ハイリスク前立腺がんに対する手術治療です。
通常の前立腺全摘除術と異なり、広範囲に前立腺を切除することで前立腺がんの根治を目指す手術です。手術前には約6ヶ月間、ホルモン化学療法(LH-RH製剤 + エストラサイト)を受けて頂いて、腫瘍が縮小してから手術を行います。
ハイリスク前立腺がんは再発率が高いことが知られています。
術前ホルモン化学療法後に拡大手術を行うことで根治性の向上を目指しています。
D’Amicoのハイリスクの定義に基づいて、CTやMRI検査で明らかなリンパ節転移のない方で、以下の条件を一つ以上満たす方を対象としています。
①初診時のPSAが20ng/mlを超える方
②生検病理のグリソンスコアが8以上の方
③触診あるいは画像検査で前立腺両葉に「がん」を確認できる方
また、手術に耐えられる心肺機能を有していることが条件です。
年齢は75歳くらいまでを対象にしています。
その他、患者様の過去の病気や身体的条件によりこの治療法が選べない場合もあります。
ハイリスク前立腺がんでは通常の前立腺全摘除術を行うと、
切除した前立腺の表面に「がん」が露出して体内に「がん」が残るようなケースがありますが、そのようなケースでも「がん」を取りきれる可能性が高い治療法です。
放射線治療を選択した場合には再発した場合に、その診断がやや難しく、時に遅れる場合がありますが、拡大前立腺全摘除術後はPSAが0(ゼロ)になりますので、わずかに上昇しただけでも再発の診断が可能です。これにより再発した場合に直ちに次の治療を行うことで、「がん」の進行を防ぐことが可能です。
もちろん保険診療の範囲内で行われます。治療費は通常の前立腺全摘除術とほぼ同じです。術前のホルモン化学療法に対しても保険診療が適応されます。
大学病院の受診 :
すでに「がん」の診断を受けている方はかかりつけの泌尿器科医の紹介状と生検病理プレパラートを持参して月曜か金曜の初診日に大学病院泌尿器科外来を受診していただきます。(検診でPSA異常を指摘されたばかりの方でも大学病院で生検検査による「がん」の診断が可能です)
術前ホルモン化学療法 :
手術前の約6ヶ月間、LH-RH注射とエストラサイト内服を行います。
副作用が強い場合には、他剤への変更を行います。これは1カ月に1回ぐらいの通院で行うことが可能で、手術まで入院の必要はありません。術前心肺機能検査 : 手術の1~2カ月前に行います。手術に耐えられる心肺機能があるかどうかを判定します。
自己血貯血 :
手術の1か月前から、3~4回に分けて自己血を貯血します。
この期間は造血作用のある鉄剤を内服して頂きます。
退院後2週間目に手術で摘出した前立腺やリンパ節の病理検査結果を説明します。
尿失禁の程度が強い場合には、ある程度改善するまで外来通院をして頂きます。
再発の有無を確認するために定期的にPSAを検査する必要があります。
尿失禁が落ち着きましたら、かかりつけ医でPSA検査を定期的にして頂きます。