CADASIL(皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症)は皮質下認知症、脳梗塞、脳微小出血、頭部白質病変、片頭痛、抑うつなどの原因となる常染色体顕性(優性)遺伝性疾患で、遺伝性脳小血管病の中で最も頻度の多い、厚労省の指定難病の一つです。
本研究グループは、白質脳症の原因遺伝子を検索し、32名でCADASILの原因遺伝子であるNOTCH3遺伝子の変異を同定しました。
今回NOTCH3の遺伝子変異を認めた32名中、24名は日本に多く見られるR75P変異(75番目のアミノ酸がアルギニンからプロリンに変化したもの)でした。患者はすべて九州南部〜沖縄地域在住の方であり、ハプロタイプ解析の結果から創始者効果を認めました。更に32名の頭部MRI画像を用いて白質病変や微小出血などの解析を行い、R75P変異では、CADASILに特徴的とされる側頭極の白質病変を認めない一方で、他の変異と比較して微小出血の数が有意に多く認められました。特に視床の微小出血の数は他変異と比較しても有意に多く認められ、これを本研究グループはR75P変異に特徴的な所見: microbleed clustering in thalamus sign (MCT sign) として提唱しました。
本研究を通じて、我々の研究グループは、CADASILの特徴である側頭極の白質病変を欠く患者でも、微小出血の数が多く特にMCT signを呈する場合にはCADASILを疑い、NOTCH3遺伝子検査の実施を考慮するように提案しています。
Takei Jun, et al. "Microbleeds Clustering in Thalamus sign in CADASIL patients with NOTCH3 R75P mutation." Frontiers in Neurology. 2023 Aug 23;14: 1241678. Doi: 10.3389/fneur.2023.1241678. eCollection 2023.