第6回 指導医・指導者講習会(2011年12月4日(日)実施 ジェイドガーデンパレス)

平成23年12月4日(日)に「地域医療を担うプロフェッショナリズム教育」指導医・指導者講習会 第6回が行われました。

「地域医療の体験をプロフェッショナリズムの学習へ」

1)地域医療実習で学生が修得する能力とは

 医学科教員4名、保健学科教員2名、学外指導医指導者5名、医学科6年生5名が参加し、 田川先生の講演がありました。平成23年の医学教育モデル・コア・カリキュラムの中で、地域の医療を担う意欲及び使命感の向上が強調されています。医師として求められる基本的な資質(医師としての職責・患者中心の視点・コミュニケーション能力)の修得に最適なのは地域医療です。鹿児島大学医学部学生が地域実習で必要な学習、特色となる学習について考えなければなりません。
 その後鹿児島大学の地域医療教育の到達目標について3グループに分かれ討論及び全体討議を行いました。患者さんの全体像を発症から転帰(地域との連携等を含む)まで理解すること、ケア(介護・よりそう)・患者の生活と医療の関わり・他施設及び他職種との連携が重要であること、患者中心の医療の実践・大学での学習成果の実践・地域(離島)の特性を生かしたコミュニケーションが大事との意見が出されました。
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2)離島での学生実習

 国際島嶼医療学講座 嶽撫r郎先生にご講演いただきました。医学部学生の離島・地域医療実習の学習目標はプライマリ・ケア体験などがあげられますが、医療資源が限られているからこそ医師や医療の役割を理解しやすいという利点があります。成人1000人のうち、1か月間に250人が医師を受診しますが、大学病院に紹介されるのは1人のみであり、プライマリ・ケアの重要性がわかります。地域に興味を持つ、プライマリ・ケアにおける包括性や継続性の重要性、医師のやりがい、救急医療など地域医療から学べることは多岐にわたります。離島・地域医療実習後に医学生は、やりがいを感じていること、また地域枠学生特別実習を平成20年から行っており、地域医療マインドの醸成に役立っているとのお話もありました。
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3)ナカノ在宅医療クリニックでの経験

 ナカノ在宅医療クリニック 中野 一司先生のご講演がありました。
 超高齢社会を迎え、増えているのは病人ではなく(慢性疾患を抱える高齢)障害者です。
村田久行教授(京都ノートルダム女子大学)のCUREとCAREの定義が住宅医療の基本的な考え方として非常に有用です。一般的に疾病の苦しみへの対処法として、客観的状況の改善を目的としたCURE(治療)と、患者の主観的な思い・願い・価値観が変わるのを支援するCAREがあります。CUREが困難でもCAREにより客観的状況と主観的な思いのズレが少なくなり疾病の苦しみを緩和できます。現代の超高齢社会ではCUREできない高齢者の慢性期医療が主です。CAREを主体とする在宅医療の役割が大きくなっており、急性期医療の集約化及び在宅医療の充実化が求められています。また他職種連携で機能する地域連携ネットワーク型在宅医療システムを構築するためにICT(Information and Communication technology ; 電子カルテや法人内メーリングリスト)を活用しています。教育環境の整備のために勉強会やケアカンファレンス・医学生や研修医等の研修の受け入れも行っています。在宅ケアネット鹿児島(メーリングリスト)の活用やかかりつけ医の必要性もお話しいただきました。
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4)地域医療実習のカリキュラム(教育の計画)

 鹿児島大学医学部学生の地域医療実習の具体的な教育計画について、3グループに分かれて討議し発表しました。出された意見は以下の通りです。
・ 市中の中核病院での2〜4週の実習で、指導者は学生の希望及び習熟度を把握し、学生は事前に準備をきちんとすることが重要である。
・ 患者導入時に医療の仕組み(種類・費用など)の説明を家族と一緒に聞くことにより、仕組みを理解する。訪問診療や退院時共同指導に同行した看取りのオンコールに参加して訪問診療や地域の生活および医療の実際を理解する。スタッフミーティングやケアカンファレンスに参加して医療連携を理解する。移動中などに時間を作って討議することにより、振り返りによる理解の定着を図る。
・ 3〜4年生及び6年生と複数回の実習が有用である。総合医の視点を持てるようなバランスの良い実習が必要である。患者宅に宿泊したり、食事等を共にして生活を理解できるといい。指導医は学生の学習段階を理解し、学生は予習をして実習に臨むべきである。学生が住民教育に参加し地域で発表することも有用である。経営のマネジメントの観点も意識した他職種との連携の重要性も認識する必要がある。
 最後に地域臨床実習の評価とフィードバックに関して田川先生から討議がありました。臨床実習では経験から修得に至る段階が重要です。評価することにより学生及び教員ともに望ましい学習環境を形成することができます。Mini‐CEX等の評価方法を用いて適切に評価することが重要です。教育計画が実際どれだけ役に立ったかの段階を示すのにKirkpatrickのヒエラルキーが用いられます。医学生に対して外的な動機づけとして試験があり、内的な動機づけとして医学生自身の必要性の認識があげられます。ポートフォリオへの記述等で振り返りを促したり、学習の自律性を促進するような教育計画が必要であり、多職種間連携の必要性も強調されました。
 活発な質疑応答がなされ修了証書授与後に閉会となりました。(文責 大中原 研一)
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