研究内容

基礎研究

基礎研究

1.慢性痛におけるグリア細胞の役割を明らかにする(五代 幸平)

 慢性痛とは、通常の傷が治る期間を過ぎても続く痛みであり、人口の約20%が慢性痛を有していると考えられています。本来、痛みには組織が傷ついたことを知らせるアラームという重要な役割があります。しかし、傷が治ってからもアラームが鳴り続けることがあり、これが慢性痛です。痛みには、傷・炎症による「侵害受容性」の要因、神経の圧迫・損傷による「神経障害性」の要因、ストレスなどによる「心理社会的」要因があります。我々はマウスを用いて侵害受容性痛や神経障害痛のメカニズムを研究しています。

グリア細胞は免疫細胞の一種であり、中枢神経系において種々の炎症や創傷治癒に関与しています。慢性痛におけるグリア細胞の役割を解明することで、慢性痛の新規治療法の開発に役立つことが期待されます。侵襲制御学教室では、慢性痛患者の臨床経験も豊富です。そのため、基礎研究と臨床研究の橋渡しに貢献できると考えています。

競争的獲得資金

日本学術振興会, 科研費, 基盤研究(C)Caチャネルα2δリガンドのHO-1/グリア細胞を介した鎮痛機序の解明(課題番号:23K08335).

発表論文

・Heme oxygenase-1 inducer and carbon monoxide-releasing molecule enhance the effects of gabapentinoids by modulating glial activation during neuropathic pain in mice.Pain Rep. 2018; 3: e677. PMID: 30534628.
Heme oxygenase-1 in the spinal cord plays crucial roles in the analgesic effects of pregabalin and gabapentin in a spared nerve-injury mouse model.

Neurosci Lett. 2022; 767: 136310. PMID: 34736722.

 

2.敗血症関連脳症に関与する脳の神経活動の研究(中原 真由美)

 敗血症は、重症化すると生命を脅かす多臓器障害を引き起こし、全世界的に死因の1/5を占めるとも言われています。敗血症の救命率は、集中治療の進歩、Surviving Sepsis Campaign Guidelines(SSCG)の活動、抗菌薬の開発などにより向上していますが、長期予後はいまだ不良であり、敗血症関連脳症の合併による認知機能障害などの後遺症が問題となっています。近年、全世界的に大きな影響を及ぼした新型コロナウィルス感染症(coronavirus disease 2019: COVID-19)においても、回復後の後遺症として、記憶や認知機能の低下が知られています。我々は、脳の神経活動と敗血症関連脳症との関係性について研究しており、臨床的にも応用できる治療戦略に繋げたいと考えています。

競争的獲得資金

日本学術振興会, 科研費, 基盤研究(C) インビボ神経イメージングによる敗血症関連脳症に関与する大脳神経回路同定と治療戦略(課題番号:21K09077)

発表論文

・Recombinant thrombomodulin protects mice against histone-induced lethal thromboembolism.: PLoS One 8(9),e75961, 2013. PMID: 24098750

Circulating histone H3 levels are increased in septic mice in a neutrophil-dependent manner: preclinical evaluation of a novel sandwich ELISA for histone H3. Journal of Intensive Care. 6:79, 2018. PMID: 30505450