多発性骨髄腫(Multiple Myeloma)は白血球の一種である形質細胞が異常に増殖する(がん化する)血液疾患です。 形質細胞は体を細菌・ウイルス・カビなどから守るたんぱく質(免疫グロブリン;抗体)を産生する細胞です。異常な形質細胞はその免疫グロブリンを大量に産生するため、いろいろな臓器障害を生じます。また、異常な形質細胞から産生される免疫グロブリンもまた異常な免疫グロブリンであり、免疫力はかえって弱くなります。
初期では無症状なこともあり、貧血や尿検査異常など健診異常、感染症や骨折、心筋梗塞などを契機に発見される場合もあります。
主な症状としては以下が挙げられます。
まずは治療が必要な骨髄腫(症候性骨髄腫)とすぐには治療が必要でない骨髄腫(無症候性骨髄腫)を鑑別することが大切です。その為、骨髄検査を行います(形質細胞腫の場合は腫瘍生検)。治療の予後を予測するため特定の染色体や遺伝子の異常を検査することもあります。
無症候性骨髄腫は無治療ですが定期的に経過観察が必要となります。症候性骨髄腫(貧血の進行や病的骨折が見られるなど)に進展した場合は治療の導入となります。
症候性骨髄腫は年齢や臓器障害の程度、身体能力の程度に応じて治療方針を決定します。自己末梢血幹細胞移植の適応があるかないかでまず方針を大きく分けます。内服薬、注射薬を複数組み合わせて定期的に治療を行います。感染予防のため肺炎予防薬やヘルペス予防薬、免疫グロブリンを、骨折予防のため骨粗鬆症の予防薬を定期的に投与することもあります。
若年の症例(65歳以下)は再燃を繰り返した場合は同種移植による根治を目指す場合もありますが、骨髄腫は基本的に根治が難しい病気です。そのため、治療の目標は骨髄腫関連症状が出ないようにできるだけ疾患の増悪を防ぎ、コントロールしていくことです。再燃をした場合は、他の治療に変更しますので、長期的な定期的な外来通院が必要となります(もし、再燃を来して臓器障害が進行してしまった場合は本来やるべき治療ができなくなってしまう可能性もありますので、自己判断での外来通院中断は避けてください)。