血液疾患、特に造血器腫瘍の最新の知識と広い治療経験をもち、診療しています。
白血病や悪性リンパ腫、多発性骨髄腫などの造血器腫瘍は、ほとんどが難治性ですが、患者さん一人一人に満足いただける最高の医療が提供できるよう努力しています。
悪性リンパ腫の治療は、まず病期分類で限局期と進行期に大別し、進行期であれば全身化学療法を行いますが、限局期であれば放射線療法単独や全身化学療法の回数を減らし、放射線療法を加える選択肢があります。また悪性リンパ腫の一部には、一定の状況になるまでは無治療経過観察を行うことが標準治療とされる亜型もあります。悪性リンパ腫への治療には細胞傷害性薬剤による化学療法、抗体薬などの分子標的治療と、造血幹細胞移植、放射線療法があります。
白血病は白血病細胞が骨髄を中心に異常増殖し、正常な造血(白血球、赤血球、血小板など)ができなくなり、感染症や貧血、出血を引き起こす疾患です。急性白血病に対しては抗がん剤治療や造血幹細胞移植を行うことにより治療を目指します。慢性骨髄性白血病にたいしては近年いくつかのチロシンキナーゼ阻害剤が導入され、飛躍的な治療効果の改善が得られております。
多発性骨髄腫は白血球の一種である形質細胞が骨髄や骨などで異常増殖し、異常な免疫グロブリンを産生する疾患です。正常な造血や免疫グロブリンの産生が抑えられることで、貧血や感染症を引き起こします。また全身の骨を溶かしたり、腎臓を障害することがあります。従来のアルケラン®などの抗がん剤に加えて、近年サレド®、ベルケイド®、レブラミド®、ファリーダック®、ポマリスト®、カイプロリス®、エンプリシティ®、ニンラーロ®、ダラザレックス®など続々と新規薬剤が登場し治療成績の改善が得られております。自家末梢血幹細胞移植も行っております。形質細胞異常による類縁疾患である、POEMS症候群、軽鎖沈着症、ALアミロイドーシスの治療にも取り組んでおります。
当科では、新たな標準治療や新規薬剤の開発にも積極的に取り組んでいます。当科が主導している医師主導治験や多施設共同臨床試験も実施中ですし、国立がん研究センター研究開発費で運営される臓器がん多施設共同研究グループである日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)リンパ腫グループのメンバーとして、よりよい治療法の開発に取り組んでいます。そのほか、常時複数の企業の開発治験に参加しています。