お知らせ

日本全国の遺伝性末梢神経障害(IPN)/Charcot–Marie–Tooth病(CMT)患者を対象に、giant axonal neuropathy(GAN)の原因遺伝子である GAN 遺伝子を検索し、その結果を報告しました。

Giant axonal neuropathy(巨大軸索性ニューロパチー)は、幼少期発症の中枢・末梢神経障害を特徴とする極めて稀な遺伝性疾患で、病理学的には神経軸索の著明な腫大を認めることからこの名称で呼ばれます。従来は中枢・末梢神経症状がともに強く、側弯や毛髪異常などを伴う“古典型”が多く報告されてきました。一方で、中枢神経や神経外症状が軽微で末梢神経障害が主体となる“軽症型”も存在し、CMT2型として扱われた症例もあります。

本研究では、2007~2023年に収集した国内IPN患者3,315例を対象に、GAN 遺伝子の遺伝学的・臨床的スペクトラムを検討しました。その結果、4家系5例に計7種の両アレル性 GAN 変異を同定し、うち2種(c.456dup、c.922G>T)は新規病的変異でした。GANはIPN全体の0.12%を占め、日本人口に換算すると10万人あたり約0.013人と推定されます。平均発症年齢は4.4歳(1.5~8歳)で、全例で感覚運動性軸索型多発ニューロパチーを認めました。軽症例の中には72歳まで生存しCMT様の経過をとった症例もあり、表現型の多様性と長期フォローの重要性が示唆されました。4家系すべてが当初CMTと疑われていたことから、小児発症CMT症例でも GAN 遺伝子の系統的スクリーニングが重要です。

近年、AAVベクターを用いた遺伝子治療の有望な結果も報告されており、早期遺伝学的診断の意義が一層高まっています。

本研究成果は Journal of Neurology に掲載されました。
Hobara T, Ando M, Higuchi Y, et al. “Charcot–Marie–Tooth-like presentation in giant axonal neuropathy: clinical variability and prevalence in a large Japanese case series.” Journal of Neurology (2025) 272:514.
DOI:https://doi.org/10.1007/s00415-025-13243-5

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