島嶼看護学実習(ベーシックコース) 離島・へき地フィールドワーク(アドバンスコース)

日時:2018年8月14日(月)~  9月17日(木)

場所:沖永良部 大島郡知名町瀬利覚地区


この実習は、本教育プログラムが育成すべき能力の核としている「対象を生活者と捉える能力」を鍛えるためのものです。在宅ケアを実践する看護職は、対象を全人的に捉え“その人らしさ”を尊重する視点を持つことが不可欠です。そのため、本実習では離島で生活する人々と交流することにより、そこで暮らす人の生活習慣や価値観・規範・信条・死生観(文化)およびコミュニティのもつ特性について把握すること、そのことが対象の生活過程や生き方などに影響しているということを理解し、対象の「その人らしさ」を形成しているものはどういうものがあるかを理解することを目標としました。また、先駆的に地域づくりに取り組んでいる瀬利覚地区の活動を通して、自助・互助の重要性を理解し、コミュニティの持つ強みについて再考し「その人らしさを支えるために看護に求められていること」を理解することも目標としました。

現地では、初めて出会った履修生・学部生がグループとなり活動しました。緊張感いっぱいでのスタートでしたが、今年は短時間であっという間に仲良くなり、協力しながら課題を達成することができました。今年は実習前にアドバンスコースの履修生に対し、援助関係の学内演習を行いましたので、その成果だと感じています。これまでのアドバンスコース履修生は「白衣を脱いで地域に入ることがとても怖かった」と述べていました。それが「人対人」として向き合うことだと思います。白衣であろうとなかろうと、患者さん、患者さんの家族、学生、他職種と関わる際には、人としてまず向き合ってほしいと願います。援助関係が築けなければ、対象の真意を聴くこともできませんし、看護を提供することも、また、多職種と協働することも難しいですよね。今回も瀬利覚の方々の温かさに触れ、文化を知り、多くの学びと感動があり、涙する履修生もいました。中には、実習を終えて職場や周囲の方に「変わったね」と言われた履修生もおりました。これは第三者の評価なのでとても嬉しく思いました。対象者を全人的に捉える視点を鍛える実習でしたが、その中で、自己を省察し、自分自身の価値観なども振り返り、「自分らしさ」に自分の文化が影響しているのかについて理解できたからではないでしょうか。この実習での学びを今後の臨床経験に活かしてください!

知名町役場、保健センター、地域包括支援センター、もーりよ(精神サロン)、

社会福祉協議会、ファングル塾、瀬利覚婦人会、島民の皆様にご尽力頂き

多くの学びと感動がありました。ご協力くださり有難うございました。

学部生の気づき・感想

「実習を通じて感じたことは、人が健康に生きていくためには、人の支えが必要であり、つながりのある地域は強いということである。出会う人、皆、人のために何かをすることに喜びを感じ、人の喜ぶ顔が好きと語っていたことが印象的であった。人それぞれ、生き方や思いがあり、話してみないとわからないこともいっぱいあるのだと知った。これからはもっともっと対象の方の話を聞こうと思う。」

「実習を終えてまず感じたことは、この実習に参加して本当によかったなと感じました。私は今まで看護の視点で“住み慣れた地域に帰って、その人らしい暮らし”ということは考えていたのですが、地域という概念がとても難しく、イメージができませんでした。もちろん、場所によって違うと思いますが、今回の沖永良部の人々は本当に繋がりが強くて、それを大切にする地域でした。ここに来て“住み慣れた地域で生きる”ということが見えてました。逆に私のことを考えた時に、自分は自分の地域について全然理解できていないと感じました。もっと、自分の住む地域についても理解を深めたいし、今回、学んだ地域の繋がりや温かさを活かして“その人らしい暮らし”を送るための自分の役割についても今後考えたいと思いました。また、今回の実習で、島の人達が本当に親切で心がすごく温かくなる経験ができて人生の宝物の時間となりました。」

「今回の実習を通して、地域住民一人ひとりがそれぞれ、支え合い、助け合いながら自分たちの地域を守っていることがわかった。沢山の方々の温かさに触れ、家族や祖先を大切に思う気持ちや人とのつながりを大切にすることを改めて学んだ。今後、地域で病気がある人が過ごすことが多くなるこの社会で、“その人らしさ”を支えていくために、どのような看護が必要であるかを考えることができた。また、地域の人達、一人ひとりの強みを見つけ、自分も地域住民の一人として地域の活性化に取り組んでいきたいと思った。」

「実際に離島の地域に入るのは初めてで、地域をみる、文化を知るということに難しさを感じつつも、実習を通して少しずつ自分の物の見方が広がったと感じています。自分が生まれ育ったとちとは違う場所で、そこで暮らす人々の生活や文化、価値観を知り、実際に交流できたことで、これから出会う人々、対象の全人的な理解をする視点を得られたと思います。今回の実習での経験、物の見方や考え方をこれからの看護に活かしていきたいです。」

「離島を訪れるのは初めてであり、実際に島で生活されている方に直接お話をお聞きしないと知り得ないことが沢山あった。常駐の医師がいなかったり、精神科施設がなく島外へ受診したりしている現状を知った。そのような状況の中でも“不安や島以外のところで生活したい”などの発言は聞かれなかった。沖永良部に伝わる歌の一節にあるように“良いことはいつか巡ってくる”という思いから困難を困難と感じず、あるがままに受け入れて現状ときちんと向き合っていく心がこの地域の方に根付いているのではないかと考えることができた。これまでに伝わってきた歌を大切にし、自分たちの生き方に繋げていくことは、祖先や文化を大切にする地域性を表していると感じる。この思いがファングル塾の活動源となり、地域の方々の価値観に影響するものとなり、この地域の方々の生活や生き様を支えるものになっていると学んだ。」

「人との関係が希薄化しているこの時代に、地域の繋がりを大切に守ろうと動いている、個人、組織の活動に触れることができ、本当に良い経験でした。地域医療としてみた時に、この瀬利覚地域には、人との繋がりを大切にする、前向きに物事を捉えるなど多くの強みがあることを学び、これからファングる塾のような組織を、瀬利覚のような地域を増やしていけるような仕事をして生きたいと感じました。学業としての学びだけではなく、人として大事なことを多く学ぶこともでき、尊敬できる方々に一歩でも近付けるよう、日々努力していかなくてはと改めて気付くことができました。」

履修生の気づき・感想

「普段、指導的立場にある自分が、学生とグループを組み、実習することに抵抗がありましたが、自分にない気づきや考えや学んだことを教えて頂き、貴重な経験をすることができました。」

「離島に来たのは初めてで、病院内での実務とは違い、生活する場に入り、その中で情報収集を体験することで、自らのものの見方、考えを深めることの重要性に気付かされた。島民の方に話を聞いたり、地域のコミュニティを把握することで、その人にとって、その人らしく生活していることにフォーカスを当て、自らの接し方を振り返り、反応をみながら介入することが必要だとわかりました。島の文化や伝統を見たり聴いたりして守り受け継がれていることが素晴らしく、後世に繋げてもらいたいと思った。」

「日々の仕事、家事、育児に追われていて余裕のなかった自己の心に癒しができました。あっという間に時間が過ぎるほど、とても充実してした時間だったと思います。この島での学びは私の人生観を変えるとても素晴らしいものとなりました。また、日々の生活に追われ、余裕がなくなるのだと思いますが、島の人々との出会いや学部生や履修生の方々と過ごしたこの日々を思い出し、人を思いやる心を忘れないようにしたいと思います。」

「グループ活動を通して学びを共有することは、より広い視野で物事を見ることができ、価値観の違いも実感できた。また、それを強みにあるうこともできるとわかった。リーダー的役割を担う際の自己の傾向にも気づけた。今後も自分と向き合い、強みや弱みを知り、自分の対応を変えていけるように努力していきたい。」






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