当教室ではおもに泌尿器癌(腎癌、膀胱癌、前立腺癌)において、
増殖・浸潤・転移機構の解明や治療耐性獲得機序を明らかにすることで、新規治療法の開発につながる研究をしています。
同時に、腎癌と膀胱癌では、実臨床において有効な診断・予後予測マーカーが存在しないために、
マーカーの開発に繋がる研究もしています。また、海外や国内の著名な大学とも共同研究しており、
研究によって得られた新たな知見は、毎年、国内だけでなく米国やヨーロッパの学会で発表を行っています。
2001年にヒトノゲノム計画が終了しヒト遺伝子の全塩基配列が判読されました。
その結果、従来ほとんどのDNAはmessenger RNAへ転写された後にタンパクに合成されると考えられていましたが(Central Dogma)、実際にタンパクに読み込まれるDNAは全体の2%しかなく、多くはタンパクに読み込まれないDNAであることが判明しました。
ヒトではこの読み込まれないDNAのうち40%ほどはRNAに転写されるもののタンパクには翻訳されず(non-coding RNA)、機能性RNAとして働くことがわかっており、その代表がmicroRNAです。
このmicroRNAはわずか20-22塩基の1本鎖RNAで標的遺伝子の発現を負に制御しています。
現在までに2500種類を超えるmicroRNAが発見されています。
そしてヒトの全遺伝子の60%以上はこのmicroRNAによってその発現が制御されていると考えられています。
当科では、泌尿器科の代表的な癌である腎癌、膀胱癌、前立腺癌について、その増殖や転移・浸潤がどのように起こっているのかをmicroRNAとの関係で研究しています。
更に最近では、細胞外小胞の一つであるエクソソームに注目しその中に含まれるmicroRNAや代謝産物を用いて、新規治療法の開発や診断・予後予測マーカーの探索を行っています。詳細は、「業績紹介」で示している論文をご参照ください。
また、興味のある方はいつでも当教室を訪ねて下さい。