鹿児島大学に国内留学
現在は福岡で
リハ科医・内科医として勤務
Q. リハビリテーション科の専門医を取得しようと思ったきっかけは?
「こんな事になるなら助けてくれなければよかったのに」
私は大学卒業後、心血管疾患に興味があり、救急件数が多い市中病院で初期研修を行いました。当時、急性期脳梗塞に対する血栓溶解療法(rt-PA静注療法)が普及してきており、目の前で劇的に神経症状が改善する症例を経験しました。今後、さらなるブレイクスルーの可能性を感じて脳卒中医療に興味を持ち、九州大学病態機能内科学講座(第二内科)の脳循環研究室に入局し、救急病院で修練を始めました。
脳卒中医として駆け出しの頃、日々の急患・急変対応で忙しく働いていましたが、脳塞栓症の患者さんに重度の後遺症が残ってしまい、「こんな事になるなら助けてくれなければ良かったのに」と言われたことがありました。脳卒中の治療適応や病型診断の考察だけではなく、いかに患者さんを動かしていくか、そのノウハウがなければ患者さんを治すことができないことを痛感し、リハビリテーションの勉強をしたいと強く思いました。
Q. なぜ鹿児島大学リハビリテーション科で研修したのか?
このような教育環境は他にないと確信
リハビリテーションを勉強する環境については、インターネットなどで検索し、当初は東京での研修を検討していました。先輩医師からの勧めもあり、鹿児島大学リハビリテーション科(当時は霧島リハビリテーションセンター)を見学させていただいたところ、「訓練室で指導ができるリハ科医たれ」というモットーのもと、医師が積極的に患者さんの治療法やADL、住宅改修まで全てに向き合っている姿に感銘を受け、このような教育環境は他にないと確信しました。所属医局に懇願し、国内留学が実現しました。
Q. リハビリテーション科として働いている感想
「やれることはすべてやる」そして
「科学的な理論背景を求める」文化が根付いている
留学当初は、脳卒中の急性期医療とはアセスメントの手法などに大きな違いがありカルチャーショックを受けましたが、先生方の丁寧なご指導のおかげで業務には比較的スムーズに慣れることができました。
嚥下造影検査や装具処方、ボツリヌス療法など、日常診療で必須となる手技は自然に身に付きますし、医師や療法士が定期的に論文抄読会や研究報告会など行っており、学術的な視点も涵養されます。私は国内留学中に鹿児島大学大学院博士課程に入学し、下堂薗教授のご指導のもと、学位も取得できました。
リハ科医師は看護師や療法士、ソーシャルワーカーなどのコメディカルスタッフと多職種協働しながら、科学的根拠のあるリハビリテーションを提供し、患者さんの生活を再構築していく仕事です。医学・医療の知識と技術だけではなく、患者さんや家族、コメディカルスタッフの意見に耳に傾け、色んな人の立場に立った物事の捉え方や社会制度の理解も求められ、多くのことを学ばせていただきました。
鹿児島大学リハビリテーション科は、「促通反復療法」に代表されるように、医師が患者さんの障害に真摯に向き合い、「やれることはすべてやる」、そして「科学的な理論背景を求める」文化が根付いています。
私は国内留学で得たものを地元と所属医局に持ち帰り、脳卒中のリハビリテーションを医局の後進やコメディカルスタッフに伝えていく立場ですので、鹿児島大学リハビリテーション科の文化が私のニーズにマッチしていました。
リハビリテーション医学は日進月歩で、ロボットなど先端機器の開発も進んでいます。鹿児島大学リハビリテーション科でも産学連携による先端機器の開発や臨床研究も行われていますし、基礎研究や社会医学研究など、興味に応じ色々な研究に携わることができる環境だと思います。
現在の状況(働き方)
所属医局の関連病院
リハビリテーション専門病院専従医として勤務(福岡県)
現在は所属医局の関連病院で勤務しています。勤務先は回復期リハビリテーション病棟と地域包括ケア病棟で構成されたリハビリテーション専門病院です。私は回復期リハビリテーション病棟の専従医として勤務しており、主に脳卒中の患者さんの入院主治医を担当しています。
我が国は超高齢社会であり、回復期リハビリテーション病棟に入院される患者さんの多くが高齢者で、脳卒中や整形外科疾患だけではなく様々な基礎疾患を抱えておられ、全身管理能力が求められます。
鹿児島大学リハビリテーション科は霧島リハビリテーションセンター時代から専門病棟を有しておりましたので、入院主治医として全身管理を行うノウハウがあり、その経験が現在の診療に活きています。
私が勤務している施設は開院間もないため、まずは質の高いリハビリテーションを提供できるよう、院内スタッフの教育や先端機器の導入などの足固めをしています。
また、今後、脳卒中への再生医療が実用化されることが予想され、今よりもさらに効果的かつ効率的なリハビリテーションが求められることになると思います。リハビリテーション科専門医として地域・社会へ貢献ができればと思っています。
患者さんを「支える」医療は
とてもやりがいがあり、社会的ニーズも高い
我が国では回復期リハビリテーション病棟が充実している一方、リハビリテーション科専門医は全く充足しておらず、基本診療科のうち2番目に少ない専門医です。派手さはないかもしれませんが、患者さんを「支える」医療はとてもやりがいがあり、社会的ニーズも高いです。
国立大学の中で最も歴史のあるリハビリテーション医学講座である鹿児島大学リハビリテーション科で、患者さんを中心とした臨床・教育・研究を経験することは医師としてこれ以上ない強みを持つことになると思います。