お知らせ

HTLV-1は世界でも日本、特に南九州に感染者の多いウイルスで、成人T細胞白血病(ATL)やHTLV-1関連脊髄症(HAM)などを引き起こします。HAMは、1986年に当科の第二代教授である納先生やDr. Gessain Aらによって提唱された進行性の痙性脊髄麻痺を特徴とする疾患です。疾患として確立してから、40年近くが経過しますが、有用な治療法がいまだにない難病の一つです。

HAMは、脊髄でのHTLV-1に対する免疫応答が慢性的な脊髄炎症を起こします。一方で、HTLV-1キャリアは日和見感染症にかかりやすいなど免疫機能障害が報告されており、HAM患者においても他の病原体に対する免疫応答の障害が示唆されていますが、その免疫機能障害のメカニズムはまだ十分に理解されていません。

今回、同じHTLV-1を原因とするATLにおいて報告されているCD3のダウンレギュレーションが、HAM患者の感染細胞でも起こることでHAM患者の免疫機能障害に影響していると考え、研究を行いました。

HAM患者のHTLV-1感染CD4+T細胞は、健常者のCD4+T細胞、HAM患者の非感染CD4+T細胞と比較してTCR/CD3の発現が低下していました。またTCRシグナル伝達もHAM患者のCD4+T細胞で障害されており、特にHTLV-1感染CD4+T細胞で非感染細胞に比較して顕著に減少していました。さらにCMV抗原によるIFN-γ産生もHTLV-1感染CD4+T細胞で低下していました。

以上の結果は、HTLV-1感染CD4+ T細胞におけるTCR/CD3のダウンレギュレーションとTCRシグナル伝達の障害が免疫機能障害に寄与していることを示唆しています。

本研究は、「International Journal of Molecular Sciences」に掲載されました。

Satoshi Nozuma, et al. 

T-cell Receptor/CD3 Downregulation and Impaired Signaling in HTLV-1-infected CD4+T cells of HAM Patients

DOI:10.3390/ijms26041706

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