アドバンスコース2期生 実務研修プレステップを実施しました♬

期間:平成28年11月1日(月)~12/21(水)のうち3日間
場所:さつま訪問看護ステーション(南さつま市金峰町)

 20161226 01
実務研修プレステップを南さつま市金峰町にある「さつま訪問看護ステーション」で3日間ずつ2人1組になり実習させていただきました。今回は、アドバンスコース2期生16名です。

 
実習目標
  1. “援助関係(看護過程)”において自分自身が陥りやすい傾向を述べることができる。
  2. “対象をどう捉えるか”という看護者の認識が、その後の看護過程の展開に大きく影響していることを説明できる
  3. “その人らしさを支えることができるかどうか”には、看護者自身の価値観や倫理的感性が非常に密接にかかわっていることを説明できる。
  4. 看護過程の展開において、自己の看護を客観的に分析・評価することの重要性を説明できる。

履修生自身が在宅看護過程を展開できるための基礎的な“あたまづくり”をするために、訪問看護に同行しシャドーイングの方法でプロセスレコードを書きました。
また、倫理的感受性を高めるためにもやもや解決シートや4分割法のツールを用いて、もやもやしたことを言語化し日々のカンファレンスでディスカッションを行いました。
プロセスレコードでは、自分と訪問看護師との思考をそれぞれ客観的に分析していったのですが、訪問看護師さんはまさに看護のエキスパートでした。
30分、1時間の限られた時間のなかで、対象の思いを自然に引き出し、言動や状況が何を意味するのか見抜いて意図的に関わっていました。
また、療養者の人生を時間軸で捉えており、体験してきたことやそこから形成された価値観と現状を捉え、「その人の思い・価値観」と「専門職として判断した対象のニーズ」との折り合いをどうつけていくか生活を中心とした看護を展開していたのです。

ここで、実習中の事例を一部紹介します。

認知症を有する80代女性(以下Bさん)の家に同行訪問した。
Bさんと顔を合わせた際、訪問看護師は、普段と違い目線が泳いでいることに気づき「緊張している」と判断していた。
私は、その場面を見た際うつ状態の既往があるという事前情報からもともとこうなのだろうと考え、何気ない情報の1つとして流してしまっていた。
その後のBさんとの関わりに対し、訪問看護師は、緊張をほぐすために、あえて勧められた座布団を断っており、Bさんが普段と同様に、思いの表出ができるような関わり方をしていた。一方、目線が泳いでいる、という事象を重要な情報の1つとして捉えられなかった私は、座布団に関して、あえて使った方がいいのではないかと考えており、認識のズレが生じていた。
言動以外の対象から発せられる情報(表情・視線の置き方・姿勢等)を1つ逃すだけでも、以降の関わり方が変わってくることを学んだ。
1つ1つの事象を意味のあるものと捉える感性を身につける必要があると考える。
以上のことから、“対象をどう捉えるか”という看護者の認識が、その後の看護過程の展開に大きく影響していることを学んだ。

「いつもと違う」とわずかな反応を汲みとった訪問看護師さん。その場面に気づき、学びとった履修生。 eラーニングの講義のなかで、『看護者に最も要求される能力として、Other feelingsのなかに“自己を投入する能力”。つまり、相手の様子からその人のfeelingsを読み取れること。“相手の立場に立つ能力”である。』とあります。履修生は、追体験することで『対象の立場を感じる能力』について実践のなかで学びを深めることができたのだとこの事例を通して思いました。以下にそのほかの履修生の学びや実習後に実践したことについても紹介いたします。

履修生の学び
  • 「医学的病気観で対象を捉えていた」、「主観だけで物事を見ていた」
  • 「説明、指導ばかりに重きをおいてその後の生活がどうなのか考えられていなかった。」
  • 「優先事項を対象に押し付けて関わってしまう特徴があることを知った。」
  • 「生活者が病気になり入院して、生活者として戻っていくためにどのようにアプローチをするべきか、入院するまでの生活を知るということが大切なのだと感じた。」
  • 「この人これでいいのかな?」「なんでそう行動(言動)したのかな?」など考えるようになりスタッフ間でもどのような生活をしてきたのか自然と話しあうようになった。」
  • 「患者の思いを家族に伝えることで自宅退院へつなげることができた。」
  • 「終末期患者がずっと望んでいた自宅退院に向けて多職種を巻き込んでカンファレンスを実施し、ACPを行い、患者さんが望む自宅退院を実現することができた。」
  • 自分自身の看護経験はやはり病棟看護師であり医療面中心の管理的な視点であった。もちろんその視点重要で高める必要がある。最新のよりニーズに沿える知識と技術があれば医師との連携もスムーズとなる。しかし、その前に「人と人」として向き合う訪問看護師の存在がある。専門職として存在する前に縁あって出会った両者であり互いを高め合える関係を築くための心構えがいる。その土台は倫理という価値観だと思う。その価値観を共有することが連携のカギであると思う。いかに関係者の価値観を揺らすことができるのかをこれからも考えていきたい。
  • 実習を通して、認知機能の低下した患者の治療選択について対象の知る権利や選択する権利が無視されていることや治療をした後の生活について全く検討されていないということに気づいた。その対象に対して、4分割を使用してカンファレンスを実施した。カンファレンスで問題がすべて解決するわけではないが、スタッフが対象や対象の家族の意思を尊重した看護・医療とはなにかということを考えながら関わってもらうきっかけになったのではと思う。また、自分自身の考え方を言語化し、他者の思考を知る機会にもなった。

目まぐるしい忙しさのなかで履修生は日々成長しています。やっている仕事が業務ではなく看護になり、チームで目指したことが実現できた!という喜びを味わうことができたのではないでしょうか。そして、自分がやっている看護の意味が見えて、これが対象の役に立っているのだといったことがわかれば忙しさのなかでもやりがいを感じられるのではないでしょうか。
「これでいいのかな?」「なんかおかしいな」という気づきを“自分から言語化する”ことが倫理的感受性を高めるための第一歩となります。
専門的な知識や技術も必要ですが、相手に寄り添おうとするこのような感受性が今後さらに必要となってくるのではないでしょうか。

さつま訪問看護ステーションの皆様、お忙しいなか丁寧なご指導をしていただきありがとうございました。
心から感謝申し上げます。そして、履修生のみなさん!実習お疲れ様でした☆彡

20161226 02

参考文献:看護の“知の見える化”で現場が変わる! 陣田泰子 メディカ出版
     看護実践のための倫理と責任 宮脇美保子 中央法規

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。