私達は、体の不均衡を解消する為に、様々な行動を学習し、選択する事ができる脳の仕組み、「意思決定」の研究をしています。
意思決定の神経回路メカニズム
私達はこれまでに、動物がどのように環境を理解し、その知識を用いて予測的に行動を選択するのか、その神経メカニズムの一端を明らかにしてきました (Hamaguchi et al., PNAS 2022)。2次運動野の神経細胞は、運動の数秒前から将来の行動を表現する準備活動を示します。私達は、1)この準備活動が単なる運動準備ではなく、いまから行う行動の価値を表現している事、2)過去に良かった行動の価値に加えて、知識から来る予測に基づいて、行動の価値を調節している事、を明らかにしました。私達は、この準備活動ニューロンから遡り、どのように脳内で価値が計算され、行動に影響を与えるのか、明らかにしたいと考えています。
匂い刺激に誘発される多様な生理反応とその脳内機構
嗅覚系は情動を強く惹起することがよく知られており、匂い刺激は多様な生理反応を引き起こします。私達の研究グループでは、ラベンダーの主要香気成分であるリナロールの香気刺激が鎮痛効果(Tashiro et al. 2016, Kashiwadani et al. 2021, Higa et al. 2021), 抗不安効果(Harada et al. 2018)、鎮痒効果(Katsura et al. under preparation)を持つこと、そしてその脳内回路機構を明らかにしてきました。これらを手掛かりとして、嗅皮質における匂い情報処理機構を明らかにしていきたいと考えています。
摂食調節における大脳皮質の役割
「食べたい」「おいしそう」など、私たちが健康な時は、食べ物を目にするとそれを口に入れてみたい気持ちが起こります。このような摂食を促す仕組みに関係する大脳皮質の役割を探っていくことを目標にしています。報酬である餌が得られることが予測される状況になったときに活動する島皮質ニューロン(Ma et al 2023, Kusumoto-Yoshida et al 2015)を軸に、それらのニューロンが行動中に果たす実際の役割や、それらのニューロンに影響を与える入力などを明らかにしていきたいと考えています。