当研究室で大学院生として研究された田上医師(博士)は、「JST頭脳循環を加速する若手研究者戦略的海外派遣プログラム」において、H26年6月よりアメリカのベイラー医科大学 遺伝子・細胞治療センター Brenner教授のもとへ留学中です。
以下、留学だよりです。
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留学だより
田上聖徳
鹿児島大学消化器・乳腺甲状腺外科の田上聖徳と申します。私は2010年より大学院の2年間を遺伝子治療・再生医学分野教室で小戝教授を師事し、多因子制御の増殖型アデノウイルスベクター(m-CRA)を用いた癌幹細胞を標的とする新規技術開発の研究に従事しておりました。この度、小戝教授より日本学術振興会の「頭脳循環を加速する若手研究者戦略海外派遣プログラム」に参加する機会を与えて頂き、2014年6月よりアメリカ、テキサス州のヒューストンにありますベイラー医科大学に留学中です。
現在私が所属しているCenter for Cell and Gene Therapyは、前センター長でありますMalcolm Brenner教授を中心とした総勢100人以上のメンバーで、遺伝子・細胞治療の分野において基礎研究から臨床応用まで常に世界をリードしている研究室です。当センターはT細胞を用いた免疫療法が世界的に有名で、特に遺伝子改変によって腫瘍反応性を付与するキメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T cell)療法を中心に臨床試験を数多く行っている施設です。ベイラー医科大学はヒューストンのMedical Center内にあります。Medical Centerには42の病院、研究施設が集まっており、初めて訪れた時は、その規模の大きさに圧倒されました。アメリカでもこのような規模の施設は他に無く、世界最大の医療センターだそうです。ベイラー医科大学の付属病院には、日本でも有名なMethodist、St. Luke’s(聖路加病院の本部)などがあり、私が所属しているCenter for Cell and Gene Therapyは、主にTexas children’sという小児科の付属病院と連携して小児の悪性腫瘍に対する細胞療法の臨床試験を数多く行っております。研究室には世界各地から優秀なPhD, MDの若者が集まっております。MDの方々は私のように留学で来られている方もいれば、クリニカル・フェローとしてこちらの病院で臨床をしながら研究している方、またMD/PhDコースの医学生もいます。学生の頃から多くの論文を読み、研究に対する姿勢や研究を組み立てる能力の高さなど彼らには驚かされます。こちらに来た当初は、私にとっては免疫学という新たな分野であったため大変苦労致しましたが、ラボの仲間達に随分助けて頂きました。
私の今回の留学は日本学術振興会の「頭脳循環プロジェクト」より、交通費、そして2年間の滞在費まで頂いております。日本も含めた世界中から留学して来られている皆さんとお話すると、やはり留学助成金の獲得が一番のハードルであったと言われます。特に当施設は自費での留学を認めておらず、助成金の持参が受け入れの条件になっており、狭き門となっている理由の一つと思われます。私を選抜して頂いた小戝教授、ならびに鹿児島大学理工学研究科の隅田泰生教授に、このような施設で学べる機会を頂いたことを日々感謝しております。先生方のご好意に応えられるよう努力しなければと改めて思う毎日です。
小戝ラボで開発されたm-CRAの一つであります、サバイビン依存性m-CRAによる治療が鹿児島大学で本邦初の医師主導治験として今年度より行われます。m-CRA癌治療技術の利点を生かし、当センターのCAR-T cellと組み合わせることで、癌根治に近づく革新的な治療技術を開発することが、今回の国際共同研究の目的です。私自身の今回の留学の目的は、この併用療法に必要なCAR-T cellに関する知識と技術を小戝ラボに伝えることになります。できるだけ多くの知識と技術を習得し、小戝ラボと当センターの国際共同研究に貢献できるよう残りの留学期間1日1日を大事にし、研鑽を積まなければと思っております。
小戝教授には、お忙しい中、時には国際電話で長時間にわたりこちらでの研究内容についてご相談させて頂いたりと、ご迷惑ばかりおかけしておりますが、このような貴重な経験をさせて頂いていること、この場を借りて厚く御礼申し上げます。また最後になりましたが、今回の私の留学を支えて下さっている全ての方々に心より感謝致します。