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1. 大脳神経ネットワーク構築における神経活動の役割

‐Impenetrable jungles where many investigators have lost themselves [大脳は多くの研究者が迷い込んで道を見失ったジャングルだ]‐ 現在の神経科学の基礎をつくったRamon y Cajalがおよそ100年前に残した言葉です。哺乳類の大脳は様々な長距離・局所の配線からなり、さながらジャングルです。Cajalの時代に比べて、現在は技術も知見も飛躍的に進んでいますが、未だにどのような種類の神経細胞がお互いにどのようなルールでつながっているのか、回路構造もその形成機構も複雑すぎてすべては明らかになっていません。

私たちのグループは、神経回路の可視化、神経活動操作、神経活動記録の技術を用いて、マウス大脳の神経回路構築における神経活動の役割を明らかにしてきました。発達期の大脳神経回路の形成には「遺伝」と「環境」が重要だと言われます。私たちのグループは、それとともに脳自身の自発的な神経活動も重要な役割を担うことを明らかにしました(参考文献:Mizuno et al., 2007: Mizuno et al., 2010: Tagawa and Hirano, 2012: Hagihara et al., 2015)。具体的には、大脳の中で代表的な長距離軸索投射である脳梁軸索投射の形成に、発達期の自発的神経活動が必須であることを示しました(Mizuno et al., 2007: Mizuno et al., 2010: Tagawa and Hirano, 2012)。さらに、大脳視覚野の方位選択性を指標に、視覚情報表現の発達に発達期の自発的神経活動が必須であることを示しました(Hagihara et al., 2015:東京大学医学研究科統合生理学教室の大木研一研究室との共同研究)。

さらに最新の神経回路可視化、神経活動操作、神経活動記録の技術を用いて、大脳の長距離と局所をつなぐ神経回路構築ロジックの解明に向けた研究を進めています。

脳梁投射をモデルとした、長距離回路と局所回路をつなぐ神経回路構築ロジックの解明のイメージ 脳梁投射をモデルとした、長距離回路と局所回路をつなぐ神経回路構築ロジックの解明
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