離島へき地医療人育成センターの設立
離島へき地医療人育成センター
センター長 嶽ア俊郎
(兼 国際島嶼医療学講座教授)
鹿児島県は、28の有人離島(平成17年全国第4位)を有し、離島人口は191,386人(平成12年全国1位)と最も多い県です。鹿児島大学は平成13年度に地域貢献の点から、離島に医療を確立する方略を明らかにし、離島医療の担い手を育成する目的で、世界でも初めての離島医療学講座を医学部につくりました。平成15年度には大学院重点化に伴い大学院医歯学総合研究科の国際島嶼医療学講座へと進化し、アジア・環太平洋における離島へき地医療人の人材育成を通じて、国際的にも貢献できるようにしました。
これまでの実績として、鹿児島大学の医学部医学科学生に対する離島へき地医療現場での実習を中心とする段階的な離島医療教育、あまみ離島地域をフィールドとした疫学研究に関わる大学院生教育、アジア・環太平洋の離島医療に関わる医師を対象とするJICA「離島医療」研修コースを実施してきました。さらに、平成17〜19年度に医学部・歯学部附属病院が中心になって行った地域医療等社会的ニーズに対応した医療人教育支援プログラム「離島へき地医療を志す医師教育支援」(文部科学省)では、離島へき地医療教育支援室を設置し、国際島嶼医療学講座と共同で離島医療に関わる学生教育を支援するとともに、離島医療現場で行う診療に附属病院が専門的な立場から支援を行うITシステムを開発しました。これらの基盤をもとに、平成19年度から医学科6年の学生全員に対し、必須科目として離島医療実習を開始しています。
離島へき地医療人育成センターは、これまでの実績を基に、地域医療人育成の拠点と連携して、全国の医学部学生、大学院生、および離島医療を志す医師に対して教育プログラムを作成し、実習・研修を行うために設置されました。これにより、離島へき地医療に関する高度の知識と技術及び幅広い支援方法を習得させ、地域医療に関わる人的資源の質と量を高めることを目的としています。
医師の地域偏在は未だに解決の兆しは見えず、離島へき地を含む地域医療は危機的状況にあります。この状況を改善するためには、国を中心に行政、医療機関、医学教育機関が連携を取りながら、多方面に渡った対策が必要です。当センターは離島へき地医療を目指す学生や医師に対する育成、現場の医師に対する支援を通じて、離島へき地医療を取り巻く人材の育成に貢献したいと考えています。
地域医療関連講座としての再出発
離島へき地医療人育成センター
教授 大脇哲洋
平成19年4月1日に、5年間の期限付きで発足した「離島へき地医療人育成センター」でありますが、平成23年4月には特別予算から一般予算にかわり継続が決定しました。この間の、教育・研究・診療が広く認めていただいた結果と考えており、ご支援いただいた方々には深く感謝申し上げます。そして平成25年1月1日、更に通常の講座として認めていただき、人的にも継続した活動が可能となりました。
地域医療を取り巻く環境は、複雑であり、特に離島へき地に於いては、高齢化・人口減少など、日本の将来の縮図ともいえる問題を多く抱えています。都市部に於ける地域医療に於いても、核家族化や独居老人の増加、複雑化する医療への対応など、長期・短期の困難な問題が山積しています。本講座は、そのような時々刻々と変化する社会の中で、常に最良の医療を国民に提供するためにどのような解決策があり、どのように実践するかを、教育・臨床・研究の面から明らかにしていくことを目的としているものです。これらの問題は決して日本だけの問題ではなく、形を変えて世界的な命題でもあり、世界にも目を向けた地域医療の在り方を探って行くこともまた、必要と考えています。こうした視点に立って、地域医療学(Community
Based Medicine)を考察し、鹿児島から多くの情報を発信していくために、2013年1月1日に「鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 離島へき地医療人育成センター」は「鹿児島大学大学院医歯学総合研究科」および「鹿児島大学医学部」の地域医療関連の本講座として再出発したわけです。鹿児島県の特性を活かし、いろいろな角度から地域医療を見つめ、有意義な情報を提供し、地域医療に貢献していきたいと思います。
平成25年1月7日
大脇哲洋