本講座は、文科省による2012年からの「がんプロフェッショナル養成基盤推進プラン」により新設されました。全国に臓器横断的ながん関連講座が43新設された中の1つです。九州では3講座(九大、長大、鹿大)設置され、福岡県立大学を含む12大学よりなる「九州がんプロ養成基盤推進プラン」を推進していくことになります。とくに国際的な視野を持った指導者や優れたがん専門医療人を養成することが目的ですが、本学と長崎大学の場合には、地域貢献も求められています。その中では、医師不足地域でのがん診療研修や在宅医療研修なども含まれます。国が本格的に取り組んできた「がん対策推進基本計画」の柱の1つは「がん診療均てん化」であり、私共も良い人材を育てることで、その任務を果たして行きたいと考えています。
初期5年間は、4つのインテンシブコース(社会人)と大学院コースを通して、がんプロフェッショナルとしての学びの機会を提供します。平成24年度から毎年開講されている「がん専門薬剤師養成コース」、「成人T細胞白血病専門医療人養成コース」、「緩和医療専門人養成コース」、また私が直接関わっている「消化器がん集学的治療専門医療人養成コース」においては、すでに計80名以上の受講者が講義、e-learning等を通して学習し、いくつかのインテンシブコースは離島を含む各地域でも開講され高い評価を得ております。
一方、最重要課題の大学院コースは、“へき地・離島医療においてもがん専門医療人として活躍する人材”を育てることが目的で、現在1年目の院生が3名在籍しています。学位と共に、「がん治療認定医」や「がん薬物療法専門医」等の専門医取得が本コースの特徴でもあるので、臓器横断的に薬物療法・緩和医療を中心としたがん医療学習が深められるようカリキュラムを組んでいるところです。従来のがん診療教育では不十分であった“全人的医療Whole Person Care ”、すなわち、がん治療の全相(予防、早期発見、診断、それぞれの治療、緩和、終末期医療にいたるまで)の標準的な医療内容の説明責任や適正医療を成しうることが全世界的に求められてきており、既存の診療科とも連携しながら、それぞれのエキスパート教育に加えて、全人的な体系教育を行っていきたいと思います。
また多職種連携ならびに社会人教育の観点から、開講当初よりMultidisciplinary teamとしてのCancer BoardやInterdisciplinary teamとしての外来化学療法カンファレンスを運営してきました。Cancer Boardでは、がん関連20科と病理部、薬剤部、緩和ケアチーム、リハビリ、NSTなど5部門の専門家がそれぞれ一堂に会し、問題症例に意見を出し合い治療方針の決定がなされます。あらゆる角度からの意見を一度に得られる(聞ける)ことは、教育上も非常に有益だと感じており、若手医師や学生の参加も増えてきました。また、外来化学療法カンファレンスにおいても、症例検討、新規レジメン登録、セミナーなどを通して、治療内容の十分な検証と情報共有が図られ、診療の質向上の一助になっています。
私自身、微力ながらも、学内講座間また大学やそれぞれの地域間を結び付けつつ、教育と診療支援の面から少しでもお役に立てるよう邁進して行きたいと思っております。多くの方々の協力も仰ぎながら、皆さんと共に、少しでも患者さんに寄り添ったがん医療(Whole Person Care!)を構築して行きましょう。
平成26年2月20日
鹿児島大学医歯学総合研究科 先進治療科学専攻
臨床腫瘍学講座 特任教授 上野真一
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