主な対象となる症状や疾患
腰や足の痛み
(腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、腰椎椎間関節症など)
腰痛の経験がある方は非常に多く、程度がひどくなると、歩行や立ち上がり、寝返りなどの、普段は何気なくしている動作も困難になります。治療により、痛みが緩和されるだけでなく、そのような日常生活動作の改善も治療効果の1つとして重要であり、早期であるほどその改善は早まります。
物を持ち上げようとした時や、腰をひねった時などに、突然腰が痛くなる急性腰痛の場合では、1回のブロックで大きな効果が得られることもあります。代表的なブロックは、腰部硬膜外ブロックですが、その他にも数種類のブロックの中から、原因に合わせて選択します。
首や肩、腕の痛み
(頸椎症、頸椎椎間板ヘルニア、肩関節周囲炎など)
頸椎症などの場合、少し首を動かすだけでも首や腕に激痛が走ったり、横に寝るのもつらい場合がありますが、近年発展してきた超音波装置を用いることで、障害されている神経を正確にとらえてブロックすることが可能となり、劇的な効果をもたらす場合もあります。
代表的なブロックは、腕神経叢ブロックや星状神経節ブロックです。また、五十肩で悩まれている場合でも、上記の超音波装置を用いて治療することで、確実な効果を得ることができ、数年来の痛みが解消されることも多いです。
帯状疱疹の痛み、帯状疱疹後神経痛
幼少時にかかった水ぼうそう(水痘)の原因であるウイルスが神経の中に潜んでいて、それが原因となって起こるのが帯状疱疹です。誰でも発症する可能性があり、ほとんどが治癒しますが、一部の場合は激痛を伴い、皮疹が治癒したにもかかわらず神経痛という合併症が残る場合があります。神経痛への移行を防ぐことが大事で、それには発症早期からの積極的な治療が必要となります。薬物治療に神経ブロックを併用することも多く、発症部位に応じて神経ブロックの種類を選択します。ただ、神経痛に移行した場合でも、様々な治療を集約して行うことで痛みが緩和したり、消失することもあります。
顔面の痛み(三叉神経痛など)
三叉神経痛が代表的で、その特徴は数秒程度持続する発作痛です。状態がひどくなると歯磨きや食事、洗顔でも激痛が発生するようになります。代表的な治療に抗てんかん薬の内服がありますが、副作用が発生したり、痛みが緩和されない場合には、神経ブロックや手術などが選択枝となります。神経ブロックの場合には、通常1回の治療で年単位の効果が得られる特徴があり、治療効果の高さはかなりのものです。代表的な神経ブロックは、眼窩下神経ブロックやガッセル神経節ブロックで、いずれも高周波熱凝固法という方法を用いることで長期効果が得られるようになります。
頭の痛み(片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛など)
頭痛には片頭痛などのような慢性的な場合と、くも膜下出血に代表されるような命にかかわるような急性の場合があります。ペインクリニックで扱うのは前者の慢性的な頭痛であり、片頭痛や緊張型頭痛が代表的です。基本は薬物治療であり、状態に応じて薬剤を選択していきますが、星状神経節ブロックやトリガーポイント注射などを行うこともあります。
末梢血行障害による痛み
(閉塞性動脈硬化症、バージャー病など)
四肢の血行障害が原因で、手足に痛みや冷え、潰瘍などが出現する病気です。基本の治療は薬物治療ですが、ペインクリニックでは、主に血行改善目的に交感神経ブロックを行います。下肢に対しては、腰部の交感神経に高周波熱凝固を行なったり、高濃度のアルコールを注入することで長期効果を得る方法もあります。その他には、下肢の痛みに関係している坐骨神経の周囲にカテーテルを留置して、持続的に痛みを緩和、消失させる方法もあります。
癌による痛み
癌の種類は非常に多く、原疾患による痛みと転移による痛みに分かれ、その痛みの内容も様々です。治療の基本であり、中心となるのは薬物治療ですが、神経ブロックが適応となる場合もあります。代表的な痛みは、すい臓や肝臓などの腹部内臓の癌による内臓痛です。その他には、腫瘍が大きくなり、周辺の神経や組織が圧迫されることで生じる痛みも適応となる場合があります。代表的なブロックは、内臓痛に対する腹腔神経叢ブロックで、高濃度のアルコールを使用することで数か月単位の効果を得ることができます。適応があれば、早期に実施することが推奨されています。このように神経ブロックを行うことで、鎮痛薬の内服量が減ったり、痛み治療のために入院が必要な場合には、自宅退院という可能性も出てきます。
顔面神経麻痺
突然発症することが多く、その原因としてはいくつかの説があげられています。ペインクリニックでは、ステロイドなどの薬物治療以外に星状神経節ブロックを行っています。発症時期や顔面神経麻痺スコアを指標に、重症の場合には連日行うこともあります。
複合性局所疼痛症候群
外傷などによる組織損傷後に、傷が治癒したにもかかわらず痛みが遷延する場合があります。複数の機序が関与しており、その診断は慎重に行わなければなりません。個々の病態に応じて、薬物治療や神経ブロック、リハビリなどを組み合わせて治療します。