研究内容
われわれの体はおよそ37兆個もの細胞からなります。そのうち、神経細胞と筋細胞は「興奮性細胞」とよばれ、細胞膜の電位の変化を使って瞬時に情報伝達を行う特徴を有します。例えば、脳の1000億個以上の神経細胞はネットワークでつながって瞬時に情報をやりとりし、それがわれわれの感覚情報処理、運動制御、思考や感情といった高次脳機能のもとになっています。また、心臓では、洞房結節で発生した活動電位が時空間的に順序だって心筋全体に伝搬し、心筋が収縮することで、全身に血液を送り出すポンプとしての機能を果たします。
神経細胞や筋細胞に興奮性を与えるのは、直接的には細胞膜に発現するイオンチャネルです。Na+、Ka+、Ca2+など多くのイオンチャネルの相互作用により、静止電位や活動電位が制御・調節されます。イオンチャネルの変異は神経や筋など興奮性組織のさまざまな疾患の原因になっています。また、生物がもつイオンチャネルを利用することで、神経細胞や筋細胞の興奮性を操作でき、オプトジェネティクス(optogenetics)などの最新技術の開発につながりました。
私たちの研究室は、神経細胞や筋細胞で興奮性が獲得され調節される仕組みをネットワーク、組織、細胞、分子のレベルで明らかにしようとしています。具体的には以下のプロジェクトを進めています。
- 1.大脳神経ネットワーク構築における神経活動の役割
- 大脳は複雑な長距離・局所の神経配線からなります。大脳の神経ネットワーク構築において神経活動がどのような役割を担っているか、最新の神経活動記録・操作技術を使って明らかにしようとしています。
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- 2.大脳神経細胞の興奮性獲得のメカニズムと疾患
- そもそも神経細胞は、発生過程のいつ、どのように興奮性を獲得するのでしょうか? 神経発生生理学の根本的な問いを追求するとともに、イオンチャネル変異による神経回路構築の異常を明らかにする疾患研究をめざします。
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- 3.L型Caチャネル (Cav1.2) の活性調節機構
- Caチャネルは、細胞内へのCa2+の流入量を調節し、細胞の興奮性に寄与しています。パッチクランプ法を用いてCav1.2チャネルの調節に関わる細胞内因子の探索と制御機構の解明を試みます。
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