診療のご案内

骨髄腫

どんな病気?

多発性骨髄腫(Multiple Myeloma)は白血球の一種である形質細胞が異常に増殖する(がん化する)血液疾患です。 形質細胞は体を細菌・ウイルス・カビなどから守るたんぱく質(免疫グロブリン;抗体)を産生する細胞です。異常な形質細胞はその免疫グロブリンを大量に産生するため、いろいろな臓器障害を生じます。また、異常な形質細胞から産生される免疫グロブリンもまた異常な免疫グロブリンであり、免疫力はかえって弱くなります。

初期では無症状なこともあり、貧血や尿検査異常など健診異常、感染症や骨折、心筋梗塞などを契機に発見される場合もあります。

主な症状としては以下が挙げられます。

貧血
骨髄中で形質細胞が異常増殖するため正常な造血能が障害され貧血が進行します。
病的骨折
異常形質細胞の影響で骨粗鬆症が進行し、軽い負荷で骨折を生じます。特に脊椎に骨折を生じると神経麻痺による重篤な症状が生じることがあります。また、骨の成分であるカルシウムが大量に放出されることにより高カルシウム血症(意識障害、急性腎不全)も起こります。
過粘稠症候群
産生される大量のタンパク質により血液の流れが悪くなり、血栓症・塞栓症を生じやすくなります(脳梗塞・心筋梗塞など)。
腎不全
異常たんぱく質により腎不全が生じると最悪の場合、透析治療が必要となります。
アミロイドーシス
一部の骨髄腫はアミロイドーシスという異常たんぱく質の沈着症を生じ、心、腎、消化管、神経などに重篤な機能障害を生じることがあります。
易感染性
正常な免疫グロブリンが低下するため、感染症に弱くなります。
骨髄腫の症状

検査と診断は?

まずは治療が必要な骨髄腫(症候性骨髄腫)とすぐには治療が必要でない骨髄腫(無症候性骨髄腫)を鑑別することが大切です。その為、骨髄検査を行います(形質細胞腫の場合は腫瘍生検)。治療の予後を予測するため特定の染色体や遺伝子の異常を検査することもあります。

治療は?

無症候性骨髄腫は無治療ですが定期的に経過観察が必要となります。症候性骨髄腫(貧血の進行や病的骨折が見られるなど)に進展した場合は治療の導入となります。

症候性骨髄腫は年齢や臓器障害の程度、身体能力の程度に応じて治療方針を決定します。自己末梢血幹細胞移植の適応があるかないかでまず方針を大きく分けます。内服薬、注射薬を複数組み合わせて定期的に治療を行います。感染予防のため肺炎予防薬やヘルペス予防薬、免疫グロブリンを、骨折予防のため骨粗鬆症の予防薬を定期的に投与することもあります。

使用される主な薬剤
ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、イクサゾミブ、レナリドミド、ポマリドミド、サリドマイド、デキサメサゾン、ダラツヅマブ、エロツズマブ、メルファラン、シクロフォスファミドなど。

治療経過等について?

若年の症例(65歳以下)は再燃を繰り返した場合は同種移植による根治を目指す場合もありますが、骨髄腫は基本的に根治が難しい病気です。そのため、治療の目標は骨髄腫関連症状が出ないようにできるだけ疾患の増悪を防ぎ、コントロールしていくことです。再燃をした場合は、他の治療に変更しますので、長期的な定期的な外来通院が必要となります(もし、再燃を来して臓器障害が進行してしまった場合は本来やるべき治療ができなくなってしまう可能性もありますので、自己判断での外来通院中断は避けてください)。