アドバンスコース1期生 実務研修ステップⅡを実施しました。

平成29年2月27日(月)~4月27日(木)
(実習期間のうち3日間)

  • 薩摩川内市
    びっくすまいる訪問看護ステーション
  • 鹿屋市
    訪問看護ステーションはなみずき
  • 南さつま市
    さつま訪問看護ステーション
  • 奄美市
    ネリヤ訪問看護ステーション
  • 大島郡知名町
    沖永良部社会福祉協議会

アドバンスコース1期生

『アドバンスコース』・・臨床経験3年以上の看護師が現場で働きながら、地域での看取りまで見据えた看護が提供でき、リーダー的役割を担う人材を目指しています。アドバンスコース1期生は履修3年目となり、いよいよ最後の年となりました。

目標(実務研修ステップⅡ、Ⅲ、Ⅳ)
  1. 対象や家族が日常生活の中で何を重視しているか(価値観)や生き方「人生の歩み」について聴き取ることができる。
  2. 対象自身が現在の生活とあるべき理想の生活のギャップについてどのように考えているか聴き取ることができる。
  3. 対象について、身体的側面、心理的側面、スピリチュアルな側面、環境・介護的側面、家族・介護的側面から多角的に情報を整理する(ケアマネジメント)ことができる。
  4. 対象の望む生活と阻害因子についてアセスメントし、リスクを回避するために必要な介入方法について考察することができる。
  5. 対象の自己効力感を高めるために必要な支援について説明できる。
  6. 対象の持っている力を引き出し、生活の質が高められるための支援を考えることができる。
  7. 対象の意思決定を支え「その人らしく」生活できるよう多職種と協働し、チームの一員としての役割を再考することができる。
  8. 在宅療養の総合的なコーディネーターとしての連携や調整、相談能力を養うために何が必要か
    説明できる。
  9. 地域包括ケアシステムにおける看護の役割と課題を考えることができる。
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実習での体験とそこから何を学んだか(考えたか)?

(履修生のレポートより一部抜粋)

私が受け持たせていただいた方は80代の女性で、高度のアルツハイマー型認知症の方であった。
療養者・家族の全体像を捉えたいと思ったが、認知症もあり本人からの明確な反応やこれまでの人生における自分史というものを伺うことは難しい状況であったため、カルテやスタッフを中心に情報収集を行った。

アルツハイマー型認知症の言語性コミュニケーションの特徴として、言語の音韻情報(言葉の音情報)や統計能力(文字の配列)はある程度保たれているが意味情報の処理が困難であり、状況判断も悪く、言語をうまく活用できない。復唱は比較的保たれる。
非言語性のコミュニケーションは保たれ、表情、視線、ジェスチャーといった社会的シグナルの認知能力や握手、あいさつといった社会的慣習遂行能力は比較的残存しやすいとの特徴がある。(eラーニングより)

看護師は対象の検温をする上でも、一般的には本人の話す内容が事実と異なっていたとしても(たとえば、桜をチュウリップと言ったりするなど)本人にとっては真実であり、本人の世界観に身を投じて、本人の言葉を否定せず反復したり、うなずきながら対象の好きな歌や季節の花など、本人の好きなこと関心のあることを取り入れながら話をしていた。対象も歌を歌いながら、検温や処置を受け入れていた。
また不機嫌そうな対象の様子があり、私は機嫌が悪いのかな?という認識でしかなかったが、訪問看護師は「不機嫌そうな様子」からインスリンノーマという疾患、認知症、「普段のその人」を考えた上で適切な対応を実施していた。
そのやりとりの中にはケアリングの概念が潜んでいるのではないかと感じた。

看護師から対象という一方的な関わりではなく、ケアリングは相互に影響しあう性質がある。
患者が必要と感じ取る看護師との関係を通して、患者は自己の存在価値を確認して安らぎを得ることが可能になる1)。
対象は自己の価値観を認めて人として関わってくれているという思いを感じたことにより、効果的な人間関係、コミュニケーションがはかれたのではないか?と考えた。
森は「相手がどのような状況にあってもその人が力を信じ続け、相手を待ち、共に歩み共に成長していくことを目指すケアリングの概念は、看護におけるエンパワーメントを支えている」と述べている。
効果的なケアリングは患者の健康を増進し成長を促す。看護の基本的な姿勢が患者のエンパワーメントを高める2)。

対象のその人らしさを支える為の支援を考えるにあたり、まず対象をどのように捉えるか「対象自身」を知ること対象のもつ強みを生かし、支持する姿勢が大事であると感じた。
対象は以前、不穏行動としてタンスから洋服をひっぱりだしてきては洋服を体にあてていたという話をきいた。
その行動を見ると、不自然な行動としてしか捉えられないが、よくよく伺ってみるとたばこ店を営んでおり、身ぎれいにされていた方だった。
その人の行動1つとっても、「不穏行動」「認知症症状」という視点で受け取ってしまえば、それまでの理解であるが、身支度をきちんと整える人だったという部分に意識をもってくると、行動には意味があるという認識も生まれる。
認知機能が低下しても、やはり本人の行動には意味がある。
その意味を見出すには、その人の人生のストーリーを捉えなければ見えてこない。

そういう意味でも、今回の実務研修Ⅱの要綱の目標にも記載されていたように、対象や家族が日常生活の中で何を重視しているか(価値観)や生き方「人生の歩み」について伺いながら、対象について身体側面、心理側面、スピリチュアルな側面、環境・介護的側面、家族・介護的側面から多角的に情報を整理する(ケアマネジメント)ことが重要であるという学びを得た。

1)がん看護11月+12月号 P21より
2)がん看護11月+12月号 P21より

経験から学ぶ

ss 20170606 01私たちは「経験」からより多くのことを学び成長しています。
しかし、同じ経験をしてもその経験からの学びやその意味は人それぞれであり、個別的な体験を内省的に省察することによって、より多くの学びを得ることができます。つまり、実習などでの経験ひとつひとつを振り返るプロセスがその後の成長に非常に重要なのです。

実習を通して経験した事例や出来事を振り返りその意味を探求し、自己の課題や示唆を得ること、つまり、教員や指導者を交えたカンファレンスなど、経験の再構築を促すための「リフレクション」。この過程を踏むことで、複雑な現象を解く考え方が身についていくと考えます。

履修生のレポートにもあるように、今回の実習では一人の療養者を通して、本人と家族の希望や思い、蓄積された歴史を知り時間軸で捉えることの重要性に気づき、在宅看護の醍醐味と看護の奥深さを教えていただきました。
そして、人生を再構築することへの支援についての学びにつなげることができたのだと思います。

また、訪問看護師さんが看護提供する場面をプロセスレコードで振り返ることで、訪問看護師さんが対象をどのように捉えて、何を感じ考えて看護をしているか自分との思考過程の差異に気づくことで、自分自身が陥りやすい傾向を分析することができました。

ss 20170605 01履修生一人ひとりがのびのびと経験できる教育環境は教員の力だけで整えられるのではなく、実践現場のスタッフや実習指導者さんとの協働によって作り出されていると感じます。
このような学びの場を提供していただき心から深く感謝申し上げます。今後ともご指導・ご鞭撻くださいますようお願い致します。

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