双極性障害
双極性障害の家系を調べる研究は数多いのですが、同疾患の原因遺伝子として明確なものは特定されていません。私たちも双極性障害の発症が多い家系例において、連鎖解析によって原因遺伝子を探索しています。
てんかん
近年、有病率の高さが明らかになり注目されている高齢初発てんかんについて、認知機能における特徴および薬物療法に対する反応を、神経心理検査によって評価しています。
また、良性成人型家族性ミオクローヌスてんかん (benign adult familial myoclonus epilepsy: BAFME)の原因遺伝子が2018年に報告された論文
(Ishiura et al., Nature Genetics, 2018)で明らかにされました。この研究には私たちも共同研究者として参加していました。現在、BAFMEの表現促進現象の解析などを継続しています。
認知症
言葉の意味が理解できなくなる意味性認知症の家族例を世界で初めて発見し、MAPT遺伝子に変異を同定し、報告しました(Ishizuka et al., Dementia and Geriatric Cognitive Disorders, 2011)。意味性認知症を含む前頭側頭葉変性症に対する研究は継続中であり、臨床情報収集研究にも参加しています。
ミトコンドリア病
エネルギーを産生するミトコンドリアが障害されると、脳や筋肉の働きが低下し、多彩な神経症状や筋萎縮などをきたします。また、うつ病や幻覚、妄想といった多彩な精神症状をきたすことがあります。私たちはベッドサイドからの研究で精神疾患にミトコンドリア遺伝子異常を見出しています。
神経有棘赤血球症(neuro-acanthocytosis: NA)
NAはHuntington病とよく似た臨床症状を呈する神経変性疾患ですが、赤血球が金平糖のように変形する特徴があり、診断にも有用です(図)。
NAのうち有棘赤血球舞踏病 (chorea-acanthocytosis: ChAc)は私たちのチームが原因遺伝子を特定しました (Ueno et al., Nature Genetics, 2001)。当研究室ではNAの遺伝子診断が可能なので、各地の医療機関と協力して症例を集積し、疾患の臨床的特徴を報告しました(Nishida et al., Neurology Genetics, 2019)。
また、ChAcと臨床的特徴がよく似たMcLeod症候群において、ChAcの原因遺伝子VPS13Aの産物であるchorein蛋白質の発現が低下していることを発見し、報告しました (Urata et al., Neurology Genetics, 2019)。
筋強直性ジストロフィー
過眠などを主訴に入院した患者さん4名の基礎疾患として筋強直性ジストロフィーを診断し報告しました (Urata et al., Frontier in Neurology, 2020)。