SACS遺伝子の異常により、小脳失調・痙性・末梢神経障害を主徴とする常染色体潜性(劣性)の「ARSACS:シャルルヴォア・サグネ症候群」という病気を来します。本研究では、日本全国で遺伝性末梢神経障害(IPN)やCharcot-Marie-Tooth病(CMT)が疑われた3,353例を網羅的に解析し、SACS関連疾患の頻度・症状の幅・遺伝学的特徴を明らかにしました。遺伝学的検査は標的遺伝子パネル/全エクソーム解析に加え、コピー数異常(CNV:遺伝子が丸ごと欠ける/増えるタイプの変化)の解析も行なっています。CNV解析にはXHMM・CovCopCan・qPCR解析を組み込んで網羅的に解析を行なっています。
主な結果
- 10家系でSACSの両アレル(2つ)に変異を同定し、このうち9例を病的/準病的と判定しました(9/3,353=0.268%)。変異はフレームシフト変異が多くさらにSACS遺伝子の全遺伝子欠失を2例で認め、CNVの寄与が高いことを見出しました。
- 発症年齢は1〜49歳と幅広く、全例で運動・感覚のニューロパチーを呈しました。錐体路徴候は6例、小脳失調/小脳萎縮は8例で認めました。神経伝導検査では脱髄優位で、画像所見の特徴として、橋の低信号や小脳萎縮、脳梁の菲薄化などがみられ、症状・所見の多様性が確認されました。
- 錐体路徴候を有する221例のサブグループ解析では、SACSの検出率は2.7%と高く、遺伝学的多様性の大きさを示しました。
結論として、末梢神経障害に遅い伝導速度、錐体路徴候、橋腹側のMRI異常などを伴う症例では、SACS解析を積極的に検討すべきと考えます。SACS関連疾患では点変異だけでなくCNVの頻度が看過できないため、遺伝学的診断ワークフローにCNV解析を必須で組み込むことの重要性を提案しています。
掲載情報(オープンアクセス)
Yuan J-H, et al.
Frameshift and Copy Number Variants in SACS-Related Neuropathy. Neurology: Genetics 2025;11:e200318. doi:10.1212/NXG.0000000000200318.(Open Access)








