腎・尿路系の代表的なものは水腎症、膀胱尿管逆流症、尿管瘤、多嚢腎、巨大尿管、尿道弁などの先天性疾患で、最近では出生前に胎児超音波検査でみつかる場合も少なくありません。
適切な時期に検査や手術が行えるように産科・小児科の先生方と相談し治療を行います。
生殖器系疾患の主なものは停留精巣、尿道下裂などで、乳児期より多くの手術を行っていますが、赤ちゃんの陰嚢水腫や包茎といった自然治癒が大いに期待できる疾患に対してはむやみに手術を行わず、経過観察をお勧めしています。 泌尿器科の先天性疾患に対する主な治療は手術ですが、二分脊椎に伴う神経因性膀胱や鎖肛など小児外科疾患に合併した排尿障害などの治療・管理を、専門看護師と一緒に行っています。
子供達の成長・発達に合わせた治療・管理をするために、必要であれば地域の保健所や学校などと連絡を取りながら診療をすすめています。
妊娠中の超音波検査が普及されるに従い、胎児期に水腎症が分かる時代になってきましたので主に産科の先生に見つけていただく形になります。胎児水腎症は出生後も持続するとは限りませんが、専門的知識を持ってきちんと管理する必要があります。
最も頻度が多いのは腎盂尿管移行部狭窄症で約60%です。2番目が、尿管膀胱移行部狭窄症(巨大尿管症)で約20%、3番目は膀胱尿管逆流症(VUR)で10~15%です。
尿は腎臓で作られ、尿管を通って膀胱にたまり尿道を通って体外へ排出(排尿)されます。
この尿の流れは本来一方通行ですが、膀胱の尿が再び尿管や腎臓に逆流する病気が膀胱尿管逆流症です。
この逆流が原因で高熱を伴う尿路感染症(急性腎盂腎炎)を引き起こすことがあります。
腎臓で感染を起こすと、腎瘢痕と呼ばれる傷が腎臓に残ります。
感染を繰り返すと、腎瘢痕が増えて腎機能が悪くなり、最悪の場合は人工透析が必要となることもあります。
診断は排尿時膀胱造影検査で行われます。膀胱に注入した造影剤が尿管や腎臓に逆流するかどうかを見ます。程度により5段階に分類されます。乳幼児の軽度の逆流であれば自然治癒が期待できますので、
予防的な抗菌薬の服用で感染を起こさないようにして、自然治癒を待ちます。
自然治癒が見込めないあるいは感染がコントロールできない場合は、手術を行います。
膀胱機能に問題がない子供さんであれば、通常の開腹手術で逆流が消失する確率は約95%以上であり確実性の高い手術です。また、内視鏡的治療(デフラックス注入療法)も適応に応じて行っています。
精巣は、最初は胎児のお腹の中にありますが胎児の成長とともに下降していきます。
満期産で生まれた男児では出生時には陰嚢内に到達していますが、予定より早く生まれた場合や体重が軽く生まれた場合には陰嚢内にない場合もあります。
このように生まれた時から、陰嚢の中に精巣が見られない状態を停留精巣といいます。
新生児の3~5%に発生し、生後3ヶ月では1%、生後1年でも1%と報告があります。
つまり、生後3ヶ月ぐらいまでは自然下降が期待できますが、それ以降ではほとんど下降しないということになります。
停留精巣での問題点は2つあり、男性不妊と精巣悪性腫瘍の発生です。
精巣は温度が低い方が良く育つため、陰嚢内にあります。
停留精巣では温度による影響(生殖細胞の減少、間質の線維化など)が1歳では出現していると報告されていますので、当科では1歳前後での手術をすすめています。もう一つは悪性化です。
停留精巣の既往のある方は、健常人に比べ10倍ほど癌になりやすいと言われています。
早期に手術をしたとしても、悪性化を完全に防ぐことはできないと言われていますので、精巣腫瘍の好発年齢(20歳~40歳)の時期には、自分で精巣の大きさをチェックする必要があります。
手術をして陰嚢内に精巣を下降させることができれば、自分で、もしくは家族の方が容易に触れることができるので、早期発見につながると考えられています。
停留精巣の手術は、停留精巣側の下腹部のしわに沿い約2cmの皮膚切開をおきます。
精巣、精索(精巣に つながっている血管と将来精子の通り道になる精管などの束)周囲の余計なつっぱりを丁寧にはずします。鞘状突起という鼠径ヘルニアの原因となる腹膜の一 部も剥がして精巣を陰嚢まで緊張なく降ろせるようにします。陰嚢に約1cmの切開をおき、精巣を陰嚢内に固定します。
術後は、固定した精巣がきちんと成長し男性ホルモンを分泌できるのか成長とともに確認が必要ですので、二次性徴が発現する思春期ぐらいまでは外来で精巣のサイズなどをチェックします。
停留精巣の治療は、精巣を陰嚢内に固定するというコスメティックな手術だけではなく、術後の妊容性や悪性腫瘍が発生していないかを確認することが必要ではないかと考えます。
停留精巣と良く似た病態ですが、精巣を持ち上げる筋肉である精巣挙筋の過活動が原因であると言われています。特徴的なのは、出生直後には精巣はしっかり陰嚢に収まっていたけれども、その後の健診で指摘されるようになったといった例です。約90%が正常男児と同様の発育を遂げるため、手術は不要であると考えています。 しかし、数年後に上昇してしまい、手術が必要になるケースが10%ほどあるため、定期的診察が必要です。
男児の尿の出口(外尿道口)が本来の亀頭の先端に開口しておらず、亀頭の下部や陰茎の途中、あるいは陰茎の根元などに開口している状態で、陰茎の屈曲を伴うことが多い疾患です。
美容的な問題と、排尿の際に立小便ができなかったり、陰茎の屈曲のせいで将来の性生活の問題が生じる可能性があります。明らかな原因は現在のところ判明していません。
手術では、陰茎をまっすぐにすること、亀頭に開口する新しい尿道を作成することを目標にします。
一期的な形成術がほとんどですが、陰茎の屈曲が強い場合や形成する尿道が非常に長い場合などには二期的に行うこともあります。手術時期は、亀頭・陰茎のサイズに問題がなければ、子供さんの成長や家族の都合に合わせて1歳以降で行います。
ロボット支援手術は開腹手術と比較して出血量が少なく、入院期間が短い点で優れているとされています。
患者さんの状態によっては、ロボット支援手術ではなく、開腹手術や腹腔鏡手術を選択する場合もあります。