泌尿器科の病気について

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鹿児島大学医学部附属病院の泌尿器科で診療している
泌尿器科のおもな病気とその治療について

下記に簡単にご紹介させていただきます。
また、男性の性機能障害や不妊症の診断と治療なども実施しています。
腎臓の病気から性感染症まで、何でもご相談ください。

尿路感染症

(にょうろかんせんしょう)

主に細菌の感染でおこり、膀胱炎と腎盂腎炎があります。
小児から高齢者まで幅広い年齢層で経験されます。抗生物質の治療でよくなります。
若い女性の膀胱炎や腎盂腎炎を除いて、多くの方で何か腎臓や膀胱に異常があり、細菌感染が起こりやすくなっていることが原因ですので、若い女性で再発を経験した方、小児や高齢者では泌尿器科で専門的な検査を受けられることをおすすめします。

腎ガン

(じんがん)

腎臓のガンで最も多く、早期には症状がほとんどありませんので、腹部の超音波検査(エコー)や他の病気の検査中、偶然に見つかるものが少なくありません。
血尿や腹部にしこりを触れるなどの症状があれば、すぐに泌尿器科での検査が必要です。
この病気には手術やインターフェロン、分子標的薬などを用いた薬物治療が行われます。

腎盂尿管ガン・膀胱ガン

(じんうにょうかんがん・ぼうこうがん)

尿路の粘膜にできるガンで、血尿がみられます。
腎臓の腫れがおこると、腰や背中に痛みを感じることもあります。
膀胱のガンは、何も症状がなく、自分でも気づく赤い血尿を認めることもあります。症状がなくても、血尿に気づいたら、泌尿器科の検査が必要です。
内視鏡を使って切除する手術から、腹部を切開して臓器を摘出する手術などが行われます。
新しい抗ガン剤を用いて、進行したガンに対する治療も行なっています。

精巣腫瘍

(せいそうしゅよう)

若い男性の精巣にできる腫瘍は、痛みがなくて大きくなることが多く、受診が遅れます。
痛みがないからといって放置せず、早く受診して検査してもらいましょう。
悪性のガンが多く、手術と放射線治療や抗ガン化学療法が実施されます。

前立腺肥大症・前立腺ガン

(ぜんりつせんひだいしょう・ぜんりつせんがん)

前立腺は精液の一部をつくる臓器で、膀胱からの出口部で尿道を取り囲むようにありますが、60歳ころから肥大症やガンがおこります。
良性腫瘍の前立腺肥大は夜間に排尿にしばしば起きる、尿が出にくい、尿が近いなどの排尿の症状があり、放置しておくと尿がまったく出せなくなることもあります。
泌尿器科での精密検査の後に、薬や内視鏡手術が主に行われます。
前立腺ガンは日本で増えていると言われていますが、症状だけでは肥大症と区別できません。
ガンが進行すると骨や肝臓に転移しやすく、手術や放射線療法は難しくなり、ホルモン療法が行われます。
一般に早期ガンは、手術で根治できます。
前立腺ガンは血液検査で前立腺特異抗原 (PSA)を調べてもらい、針生検で早期に病理診断が可能ですから、該当する年齢の方では検診を積極的に受けられることをお勧めします。

腎・尿管結石

(じん・にょうかんけっせき)

結石は尿中の成分が固形化することで形成され、結石が腎臓から尿管へ移動すると痛みや血尿の原因になります。
尿管の結石で腎臓が腫れると、尿をつくる働きが悪くなったり、感染をおこして熱が出ることがあります。
体外衝撃波砕石術が主な治療手段で、これは結石を小さく砕いて排石させる方法です。
その他に、レーザーを利用した内視鏡手術も行っています。

神経因性膀胱

(しんけいいんせいぼうこう)

脊柱の外傷、糖尿病、脳梗塞や神経疾患など多くの病気で起こります。
尿がでにくい、尿がちかい、尿がもれるなどの症状があります。
膀胱の機能検査や内視鏡検査の結果をみて、主に薬物療法や間欠的導尿法が施行されます。
当科では尿流動態検査という精密検査を実施しています。

腎不全・腎移植

(じんふぜん・じん いしょく)

腎臓の機能が良くない病気が腎不全と呼ばれ、血液浄化という治療が必要となります。
当科では血液浄化部と協力して、血液透析、腹膜透析など、患者さんの病態に応じた治療法を施行しています。また、腎移植も実施できる認定施設です。

こどもの腎・尿路系および生殖器系の病気

小児泌尿器科認定医を中心として小児の腎・尿路系疾患及び生殖器系疾患に対して幅広い活動を行っています。
腎・尿路系の代表的なものは水腎症、膀胱尿管逆流症、尿管瘤、多嚢腎、巨大尿管、尿道弁などの先天性疾患で、最近では出生前に胎児超音波検査でみつかる場合も少なくありません。適切な時期に検査や手術が行えるように産科・小児科の先生方と相談し治療を行います。
生殖器系疾患の主なものは停留精巣、尿道下裂などで、乳児期より多くの手術を行っていますが、赤ちゃんの陰嚢水腫や包茎といった自然治癒が大いに期待できる疾患に対してはむやみに手術を行わず、経過観察をお勧めしています。
泌尿器科の先天性疾患に対する主な治療は手術ですが、二分脊椎に伴う神経因性膀胱や鎖肛など小児外科疾患に合併した排尿障害などの治療・管理を、専門看護師と一緒に行っています。子供達の成長・発達に合わせた治療・管理をするために、必要であれば地域の保健所や学校などと連絡を取りながら診療をすすめています。

(1)水腎症
妊娠中の超音波検査が普及されるに従い、胎児期に水腎症が分かる時代になってきましたので主に産科の先生に見つけていただく形になります。胎児水腎症は出生後も持続するとは限りませんが、専門的知識を持ってきちんと管理する必要があります。
最も頻度が多いのは腎盂尿管移行部狭窄症で約60%です。2番目が、尿管膀胱移行部狭窄症(巨大尿管症)で約20%、3番目は膀胱尿管逆流症(VUR)で10〜15%です。
膀胱尿管逆流症により乳児期に急性腎盂腎炎にかかると敗血症(菌が全身をめぐり40度以上の熱が出る)を起こしたりすることもありますので、排尿時膀胱尿道造影(VCUG)で合併がないか確認することをお勧めします。
水腎症は超音波検査の所見で0-4度まで5段階に分類されます。数字が大きい方が、重度の水腎症になります。原因により自然経過は違ってきますが、グレード3以下の症例は自然軽快が期待できると報告があります。一方、腎盂が拡張して腎実質が薄くなっている重度の水腎症は将来的に手術が必要となる可能性があります。外科手術の適応となるのは、水腎症の増悪、分腎機能の増悪、尿路感染症の合併です。
水腎症の手術は主に開腹による腎盂形成術を行っています。側腹部を約4cm切開し腎盂尿管移行部の狭い部分を切除して再びつなぎ合わせます。急激な水腎症の増悪や感染症の合併がある場合は、事前に腎瘻カテーテルを留置することもあります。

(2)膀胱尿管逆流症
尿は腎臓で作られ、尿管を通って膀胱にたまり尿道を通って体外へ排出(排尿)されます。この尿の流れは本来一方通行ですが、膀胱の尿が再び尿管や腎臓に逆流する病気が膀胱尿管逆流症です。この逆流が原因で高熱を伴う尿路感染症(急性腎盂腎炎)を引き起こすことがあります。腎臓で感染を起こすと、腎瘢痕と呼ばれる傷が腎臓に残ります。感染を繰り返すと、腎瘢痕が増えて腎機能が悪くなり、最悪の場合は人工透析が必要となることもあります。
診断は排尿時膀胱造影検査で行われます。膀胱に注入した造影剤が尿管や腎臓に逆流するかどうかを見ます。程度により5段階に分類されます。乳幼児の軽度の逆流であれば自然治癒が期待できますので、予防的な抗菌薬の服用で感染を起こさないようにして、自然治癒を待ちます。自然治癒が見込めないあるいは感染がコントロールできない場合は、手術を行います。膀胱機能に問題がない子供さんであれば、通常の開腹手術で逆流が消失する確率は約95%以上であり確実性の高い手術です。また、内視鏡的治療(デフラックス注入療法)も適応に応じて行っています。

(3)停留精巣
 精巣は、最初は胎児のお腹の中にありますが胎児の成長とともに下降していきます。満期産で生まれた男児では出生時には陰嚢内に到達していますが、予定より早く生まれた場合や体重が軽く生まれた場合には陰嚢内にない場合もあります。このように生まれた時から、陰嚢の中に精巣が見られない状態を停留精巣といいます。新生児の3〜5%に発生し、生後3ヶ月では1%、生後1年でも1%と報告があります。つまり、生後3ヶ月ぐらいまでは自然下降が期待できますが、それ以降ではほとんど下降しないということになります。
停留精巣での問題点は2つあり、男性不妊と精巣悪性腫瘍の発生です。精巣は温度が低い方が良く育つため、陰嚢内にあります。停留精巣では温度による影響(生殖細胞の減少、間質の線維化など)が1歳では出現していると報告されていますので、当科では1歳前後での手術をすすめています。もう一つは悪性化です。停留精巣の既往のある方は、健常人に比べ10倍ほど癌になりやすいと言われています。早期に手術をしたとしても、悪性化を完全に防ぐことはできないと言われていますので、精巣腫瘍の好発年齢(20歳〜40歳)の時期には、自分で精巣の大きさをチェックする必要があります。手術をして陰嚢内に精巣を下降させることができれば、自分で、もしくは家族の方が容易に触れることができるので、早期発見につながると考えられています。
停留精巣の手術は、停留精巣側の下腹部のしわに沿い約2cmの皮膚切開をおきます。精巣、精索(精巣に つながっている血管と将来精子の通り道になる精管などの束)周囲の余計なつっぱりを丁寧にはずします。鞘状突起という鼠径ヘルニアの原因となる腹膜の一 部も剥がして精巣を陰嚢まで緊張なく降ろせるようにします。陰嚢に約1cmの切開をおき、精巣を陰嚢内に固定します。術後は、固定した精巣がきちんと成長し男性ホルモンを分泌できるのか成長とともに確認が必要ですので、二次性徴が発現する思春期ぐらいまでは外来で精巣のサイズなどをチェックします。
停留精巣の治療は、精巣を陰嚢内に固定するというコスメティックな手術だけではなく、術後の妊容性や悪性腫瘍が発生していないかを確認することが必要ではないかと考えます。

(4)移動精巣(遊走精巣)
停留精巣と良く似た病態ですが、精巣を持ち上げる筋肉である精巣挙筋の過活動が原因であると言われています。特徴的なのは、出生直後には精巣はしっかり陰嚢に収まっていたけれども、その後の健診で指摘されるようになったといった例です。約90%が正常男児と同様の発育を遂げるため、手術は不要であると考えています。しかし、数年後に上昇してしまい、手術が必要になるケースが10%ほどあるため、定期的診察が必要です。

(5)尿道下裂
男児の尿の出口(外尿道口)が本来の亀頭の先端に開口しておらず、亀頭の下部や陰茎の途中、あるいは陰茎の根元などに開口している状態で、陰茎の屈曲を伴うことが多い疾患です。美容的な問題と、排尿の際に立小便ができなかったり、陰茎の屈曲のせいで将来の性生活の問題が生じる可能性があります。明らかな原因は現在のところ判明していません。手術では、陰茎をまっすぐにすること、亀頭に開口する新しい尿道を作成することを目標にします。一期的な形成術がほとんどですが、陰茎の屈曲が強い場合や形成する尿道が非常に長い場合などには二期的に行うこともあります。手術時期は、亀頭・陰茎のサイズに問題がなければ、子供さんの成長や家族の都合に合わせて1歳以降で行います。