検査
  1. RF(リウマトイド因子)
  2. 抗CCP抗体
C MMP-3
D 単純X線検査
軟部組織の腫脹、関節裂隙の狭小化、骨びらん
E CT検査
F MRI検査
骨髄浮腫、骨びらん、滑膜炎
G 超音波検査
Bモードで滑膜肥厚、パワーDopplerで滑膜の血流を観察し、滑膜炎を評価する。

 関節リウマチの診断は必ずしも容易ではありません。2010年にヨーロッパリウマチ学会(European League Against Rheumatism: EULAR)が主導してアメリカリウマチ学会 (American College of Rheumatology: ACR)と合同で新分類基準を作成しましたが、診断の感度は従来より高くなりましたが、特異度は低下しました。したがって現在でも十分な知識と経験を有するリウマチ医が、各所見の総合判断と、十分な鑑別診断を行ったうえで、関節リウマチの診断をしています。

活動性の評価は?

 関節リウマチの疾患活動性評価として、血液検査が日常診療において使用されており参考にはなりますが、各種炎症マーカーが正常でも疾患活動性が高いことはよくあり、血液検査のみで疾患活動性を評価することはありません。Treat to target: T2T(目標設定した治療)という概念が浸透し、各種関節リウマチ治療ガイドラインでも、総合疾患活動性指標を用いた関節リウマチの疾患活動性評価とそれに基づいた治療の変更が推奨されています。

総合疾患活動性指標の種類と定義
評価法 定義(計算式)
DAS28 0.56×√TJC28+0.28×√SJC28+0.70×ln(ESR)+0.014×PGA (mm)
SDAI TJC28+SJC28+PGA (cm)+PhGA (cm)+CRP (mg/dL)
CDAI TJC28+SJC28+PGA (cm)+PhGA (cm)

TJC28:28関節での圧痛関節数、SJC28:28関節での腫脹関節数、ln:自然対数、PGA:患者の全般評価(visual analogue scale〈VAS〉でmmなら0~100、cmなら0~10)、PhGA:担当医による全般評価

各疾患活動性指標の基準値
評価法 活動性評価
高度 中等度 軽度 寛解
DAS28 (ESR) >5.1 3.2~5.1 <3.2 <2.6
DAS28 (CRP) >4.1 2.7~4.1 <2.7 <2.3
SDAI >26 ≦26 ≦11 ≦3.3
CDAI >22 ≦22 ≦10 ≦2.8

治療は?

分子生物学や免疫学の進歩により、関節リウマチの薬物治療は画期的な変革をもたらしました。現在、関節リウマチ治療の目標は、臨床症状がみられず、関節破壊や身体機能障害のリスクがほとんどない状態“臨床的寛解”となっています。

関節リウマチ治療においては回復不可能な関節破壊や身体機能障害を生じないことが重要であり、そのためには早期診断と早期治療が大切です。上述した検査所見をリウマチ医が総合的に判断し、早期診断することが重要です。

関節リウマチ薬物治療の長期的目標は患者さんの長期予後(生命および身体機能を中心とした生活の質〈QOL〉を改善することです。そのための短期的目標としては、関節炎を主体とした関節リウマチの炎症を取り除き、臨床的寛解あるいは少なくとも低疾患活動性となるよう、上述した評価法を用いて定期的な疾患活動性の評価と、それに基づいた治療の適正化(T2T)が重要です。これにより、関節破壊とそれに伴う身体機能低下を阻止し、動脈硬化や血管炎などの血管病変を含めた関節外症状による生命予後も改善できると考えられています。

A 従来型合成疾患修飾性抗リウマチ薬(csDMARDs)
  1. メトトレキサート(MTX)
    アンカードラッグ(中心的薬剤)として各種ガイドラインでも第一選択薬とされています。骨髄抑制、口腔・消化管粘膜障害、肝障害などの副作用を予防するため葉酸製剤の併用が原則。
  2. サラゾスルファピリジン
  3. レフルノミド
  4. タクロリムス
  5. イグラチモド
B 生物学的製剤(bDMARDs)
  1. TNF阻害薬
    インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、ゴリムマブ、セルトリズマブ・ペゴル
  2. 抗IL-6受容体モノクローナル抗体
    トシリズマブ、サリルマブ
  3. T細胞選択的共刺激調節剤
    アバタセプト
C 分子標的合成疾患修飾性抗リウマチ薬(tsDMARDs)
  1. TNF阻害薬
    トファシチニブ、バリシチニブ、ペフィシチニブ、ウパダシチニブ、フィルゴチニブ

治療前の重症度や副作用リスクの評価を行ってから、個々の患者さんと社会的・家庭的事情、価値観などを含めて十分に治療方針を検討し、話し合ったうえで治療方針を決定します。