鹿児島大学
鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科
心身内科学分野および鹿児島大学病院心身医療科

教授あいさつ

鹿児島大学大学院医歯学総合研究科心身内科学分野を担当させていただいております浅川明弘でございます。この場をお借りいたしまして皆様に御挨拶申し上げます。心身内科学分野は、金久卓也教授、野添新一教授、乾明夫教授の貴重な御尽力によって発展し、現在に至っています。

心身内科学分野では、特定の臓器に焦点を当てるのではなく、心身相関に社会を含む環境を加えた、環境心身相関を中心にした病態の解明と全人医療を目的とした臨床・研究・教育を実施しています。

臨床においては、疾患部位のみに焦点を当てるのではなく、患者さんの心、行動、さらに、家族、住居、職場、社会などの環境を過去、現在、未来の時間軸を含めて把握し、患者さんを総合的に診ることを重視し、心、行動、身体、環境を把握した全人医療を実施しています。摂食障害、肥満症、機能性ディスペプシア、過敏性腸症候群、癌性悪液質、過換気症候群、慢性疼痛、慢性疲労症候群、睡眠時無呼吸症候群、フレイル、自律神経失調症などの疾患の他、他科、他医療機関において診断が困難である、或いは治療抵抗性を示す症例、社会環境面にも問題を有する症例、診療において障害がある症例、終末期の症例などを対象にして診療を行っています。また、患者さんの医療に対する満足度を上げるため、個別化医療、薬物への依存度を下げる医療、罹患前の予防医療、健康増進にも目を向け、漢方薬を含めた薬物療法のみならず、食、運動、睡眠を中心にした生活習慣改善、認知行動変容、環境調整を重視し、医師、薬剤師、看護師、検査技師、心理師、社会福祉士、栄養士、運動療法士、作業療法士などと連携、協力を行っています。

研究においては、人が総合的に良くなることに役に立つ研究を行うことを重視し、生命維持の根幹であり、個体の状態を制御するとともに、個体の総合的状態を評価するためにも重要である食を中心にし、食欲、食行動、体重調節、食環境、心身環境相関に関する研究を重点的に実施しています。また、外界からのエネルギー獲得に関連する活動量、消化管運動、学習記憶、不安、抑うつなどに関する研究も積極的に行っています。

教育においては、心、行動、身体、環境因子の相互作用を生物学的機序を含めて理解し、様々な疾患の病態に、心、行動、さらに、心、行動に影響を与える環境が重要な役割を演じていることを学び、臨床において患者さんのために応用可能となる教育を実施しています。また、診療に有用な患者さんの心、行動、身体、環境に関する情報を把握し、全人医療、個別化医療を実践するために、複数の診療科、職種と連携、協力することの重要性を教えています。

今後、経済、社会の発展、環境の多様化、医学の進歩を背景に、局所の異常の治療、予防が進むとともに疾患診断閾値、個人の異常閾値が低下、不快反応が上昇し、患者さんが要求する問題点、質が変化していく可能性が高いと考えます。そのため、多様な職種との連携、協力による医療が推進されるための体系構築を行うとともに、患者さんの満足度を上げるための治療法の開発、予防、健康増進、抗加齢の実践を、慎重かつ着実に進めていくことが重要であると考えます。また、国際社会における日本の知財国家としての位置、南九州最大の国立大学としての鹿児島大学、その大学院医歯学総合研究科の役割から、難治症例に対する高度医療、集学医療、先端医療を行うこと、新規医療を開発し、世界に向けて発信すること、世界基準の中で新たなテーマを見いだし、そのテーマの重要性、位置づけを確認しながら研究を積み重ね、独自性を展開し、世界に研究を拡げていくこと、一対一対応の機序解析の研究のみならず、多対多対応の機序解析、心身環境を含んだ個体としての統合的な解析研究を行うことが要求されていると考えます。これからも、常に広く学術の最先端を学ぶとともに、鹿児島大学内外の皆様の御指導、御教授をいただき、分野全体の実力向上を共通の目標とし、皆で互いに協力し改善し合いながら、努力を続けていきたいと思います。どうぞ引き続き御指導、御教授をいただきますよう何卒お願い申し上げます。

浅川 明弘 Akihiro ASAKAWA

 

著作を見る