地域枠医学生について

地域枠出身医師の麻酔科医への道

鹿児島大学医学部医学科に地域枠として入学した医学生は、卒業後9年間鹿児島県の地域医療に従事する義務があります。
現在、2年間の初期臨床研修は鹿児島大学病院プログラムか鹿児島県立病院プログラムで行うことができ、鹿児島市内での研修が可能ですが、初期研修後専門医研修を行う際には鹿児島市以外の県が指定した知事指定病院での7年間の勤務が求められています。

従って、そのような施設で開設されていない診療領域での専門医の取得は困難となります。
しかし、麻酔科では県内の6つの知事指定施設(図1地図参照)で診療を行っており、そこで勤務して麻酔科研修を行うことにより、県の地域医療への義務を果たしつつ、麻酔科専門医を取得することが可能です。

具体的に、地域枠出身医師の麻酔科専門医取得の過程について説明します。地域枠出身医師はどの診療科に進んでも、初期研修終了後3年間は離島・僻地診療に従事する義務があります。そのうち1年は僻地医療に必要な知識・技術を身につける実務研修を県立病院で行い、その後僻地で2年間勤務します。
その3年間の義務を専門医取得後に果たすのが、図2の「専門医取得優先ローテーションモデル」です。このモデルでは2年間の初期研修後、6つの麻酔科のある知事指定病院で研修を行い専門医受験に必要な症例を経験します。しかしこれらの病院では心臓血管外科や胸部外科などの特殊症例を経験することができませんので、鹿児島大学病院での義務外の研修が1年間必要となります。しかし専門医研修開始後4年目に麻酔科専門医を取得することができます。その後卒業後8年目から義務の僻地医療を行うことで、9年間の義務年限を終了できます。

この間は麻酔科の診療に従事できませんが、日本麻酔科学会では地域枠出身の麻酔科医には義務のために麻酔科診療ができなくても麻酔科専門医が維持できる特例を設けていますので、専門医資格を失うことはありません。また麻酔科診療に復帰して5年経過して時点で、専門医の更新が可能です。もう一つのモデルはまず3年間の実務研修と僻地勤務に従事する「義務勤務消化優先ローテーションモデル」です(図2)。初期研修を県立病院か大学病院で行って、その後すぐに3年間義務を果たした後は、麻酔科のある知事指定病院で麻酔科研修を行うモデルです。

前述の「専門医取得優先ローテーションモデル」と同じく1年間は大学病院で研修して特殊な症例を経験しますので、義務年限の終了が1年間遅れますが、その後は他の専門医と同じく5年毎の専門医更新が可能です。以上のように、地域枠出身医師は義務年限を果たしながら麻酔科専門医を取得し更新することが可能です。そして地域医療に貢献するという地域枠出身医師の責務を果たし、かつ麻酔科医として地域での手術麻酔・重症患者管理・ペインクリニックなどの発展に尽くすことができます。

当麻酔・蘇生学教室は地域枠出身医師の活躍に期待しており、そのために教室として最大限の支援とアドバイスを行っております。地域枠出身医師の方は是非麻酔科医として地域医療に貢献していただきたいと思います。また女性の地域枠出身医師も、当教室の女性医師復帰支援プログラムを利用することで、出産し育児を行いながら麻酔科専門医を取得し維持することが、男性の地域枠出身医師と同様に可能です本ホームページの女性医師復帰支援プログラムも御覧ください。

県内の6つの知事指定施設(図1)

「平成29年度版鹿児島県専門医研修プログラム」105ページより

県内の6つの知事指定施設(図1)

専門医取得優先ローテーションモデル(図2)

専門医取得優先ローテーションモデル(図2)

専門医制度について麻酔科専門医制度

4年間の麻酔科医療(手術麻酔、ペインクリニック、救急、集中治療)専従と600例の麻酔経験、それに、心臓外科手術の麻酔、脳外科手術の麻酔、呼吸器外科手術の麻酔、帝王切開の麻酔、小児麻酔の特殊症例計110例の経験が必要。そのためには大学病院で1年間の研修が必要。研修の中断について:麻酔科の専門医制度では、地域枠生の義務勤務による研修中断は年限の制限がない。(他の場合には最大2年)そのため、専門医取得後3年間麻酔科以外の勤務を行っても資格は継続できる。