診療研究案内 消化器領域 消化管・胆膵グループ
消化器領域 消化管・胆膵グループ
スタッフ
教官: | 上村修司(准教授)、橋元慎一(准教授)、佐々木文郷(講師)、田ノ上史郎(講師、医局長)、有馬志穂(助教)、小牧祐雅(特任助教、地域医療・健康医学講座)、田中啓仁(特任助教、地域医療・健康医学講座)、前田英仁(特任助教、地域医療・健康医学講座) |
医員: | 樋之口真、矢野弘樹、藤野悠介、荒木紀匡、松岡 慧、児島一成、柿原敦子、小牧蕗子 |
消化器癌に対する診療
消化管癌に対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)
早期消化管癌に対する内視鏡治療は、我々が得意とする分野の一つです。
従来行われてきた内視鏡的粘膜切除術(EMR)に比べ、より大きな病変や潰瘍瘢痕症例でも一括切除することができ、高い根治性が得られる内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は、全国の先進施設同様の技術が提供出来るように、積極的に取り組んでいます。
その結果、導入当初の2009年は、年間65例に過ぎなかったESDですが、近隣の先生方をはじめ県内全体の先生方からの御紹介により、2011年以降は年間120例以上の消化管癌に対するESDを行うことが出来ました。(累積で550症例以上に達しています)
もちろん治療数だけでなく、治療成績につきましても、治癒切除率・偶発症発生率ともに良好な成績です。特に、高度線維化症例、潰瘍瘢痕症例や胃噴門部や十二指腸病変、広範囲な病変など高度の技術を要する病変も、当科では安全・確実なESDを心掛けており、実際良好な成績が得られています。
さらに咽頭表在癌に対するESDも当院耳鼻咽喉科の協力のもとに本格的に導入し現在までに約20例を行っていますが、他の部位のESD同様、良好な成績をあげています。今後さらに増加するものと考えています。
消化器癌に対する化学療法
消化器内科で治療する癌は、胃癌、食道癌、結腸・直腸癌、肝臓癌、胆道癌、膵臓癌と非常に多岐にわたっています。H22年度の全癌死亡者353318人中(厚労省、統計情報・白書)、 これら消化器癌による死亡者の割合は半数以上を占め、がん診療において消化器内科が担う役割は非常に大きくなっています。また、我が国においても腫瘍内科医・癌治療認定医の育成が行われ、より専門的な癌医療がすすめられています。
一方、消化器癌はQOLを損なう様々な症状を伴うため、より専門的なマネージメントも必要とされます。鹿大病院消化器内科では、消化器内科と癌医療の専門性をうまく調和させ、国内はもとより世界最高水準の癌医療を実践することを目標としています。
消化器内科専門医のスタッフに加え、杏林大学腫瘍内科での修練を積んできたスタッフが2名在籍し、昨年度からはより専門的な臨床と教育が実践できるようGI oncologyチームを立ち上げました。
現在はエビデンスに基づいて標準的な化学療法を確実に行うことを主体としていますが、今後は臨床試験にも積極的に参加し標準治療の確立に貢献していきたいと考えております。
炎症性腸疾患、小腸疾患に対する診療
炎症性腸疾患
小腸は、以前は暗黒大陸とも言われ、内視鏡で観察不能な臓器であった。しかし、近年ダブルバルーン内視鏡、カプセル内視鏡が開発され、全小腸の観察が可能になっている。それに伴い原因不明の消化管出血(OGIB)とされていた患者さんの中に器質的疾患が発見されるようになってきました。当院でも2005年ダブルバルーン内視鏡、2008年カプセル内視鏡を導入し、小腸癌、小腸静脈瘤、小腸悪性リンパ腫、小腸GIST、小腸潰瘍、小腸ポリープ、メッケル憩室、angiodysplasiaなどが発見され、また小腸内視鏡を用いた治療として、内視鏡的小腸ポリープ切除術、止血術、異物除去などを行っている。
実績
カプセル内視鏡検査:50例
バルーン内視鏡検査:20例
胆道・膵疾患に対する診療
胆道・膵疾患
膵・胆道腫瘍の診断・治療をはじめ、急性膵炎、総胆管結石、急性胆管炎、IgG4関連疾患など、幅広い領域を対象としています。
膵・胆道癌は専門的な検査治療が必要ですので、県内各地からの御紹介が特に増えています。CT、PETなどの画像診断を行うとともに、EUS(超音波内視鏡)、ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)とIDUS(管腔内超音波)、胆道鏡・膵管鏡、胆汁・膵液細胞診や胆管生検等を組み合わせ、詳細な進行度診断を行っています。さらにEUS-FNA(超音波内視鏡下穿刺吸引法)での病理学的診断も積極的にしています。EUS-FNA件数は年々増加しており、2013年のFNA件数は101件、2005年から2014年3月現在までで計440件と全国でも有数の検査件数を誇っています。
治療については消化器外科や放射線科、当科GI oncologyチームと連携し、適切な治療方針を決定しています。また膵・胆道癌は発見時に進行していることが多いため、化学療法を行うことが多く、最新の化学療法を行なっています。遠方にお住いの患者様も多く、県内各地の関連病院と連携を取りながら診療しています。
当科の特徴として、胆膵の内視鏡治療が多く、中でも悪性胆道狭窄に対するステント留置は年間約200例と多いことがあげられます。
最近では、EUS-FNAの技術を応用した仮性膵嚢胞ドレナージや経十二指腸乳頭的にアプローチ不可能な悪性胆道狭窄に対するEUSガイド下胆道ドレナージなど最新の内視鏡を行っており、良好な結果を得られております。
その他、十二指腸乳頭部腫瘍に対する内視鏡的切除術や術後再建腸管を有する胆膵疾患患者さんへのダブルバルーン内視鏡を用いたERCPなど、専門施設ならではの検査・治療も行っています。
研究
研究面では、
炎症性腸疾患の病態解明と新規バイオマーカー探索
厚生労働科学研究・難治性疾患克服研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」
腸炎発症における腸内細菌と自然免疫の関与について
大腸炎関連大腸癌の発癌機能について
の研究を進めています。その他、関連施設と共同で臨床研究も行っています。
国内外他施設への留学も盛んで、現在1名のグループ員が米国に研究留学中です。
このようにわれわれのグループ員はいずれも消化器疾患の専門家であり、最新の知識や技術を常に取り入れて、最善の医療を提供することはもちろん、臨床医学研究の両立、さらには明日の日本の医療を背に負う若い医師への教育にも力を入れています。