ハマラボセミナー 第二回(2025/10/20):小村豊先生(京都大学大学院人間・環境学研究科)

小村さんは現在、京都大学大学院人間・環境学研究科にて、げっ歯類やサルやヒトを用いて意識・無意識の違いという根源的な問いを追求しておられる、気鋭の研究者です。小村さんは近年、注意をしていても、知覚できない瞬間がある「意識のコマ落ち」という現象をサルで報告されていますが、今回は「意識は測れるのか」という刺激的なタイトルで、貴重なデータのお話を聞く機会を得ました。

DrKomura

 麻酔下や睡眠時に感覚刺激を与えると、皮質での反応がすぐに消えてしまうところ、覚醒状態では脳の様々な領域において反応が認められる事が、これまでに知られていました。 これは意識がある時と、ない時で神経回路の性質が違う事を意味します。fMRIのように全脳を網羅的に計測できる方法もありますが、 時間解像度が悪く、伝播の順番のように速い現象については、よくわかっていませんでした。 一方でシングルユニット記録のような高時間精度の電気生理実験では、脳全体がどのように活動するのか、全体像を把握する事が難しいという問題がありました。

そこで小村さんらは今回、共同研究者らと設計したグリッド状多点ECoG(皮質表面電極)を用いて、大脳皮質のLFPを網羅的に記録する事により、隣接する皮質領域を反応がどのように伝播するのか、飛び地にジャンプするのか、どのような活動パターンが立ち現れるのか、といった伝搬の性質を、高い時間分解能で調べる事を可能にしました。覚醒と麻酔下で比較する事で、意識の発現回路の動作特性に関わる知見を聞く事ができました。ECoG電極の計測はげっ歯類だけでなく、サルでも行っており、共通のメカニズムを見出そうとする徹底した仕事ぶりに、聴衆は感銘を受けた様子。詳細は、公刊される論文にてお楽しみください。

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Audiences

「今までの報告では…」と専門家からの突っ込み。

文責:濱口航介