Charcot-Marie-Tooth病の最新の遺伝学的知見を解説したレビュー論文が、Wiley社のEncyclopedia of Life Sciences(eLS)に掲載されました。
「Encyclopedia of Life Sciences(ELS)」は、生命科学(ライフサイエンス)に関する専門家向きの包括的な学術百科事典です。それぞれの領域の専門家によって執筆され、信頼性の高い情報を提供してします。
その領域の全世界的な第一人者に執筆者に依頼されており、今回、この著者に選ばれたことは大変名誉なことと考えています。
Charcot-Marie-Tooth(CMT)病は、末梢神経の障害を特徴とする最も頻度の高い遺伝性神経疾患であり、臨床像・遺伝学的背景ともに極めて多様です。近年の次世代シーケンシング(NGS)技術の進展により、多数の関連遺伝子やリピート配列伸長の関与が明らかになってきましたが、診断精度の向上や病態理解の深化には、最新知見を整理しなおす必要があります。
本論文では、PMP22重複/欠失を含む古典的原因遺伝子から、MME、NOTCH2NLC、RFC1などの新規遺伝子・反復配列までを網羅的に解説し、分子診断の進歩、遺伝疫学の地域差、細胞内局在に基づく分子病態メカニズムなど、多角的にCMTの遺伝学的基盤を整理しています。
特に、以下の点が本論文の特色です:
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CMT関連遺伝子130種以上を対象とした分類と発見史の整理
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リピート伸長病(NOTCH2NLC、RFC1)によるCMT表現型の多様性
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日本人コホートにおける遺伝子診断率と主要変異遺伝子の構成比
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ミトコンドリア・核・ER・RNA代謝など、細胞内局在ごとの機能的分類
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光学ゲノムマッピングやロングリードシーケンスなど、今後の展望
本総説は、Charcot-Marie-Tooth病の診療・研究に携わる方にとって、最新の理解を整理し、今後の研究と臨床応用を展望するための有用なリソースとなることを目指しています。
掲載論文:
Yuan J-H, Higuchi Y, Takashima H.
Genetics of Charcot-Marie-Tooth Disease
Encyclopedia of Life Sciences (eLS), Advanced Article. Published online: May 30, 2025
DOI: 10.1002/9780470015902.a0029752