教授挨拶
鹿児島大学大学院医歯学総合研究科
リハビリテーション医学 教授 下堂薗 恵
当分野は多くの先達の努力によって1988年に国立大初のリハビリテーション医学講座として開設されました。私は当教室出身のリハビリテーション科専門医ですが、よい環境で先輩や仲間、患者さん達から刺激を受けてリハ医学の診療、教育、研究に従事することができました。
人は誰しも病気や外傷、加齢などによって、日常の動作や活動に支障が生じ、生活が一変する可能性があります。このような障害の解決にはリハビリテーション医学的視点をもった専門医が必要です。すなわち、原因となる疾病や失った機能だけでなく、残存した機能や能力を身体的、心理学的、社会的に評価し、さらにそれを伸ばし活かすという視点です。また疾病の再発を予防し、新たな障害の発症を予防する視点も重要です。
地域医療では、様々な社会的背景をもつ個々の患者さんに寄り添い、“よりよく生きる”ために全身を管理し、多くのリハビリテーション専門職と協調してチーム医療を実践していくリハビリテーション科専門医が多く求められています。
私たちは高度で専門的な急性期、回復期リハビリテーション医療を、鹿児島大学病院リハビリテーションセンター(2018年に霧島から鹿児島大学病院内に機能移転)において実践し、さらにリハビリテーション医学教育や、大学院教育・研究を推進します。
患者さんは、運動や認知、言語、嚥下、排泄、心肺機能など、神経・筋肉や骨関節、内部臓器に複数の障害を抱えていることが多く、少ない負担で効率よく、最大限の機能回復を得ることが重要と考えています。そのため新しいリハビリテーション治療や、その基盤となる基礎医学的な研究にも力を注いでいます。
脳卒中などによって生じる片麻痺に対する新たな運動療法である“促通反復療法(川平法・ RFE)”をはじめ、振動刺激(DAViS)や、電気刺激、経頭蓋磁気刺激、温熱・温泉などの物理的な刺激の新しい応用法やリハビリテーションを促進する薬物治療の応用、医工連携によるリハビリテーションロボットの開発などはその一例です。
私は「次世代のリハ医療に新しく応用できる手段はないか」を、リハビリ室で、生活の場で、そして研究室でチーム一丸となって探っています。そのために多くの医師・研究者が集い、多様な力が結集することを願っています。多彩なスタッフと共に大きく学べる大学の特徴を生かした当教室のよき伝統を継承し、科学的なリハビリテーション医療を推進し、人材の育成、地域医療に貢献する所存です。
リハビリテーション医学教室の沿革
当教室は国立大学初のリハビリテーション医学講座として1988年に開設されました。2018年には開講30周年を迎え、リハビリテーション科専門医を60名以上輩出し、臨床、研究、教育における実力を高めつつあります。
初代教授 田中信行先生(1988-2004)、2代目教授 川平和美先生(2005-2013)に続き2014年から下堂薗恵教授のもとリハビリテーション医学の発展に尽くしています。
教室の名称は2003年4月に大学院大学への改組により運動機能修復学講座運動機能再建医学分野となりましたが、2008年5月に運動機能修復学講座リハビリテーション医学分野に改称しました。
当教室の診療の拠点であった鹿児島大学病院霧島リハビリテーションセンター(霧島市牧園町)は2018年3月末に閉院し、2018年4月から鹿児島大学病院(鹿児島市)へ機能移転いたしました。
鹿児島大学病院内では中央診療施設としてのリハビリテーション部の機能に加えて、2018年に霧島リハセンターから移行した回復期リハビリテーション病棟は2022年から特定機能病院リハビリテーション病棟(20床)となりました。今後、鹿児島大学病院リハビリテーションセンターとして診療や研究、教育にさらに力を尽くして参ります。