Charcot–Marie–Tooth病(CMT)は、手足の筋力低下や感覚障害をきたす代表的な遺伝性末梢神経障害です。PMP22遺伝子の重複はCMT1Aの主要な原因としてよく知られていますが、一方でPMP22遺伝子の点変異は比較的まれであり、日本人患者における臨床像や遺伝学的特徴は十分に明らかになっていませんでした。
このたび、当講座(鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 脳神経内科・老年病学)の研究グループ(矢野直志医師、安藤匡宏講師、樋口雄二郎准教授、髙嶋 博教授ら)は、日本人の遺伝性末梢神経障害患者コホートを対象に、PMP22点変異を有する患者の遺伝学的・臨床的特徴を解析しました。
本研究では、遺伝性末梢神経障害が疑われた日本人患者3352例を対象に遺伝子解析を行い、PMP22点変異を有する30例を同定しました。これらの患者では24種類のPMP22配列バリアントが認められ、そのうち4種類(p.T23K、p.R95Sfs*16、p.M111R、p.P144R)はこれまでに報告のない新規バリアントでした。
PMP22点変異を有する患者では、PMP22重複によるCMT1A患者と比較して発症年齢が早く、歩行障害や上肢の神経伝導異常がより重度であることが明らかになりました。また、眼球運動障害、散瞳、眼振などの脳神経症状を伴う症例も認められ、PMP22点変異による神経障害が幅広い臨床スペクトラムを示すことが示されました。
さらに、PMP22タンパク質の構造上に変異部位をマッピングしたところ、ミスセンス変異は主に膜貫通領域に集中していました。歩行可能な患者では細胞外側に近い部位、歩行不能な患者では細胞内側に近い部位に変異が位置する傾向があり、変異の局在が臨床的重症度に関連する可能性が示唆されました。
本研究は、日本人におけるPMP22点変異関連ニューロパチーの遺伝学的・臨床的特徴を明らかにしたものであり、重症の脱髄性ニューロパチーを呈する患者では、家族歴が明らかでない場合でもPMP22点変異を鑑別に含める重要性を示しています。
本成果は、Journal of Neurology誌に掲載されました。
Chikashi Yano, et al.
Genetic spectrum and clinical features of PMP22 point mutations in Japanese Charcot–Marie–Tooth disease
Journal of Neurology, 2026
https://doi.org/10.1007/s00415-026-13946-3






