このたび、鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 脳神経内科・老年病学(堂園美香 医師、野妻智嗣 助教、髙嶋博 教授ら)およびヒトレトロウイルス学共同研究センター 神経免疫学分野(窪田龍二 教授ら)の共同研究グループは、HTLV-1関連脊髄症(HAM/TSP)の病態を反映する免疫現象である「自然リンパ球増殖(Spontaneous lymphoproliferation: SP)」の詳細なメカニズムを明らかにし、その成果が国際学術誌「Neurology: Neuroimmunology & Neuroinflammation」に掲載されました。
HAM/TSP患者の末梢血単核球(PBMC)を体外で培養すると、外部からの刺激なしにリンパ球が増殖する「SP」と呼ばれる特異な現象がみられることが知られていますが、その詳細な細胞メカニズムはこれまで十分に解明されていませんでした。
本研究では、細胞追跡色素やフローサイトメトリーを用いた詳細な解析により、SPにおいて増殖しているCD4陽性T細胞のほぼすべてがHTLV-1に感染していることを突き止めました。さらに、細胞を分離・混合する培養実験により、この感染CD4陽性T細胞の存在が、HTLV-1特異的CD8陽性細胞傷害性T細胞(CTL)の著しい増殖を引き起こすのに必須であることを明らかにしました。増殖したCD8陽性T細胞を詳しく調べたところ、その70%以上がHTLV-1 ( TaxおよびHBZ)に特異的なCTLであることが判明しました。
加えて、増殖した感染細胞はTh1表現型を示し、培養上清中にはIL-6やIFN-γなどの炎症性サイトカインが有意に増加していました。特にSPにおけるIFN-γの産生量は、HAM/TSP患者の脳脊髄液中のプロウイルスロード(PVL)と相関することも確認されました。
これらの結果から、SPは「HTLV-1感染CD4陽性T細胞が主導してウイルス抗原を提示し、それに反応したCD8陽性CTLが持続的に活性化・増殖する」という一連の免疫カスケードであることが示されました。本現象はHAM/TSPの脊髄における神経炎症の免疫学的特徴を体外(ex vivo)で高度に再現していると考えられ、HTLV-1感染細胞の排除や免疫介在性病態を標的とした新規治療法の評価モデルとして、今後の治療開発へ貢献することが期待されます。

掲載情報(Open Access) Mika Dozono, et al. HTLV-1–Infected CD4+ T Cells Drive Spontaneous Lymphoproliferation and Virus-Specific CD8+ Cytotoxic T Lymphocyte Expansion in HAM/TSP (Neurology: Neuroimmunology & Neuroinflammation, 2026) https://doi.org/10.1212/NXI.0000000000200581






