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Doheny Eye Institute留学記  寺崎寛人

2015年7月より米国カリフォルニア州ロサンゼルスにありますDoheny Eye Instituteに留学しています。
大学院時代から研究してきた培養網膜色素上皮細胞(RPE)を用いた黄斑変性の病態解明に関する研究に引き続き従事していて、
現在は黄斑変性や増殖硝子体網膜症においてRPEが線維化を起こすことがあるのですが、
このメカニズムの解明や線維化を予防する可能性がある薬剤の作用を調べています。

昨今、海外留学を希望する人が少なくなっているようです。国内の施設の研究が一流の研究誌に掲載されることはそれほど珍しくはありませんので、
研究を発展させたいという意味では、国内留学でも十分かもしれません(この場合は、医師としての収入も保証されます)。
それでは、このご時世に海外留学するメリットとはなんでしょうか?
私が実際に留学して良かったと感じることを以下に挙げてみます。
① 英語力のレベルアップ
私のラボには日本人が私しかいないので同僚とコミニケーションをとるには英語を使うしかありません。
「英語ペラペラ」には程遠いですが、下手くそな英語でも間違いを恐れず自分の意見を伝えるというマインドセットができたことは
私にとって大きな収穫になりました。
② 研究へ専念できる
日本では大学院時代にも研究の合間に臨床の仕事をすることがありますが (研究しながら臨床能力を維持できるという側面もありますが)
こちらではその必要が無いので実験を予定しやすく、研究に没頭できます。また日本と比べるとオンオフの切り替えもはっきりしているので、
家族と過ごす時間も取りやすいと思います。
③ 多くの出会いと経験
私の研究室のメンバーは出身も職業も様々です。
(出身・・アメリカ・インド・中国・日本。職業・・純粋な研究者、眼科医、眼科医を目指す医学生、医学部を目指す学生さんなど)
共に研究に打ち込む中で、母国語でない言葉で議論しお互いに切磋琢磨するという経験と(言葉のハンデはありますが)
研究に対する考え方やアイデア自体は十分に通用するという自信は日本では得ることはできないものです。
また、同じ大学内にいる日本人留学生や研究者の方々にもいつも助けられています。
南カリフォルニア大学では隔月で日本人研究者の会という勉強会があり、
専門は違ってもモチベーションの高い方々との語らいはとても励みになります。
④ 日本の良さの再発見
日本を離れたことで日本という国の素晴らしさに気付かされます。
治安の良さ、仕事の正確さ、相手を思いやる日本人独特の心遣い・・挙げるときりがありません。
私は医師となり約10年程経ちますが、眼科専門医や学位を取得し、大学病院では新入局員や研修医の先生方を指導する機会も増えてきました。
このような時期はいわゆる“天狗”になりやすい時期ですがこの時期に敢えて言葉も通じず、
右も左も分からないところで生活を立ち上げ研修医のように一から仕事を始めることは本当に大変でしたが日本では味わえない貴重な経験でした。
帰国する際に今以上に留学して良かったと思えるように、残された時間を精一杯楽しもうと思います。
鹿児島大学眼科は決して大きな医局ではありませんが、以前より海外留学を奨励しており、頑張っていれば必ず留学の機会があります。
また、眼科は他科と比べると専門性が高いので、留学期間中の臨床医としての経験不足は
帰国後に集中的にトレーニングすれば十分カバーできると思います。
近い将来、留学を目指す入局者や大学院生と共に研究が出来ることを楽しみにしています。

大学院生の声 芳原直也

2013年10月より、鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 先進治療科学専攻 感覚器病学講座 眼科学分野において、
坂本泰二教授をはじめ、各分野の先生方のご指導のもと研究を行っております。

現在、当科で特に力を入れている分野の一つが、画像解析による眼球形態や疾患の解明の研究です。
眼科検査機器の進歩はここ最近かなり著しいものがあり、これらが眼科診療を一変させていることは間違いありません。
形態評価のみならず、最近の検査機器は機能評価するものにまで進化しつつあります。
疾患を見るうえで、病態の形成や治療の予測のために、これらの機器が無視できない現状にある中、画像から得られる膨大な情報の中から、
さらに新たな発見が得られる可能性も秘められています。
こうした流れの中で、自分も大学院にいる間、画像の定量化とその解析の研究をいくつか行ってきました。
これらの研究成果については、ともに2014年、2015年のThe Association for Research in Vision and Ophthalmology(ARVO)をはじめ、
国内の学会でも何度かその成果を発表させていただく場を与えてもらいました。
さらには、2015年12月の網膜硝子体学会で優秀演題シンポジウムとして取り上げていただくまでになりました。
一方、基礎研究でも園田祥三先生をはじめ、多くの先輩方のおかげで実現可能となった極性を持つ網膜色素上皮細胞を用いる実験によって、
病態や薬物動態のメカニズムについて研究も行ってきました。
これらの研究は、黄斑変性症をはじめとする現在眼科でも注目を集める分野で、
今後もさらなる病態解明に向けて、研究を進めていければと思うところです。
臨床研究・基礎研究ともに充実した内容が多く、眼科という「学問」の奥深さを日々感じて生活しております。
興味のある方は、一度は大学院での研究をおすすめします。

上段 : 2014年 ARVOにて (オーランド) / 下段 : 2015年 ARVOにて (デンバー)