園田教授から皆様へご挨拶


 〜離島医療学講座に対する考え方〜

 私は、鹿児島大学医学部の「離島医療学講座」は
21世紀の地域医療に新しいモデルを提供するために、
世界に先駆けて開設されたものと理解しています。
 離島医療学の概念は、鹿児島の医学から生まれた新しい地域医療のコンセプトで、
成熟した学問領域ではありませんが、疾病の予防治療にとどまらず、
離島の生活環境・伝統文化・民族特性・社会経済の要素も含めた、
学際領域を対象とするものではないかと考えています。
 
 私は薩摩半島の南端に生まれ幼少の頃から離島の存在を意識して育ちました。
眼科の開業医であった父親から離島の生活ぶりや医療過疎のことを聞き、
医師として大成したならばこの問題に取り組んでみたいとも考えていました。

 私は1987年以来、国際学術研究で東南アジア、カリブ海、南西アンデス、
アマゾン、中国、ノルウェー北極圏海域に出向き、
辺境に住む人々のウイルス感染と疾病の調査を行ってきましたが、
現地の衛生状態は劣悪、乳幼児死亡は日本の40-50倍という高率で、
第二次世界大戦前後のわが国の貧しい状況と同じでした。
 子供は国の宝といわれます。健康な子供たちは大人になって国を支える力になるからです。
日本の戦後復興と発展にはわが国の母子保健対策が大いに貢献したといわれています。
母子手帳の普及と保健活動(母子栄養指導)の結果、
わが国の乳幼児死亡率は過去40年間で50分の1に激減し、
世界一の長寿国になりました。
 東南アジアや中南米の途上国では、日本の成功を見習い母子手帳を施行し、
一部の国では乳幼児の死亡率が低下し始めています。

 わが国の疾病状況は母子保健対策と医療保険制度の適用で
往時の悲惨な病気を忘れるほどに改善されましたが、
往年の長寿国日本の負の遺産として高齢者の医療問題が顕在化してきました。
 現下、日本の離島でも高齢化が進み、離島医療の中心課題は高齢者対策になっています。
 しかし都市型医療の拡大施行には限界があり、離島に有用な予防医学と救急医療の具体策を、
早急に編出する必要があります。

 ITネットによる遠隔医療システムの整備も急がねばなりません。
ここでは、本学の医療情報管理学講座が中核となり、
「Telemedicine System in Kagoshima Pref., Japan」を拡充していただきたいと思います。

 一方、離島の生活環境と伝統文化には本土と異なるものがあり、
離島の人々に最適の生活様式と保健医療のあり方があります。
 離島で幸福度の高いQOLとはどのようなものか、もう一度吟味してみる必要があります。

 鹿児島大学には8学部(教育学・法文学・理学・農学・水産学・工学・歯学・医学)のほか、
9つの附置研究センターがあり、人文科学から理系科学まで、
幅広い学問分野を網羅することが出来ます。
 この総合大学の利点を生かした学際研究プロジェクトで、
離島医療の問題を取り上げることも一策と思われます。

 今回開設された「離島医療学講座」に期待される効果として、
1)地域医療の推進、2)包括医療の確立、3)全人的医療の達成、 4)国際化の視点導入
の4本の柱があげられます。
 このうち1,2,3の柱は鹿児島の離島医療に関わる当面の課題ですが、
第4の柱によって東南アジアから西太平洋の海域まで視野を広げれば、
「国際島嶼医療」の問題にも貢献できると思います。

 現在、カリブ海の島々ではマイアミ大学を拠点としたTelemedicineのネットワークがあり、
熱帯医学や島嶼医学の教育研修プログラムが開設されています。
 マイアミ大学は、わが国の姉妹校であり、
地球の東西二つの半球を結ぶ「国際島嶼医療学」の確立も
夢ではありません。

 私は、「離島医療学講座」が所期の目的を果たし、21世紀の地球医療に
希望と力を与える教育と研究の中核になれるように、
新講座の立ち上げと優秀な人材の発掘と育成に全力を尽くしたいと考えています。

 また、多くの方々から、ご意見をいただき、よりよきものにしていきたいと思いますので、
離島医療に関心をお持ちの方からの連絡をお待ちしております。


園田俊郎教授 プロフィール
 園田俊郎  SONODA Shunro

略歴
1938年1月  鹿児島県枕崎市に生まれる
1963年3月  九州大学医学部卒業
1968年     同学大学院医学研究科修了
1968-1971年 米国テキサス大学 M.D.Andersonがん研究所留学
1971-1974年 大阪府立公衆衛生研究所ウイルス課(主査)
1974-1980年 愛媛大学医学部細菌学講座(助教授)
1980-1984年 愛媛県立衛生研究所(所長)
1984-1990年 鹿児島大学医学部ウイルス学講座(助教授)
1990-2001年           同上        (教授)
2001年12月1日-現在 鹿児島大学医学部離島医療学講座 (教授)
                 同大学ウイルス学教授  兼任

専門領域 
 離島医療学、ウイルス学、免疫学、HLA学

研究テーマ
 離島医療、タラソテラピー(海洋療法)、ウイルスと発ガン、HTLV-1関連疾患の免疫遺伝学 

研究内容のキーワード
 離島医療、タラソテラピー、ウイルスのDNA診断・血清診断、成人T細胞白血病(ATL)の免疫療法、
 ヒトとブタの組織適合性遺伝子(MHC)の単離、緑茶ポリフェノールによるATLの予防と治療

最近の研究業績
・Herpes simplex virus type 1 and 2,chlamydia, syphilis and toxoplasma infectins in pregnant Japanese women with
human T-lymphotropic virus type I infection. J. Acq. Immuno.Defic. Synd. Hum. Res.17, p95-97(1998)

・Human CD4 +T lymphocytes recognize a highly conserved epitope of HTLV-1 env gp21 restricted by HLA DRB1
*0101. Clin Exp. Immunol. 111, p278-285(1998).

・Human Leukocyte Antigen Class U Alleles Associated With Human T-cell Lymphotropic Virus Type I Infection and
Adult T-cell Leukemia/Iymphoma in a Black Population. J.Natl Cancer Inst.90,p617-622(1998)

・HLA class I and class Uof the Nivkhi, an indigenous population carrying HTLV-I in Sakhalin, Far Eastern Russia.
Tissue Antigens. 52, p444-451(1998)

・Characteristic Distribution of HTLV-I and HTLV-UCarriers amang Native Ethnic Groups in South America.
AIDS. Res. Hum Retrovirus.15, p1235-1239 (1999)

・Identification and phylogenetic chracterization of a human T-cell leukemia virus type I isolate from a native inhabitant
(Rapa Nui) of Easter Island. J Gen Virol. 80, p1995-2001(1999) 

・Expression of heat shock protein 70 mRNA in polymorphonuclear cells responding to surgical stress. J. Anesth. 13,
p144-149 (1999). 

・Polymorphism in RANRES chemokine promoter affects HIV-1 disease progression. Proc. Natl. Sci. USA. 96,
p4581-4585 (1999) 

・A Seroepidemiological Survey of HTLV-I/Ucarriers in the PUNAJUJENA. Medicina (Buenos Aires). 59, p717-72
(1999) 

・The presence of ancient human T-cell lymohotropic type I provirus DNA in an Adean mummy. Nat Med. 5,
p1428-1432 (1999). 

・Origins of HTLA-1 in South America. Nat Med. 6, p233.(2000) 
・Green Tea Polyphenols Induce Apoptosis in vitro in Peripheral Blood T Lymphocytes of Adult T-cell Leukemia
Patients. Jpn. J.Cancer Res. 91, p34-40 (2000)

・Ancient HTLV type 1 provirus DNA of Andean mummy.AIDS Res Hum Retroviruses. 16:p1753-6.(2000)
・Improved Outcome of Addult T Cell Leukemia/Lymphoma with Allogeneic Hematopoietic Stem Cell Transplantation .
Bone Mallow Transplant. 27, p15-20 (2001)

・β-Globin Gene Heplocyte Characteristics of Colombian Amerinds in South America. Hum Hered 51,p54-63 (2001)
・HLA-A26,HLA-B4002,HLA-B4006 and HLA-B4801 Alleles predisponse to Adult T cell Leukemia : The imiited
Recognition of HTLV Type 1 Tax Peptide Anchor Motifs and Epitopes to Generate Anti-HTLV type 1 Tax CD8+
Cytotoxic T lymphocytes. AIDS Res Hum Retrovirus 17, p1047-1061(2001)

・Human Papillo,avirus Infection among Bolivian Amazonian Women. Asian Pac J Cancer Prevent. 2, p135-141 (2001)
・β-Globin Gene Heplotype Characteristics of Colombian Amerinds in South America. Human Heredity 51, p54-63 (2001)
・High Prevalence of HBV in Tibet,China. Asian Pacific J.Cancer Prev. p299-304 (2001)
・ヒトゲノム多様性とヒトレトロウイルス感染症-ポストゲノム時代のウイルス学-HLAとHTLV-1 ウイルス 50, p35-45 (2000)
・成人T細胞白血病(ATL)の発症予防と治療 日本医事新報 3973, p16-25 (2000)
・HTLV-1からみた人類 感染・炎症・免疫 30, p35-42 (2000)
・疾病感受性の民族差 医学のあゆみ 197,p996-1002 (2001)

学会活動
 日本ウイルス学会 (評議員)
 日本癌学会 (評議員)
 日本組織適合性学会 (理事)
 日本臨床ウイルス学会、細菌学会、日本免疫学会、
 日本生殖免疫学会、移植学会、輸血学会

その他
 鹿児島タラソテラピー研究会 (会長)
 鹿児島ATL制圧研究委員会 (副委員長)
 鹿児島ATL制圧委員会研究推進部会 (委員長)
 国際レトロウイルス学会 (Advisory Board , Vice President)
 米国・マイアミ大学医学部血液腫瘍学 (Adjunct Profssor)
 コロンビア・バジェ大学医学部微生物免疫学 (Honorary Professor)
 ジャマイカ・ウエストインディー大学医学部ウイルス病理学 (Honorary Professor)

受賞
 1991年 International HLA Workshop Conference 金賞 
 2002年 高松宮妃癌研究基金 学術賞