わたしたちの身体を守る免疫が自身の臓器を標的としてしまうためにおこる病気が自己免疫疾患です. 多発性筋炎・皮膚筋炎は, この免疫が筋や皮膚に対して働くことが原因でおこる自己免疫疾患であり, 全身の病気である「膠原病」の1つともされています. 筋炎の患者さんは全国におよそ2万人程度いるとされており, 男女比は1:3と女性で少し多いとされています.
症状は全身のだるさ, 体重減少などの炎症による全身の症状に加え, 筋肉痛, 近位筋の左右対称の筋力低下, 嚥下筋の低下などが特徴的です. また特徴的な皮疹が出ることがあり, 皮膚症状を伴う場合は皮膚筋炎, 伴わない場合は多発性筋炎として区別されます. 筋炎という病名ですが, 皮膚症状が強く出て筋症状が強く出ないこともあります. また間質性肺炎という特殊な肺炎を合併することがあり, 間質性肺炎が急速に進行すると生命にかかわることもあり注意が必要です. このほか悪性腫瘍(がん)を合併しやすいとも言われており, 一般的ながん検診を受けることも重要です.
先述したような臨床症状に加えて血液検査, 筋電図検査, 筋生検, CT・MRI検査などで総合的に診断します.
治療は薬物療法が中心で, 副腎皮質ホルモン剤(ステロイド)が効果的です. ステロイドは副腎皮質から分泌されるホルモンを人工的に合成した薬剤です. 炎症や免疫機能を抑える作用をもち, 多発性筋炎・皮膚筋炎の治療の中心となります. 最初は治療効果を重視して多めに投与し, 治療効果が出てきたら徐々に量を減らしていきます.
ステロイドが無効である場合や薬の副作用が強い場合には, 免疫抑制剤を用いることがあります. 具体的にはアザチオプリン, シクロホスファミドといった薬剤を個人個人の状況に応じて使い分けます. 進行が速い間質性肺炎を合併している場合などには,最初から十分量のステロイドと同時に免疫抑制剤を使用することもあります.
さらに, ステロイドが効果不十分な場合や, 筋力低下が著しい場合などにガンマグロブリン製剤大量療法を実施することがあります.
治療が効いて来たらリハビリテーションを実施することも重要であり, 薬物治療による効果がみられた後には, 筋力を回復させるためのリハビリテーションも行っていきます.
まずは十分な安静と休養が重要ですので, 疲れを感じたら無理せずに休みましょう. 良眠も重要です. またステロイドの副作用で食欲が増すことがあり,食べ過ぎに注意しましょう. リハビリは無理のない程度で行っていただくことが望ましく, 運動に際しては皮膚症状のある方は紫外線を避けることも重要です. また感染症には十分注意が必要であり, 手洗いうがい・マスク装着などの一般的な感染予防を実施しましょう.
皮膚筋炎・多発性筋炎は厚生労働省の指定難病の1つであり, 医療費の公費負担や支援団体, 情報提供サイトなど患者さんをサポートする体制があります.困ったことがあればいつでも主治医や当科スタッフにご相談ください.