末梢神経障害の「長さ依存性」を電気生理検査でシンプルに評価するため, 脛骨神経と尺骨神経の遠位CMAP振幅比(Tibial to Ulnar CMAP amplitude ratio: T/U比)に着目した研究を報告しました.
本研究では,慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー(CIDP)44例と,PMP22重複,GJB1,MFN2,MPZ,MME変異を有するCharcot-Marie-Tooth病(CMT)365例を後方視的に解析し,各種神経伝導指標を比較しました.さらに,遺伝子診断前にCIDPと診断されていた「CIDP-mimic CMT 27例」や遺伝子別サブグループに対しても検討を行いました.
その結果,T/U比はCIDPで有意に高値を示し,CMTおよびCIDP-mimic CMTとの鑑別において,検討した指標の中で最も高い診断能を示しました(AUC 0.95,カットオフ0.385で感度95.5%,特異度85.5%).CIDP類似CMTを対象とした解析でも,同様の傾向が確認されました.
T/U比は,通常の神経伝導検査から容易に算出できるシンプルな指標であり,CIDPとCMTの鑑別,さらには遺伝学的検査の優先順位づけに役立つ,汎用性の高い電気生理マーカーとなる可能性があります.
本成果は,Clinical Neurophysiology Practice に掲載されました(Open Access).
Chikashi Yano, et al.
Tibial to ulnar nerve amplitude ratio as a marker of length-dependent neuropathy






