Nav1.7ナトリウムチャンネルは、感覚ニューロンで主に発現し、疼痛信号の発生と伝播に重要な役割を果たします。Nav1.7ナトリウムチャネルをコードするSCN9A遺伝子の変異により、四肢や顔面などで疼痛が生じる様々な疾患との関連が知られています。SCN9A関連疾患には、肢端紅痛症(erythromelalgia)、発作性疼痛症(paroxysmal extreme pain disorder)、および小径繊維ニューロパチー(small fiber neuropathy)などが報告されています。
本研究グループは、早期発症の末梢神経障害性疼痛患者8症例を調査し、SCN9A遺伝子の変異、症状、および疼痛の病理学的特徴について報告しました。この研究は、アメリカ・イェール大学との共同研究で行われ、SCN9Aの新規変異に関する機能解析を行い、SCN9A変異を導入したHEK293細胞に対してパッチクランプ法を用いて、電位変化に対するチャネルの脱分極特性が変化することを示しました。これは、疼痛や感覚低下などの臨床的な表現型の違いを説明する可能性があります。
本研究は、SCN9A遺伝子の変異、その生理学的性質、および病理学的特徴に焦点を当てています。これらの知見は、疼痛障害の理解と新たな病理学的なメカニズムの解明につながる可能性があります。
Yuan, Jun‐Hui, et al. "Genetic, electrophysiological, and pathological studies on patients with SCN9A‐related pain disorders." Journal of the Peripheral Nervous System (2023).
https://doi.org/10.1111/jns.12590