国際島嶼医療学講座(旧 離島医療学講座)が開講されて3年目を迎えます。開講にあたり、この新しい講座の方向性が十分に討議されたこともあり、順調な滑り出しを見せています。

卒前教育では、鹿児島県における離島医療の背景や現状、サポートシステムの理解、プライマリーケアや救急医療、予防医学に重点をおくととともに、現場の先生方の熱意あるご協力により離島医療実習にも積極的に取り組んできました。この「見て、感じて、考える」実習は地域に貢献できる医療人育成に有用であり、今後とも内容の充実を図りながら、取り組んでいきたいと思います。今年度、当講座が担当するカリキュラムは3年生の基礎医学特別コース、4年生の鹿児島一次医療系および離島医療学の講義、人間学Vの離島医療実習、6年生のクリニカルクラークシップです。この他に、昨年度は1〜2年生の教養特別科目「離島対策」にも協力しました。また、カリキュラム以外にも、夏休みに希望者が行く離島医療実習の窓口になっています。

大学院の博士課程、修士課程では、離島医療の総論、各論に加え、離島および開発途上国フィールドでの疫学研究を中心に講義と実習を行います。実際に離島に行き、住民を対象に後述の生活習慣病予防のための分子疫学研究のデータ収集や解析、長寿に関する環境・宿主要因とその相互作用に関する研究(食生活習慣や遺伝子多型、動脈硬化)、タラソテラピーの効果検証に関する研究などを組み込んでいます。あまみ島嶼地域で予防に有用なテーマに絞り、データ収集調査と解析まで幅広く研究を行いますので、フィールド研究に興味がある人向きのテーマです。

研究面では、今年度より日本多施設共同コーホート研究(J-MICC)として、あまみ島嶼地域で分子疫学コーホート研究を始めます。これは島嶼地域におけるこれからの生活習慣病予防のための重要なデータベースとして活用できるものであり、今後10年以上に渡って当講座における研究の中心的存在になります。さらに、これまで取り組んできたあまみ地域における長寿の環境・宿主要因に関する研究やタラソセラピーの健康増進に対する効果検証に関する研究も継続して取り組んでいます。いずれも、学内の各教室や地元市町村、鹿児島県、関係医療・研究機関と連携を取りながら、共同で進めていくことが必要で重要であります。

国際的には、3年目を迎えるJICAの「離島医療」研修コースを行うことができました。このコースは途上国からの参加者にとってもちろんのこと、鹿児島県の離島医療に携わる者にとっても学ぶことの多い有益なコースです。幸い、これまでの関係各位の尽力により良い評価をいただき、平成17年度も行われることが内定しています。これからもさらに充実すべく尽力したいと考えています。

離島医療には離島へき地の抱える様々な問題がありますが、今後とも人材育成と学術支援面を通して、貢献していきたいと考えています。

平成17年5月

国際島嶼医療学講座
教授 嶽崎俊郎