プログラム構築の背景
現在、地域の病院や診療所の医師が地域医療を支えています。今後の日本は急速な少子高齢化を迎え、働く世代の人口も減少してきます。高齢者の救急搬送も増加しており、幅広く健康にかかわる問題について適切な初期対応等を行う医師が必要なっています。総合的な診療能力を有する医師の必要性が益々増しており、厚生労働省もその育成に力を入れています。また、今後は在宅医療が標準的な医療提供モデルに変化するとされています。在宅医療をしっかりと管理でき、全人的医療を実施できる基本診療領域の専門医として総合診療専門医が必要とされているのです。加えて国民の健康・福祉に貢献する為に、まだ始まって間もない総合診療専門医の質の向上を図る必要もあります。
鹿児島大学病院総合診療専門研修プログラム「郷中 (ごじゅう)」(以下、郷中プログラム)は、病院・診療所などで活躍する高い診断・治療能力を持つ総合診療専門医を養成するため、2018年に鹿児島大学心臓血管・高血圧内科学分野の 大石 充教授が最初に創設されました。その後2024年度より、鹿児島大学医歯学総合研究科地域医療学分野が引き継ぎ運営しております。我々は、総合診療専門医制度を発展させるために、鹿児島大学病院の診療科や学外の連携施設と協力して、基幹施設である鹿児島大学病院が責任を持ってリサーチマインドをもった地域のニーズに対応する総合診療専門医のリーダーを育成します。総合診療・地域医療の独特な研究手法を習得し学会や論文発表して情報発信することにより、地域の医療状況を把握し、地域の医療の問題を明らかにし、それを解決することがスムーズに行えるようになります。希望の方には、大学院博士課程(すでに1名輩出、4名在籍中)に入学いただき、社会人大学院生として学位を並行して習得もできるようにサポートします。地域枠医師や自治医科大学卒業医師は、鹿児島大学病院での研修は必要としない条件でのローテーションを組むことが可能です。義務を妨げることなく研修が可能です。
「郷中(ごじゅう)」という命名ですが、江戸時代、薩摩藩では年長者が年少の者へ教えるという郷中(ごじゅう)教育が行われており、その郷中教育を受けた西郷隆盛や大久保利通らが明治維新の原動力となりました。郷中教育は、いわゆる屋根瓦方式の教育システムであり、鹿児島大学病院が専門研修基幹施設となり地域の専門研修連携施設で構成されるこの総合診療専門研修プログラムは、「地域で総合診療医のリーダーを育成する」というコンセプトから命名したものです。
鹿児島大学病院内で唯一、総合診療・家庭医療・在宅医療の専門医を持つ医師が指導に当たりますが、専攻医の皆さんも主体的に学ぶ姿勢をもつことが大切です。総合診療専門医は、医師としての倫理観や説明責任はもちろんのこと、ワークライフバランスを保ちつつも自己研鑽を欠かさず、日本の医療や総合診療領域の発展に資するべく教育や学術活動に積極的に携わることが求められます。郷中プログラムでの研修修了後、皆さんは標準的な医療を安全に提供し、将来の医療の発展に貢献できる総合診療専門医となります。
本プログラムでは、郷中プログラムは専門研修基幹施設(以下、基幹施設)と専門研修連携施設(以下、連携施設)の施設群で行われ、それぞれの特徴を生かした症例や技能を広く、専門的に学ぶことが出来ます。総合診療専門研修T(外来診療・在宅医療中心)、総合診療専門研修U(病棟診療、救急診療中心)、内科、小児科、救急科の5つの必須診療科と選択診療科で3年間の研修を行います。このことにより、以下の総合診療専門医に欠かせない7つの資質・能力を効果的に修得することが可能になります。
1.包括的統合アプローチ
2.一般的な健康問題に対する診療能力
3.患者中心の医療・ケア
4.連携重視のマネジメント
5.地域包括ケアを含む地域志向アプローチ
6.公益に資する職業規範
7.多様な診療の場に対応する能力
目次
- 総合診療専門研修はどのようにおこなわれるのか
- 専攻医の到達目標(修得すべき知識・技能・態度など)
- 各種カンファレンスなどによる知識・技能の習得
- 学問的姿勢について
- 医師に必要な資質・能力、倫理性、社会性などについて
- 施設群による研修プログラムおよび地域医療についての考え方
- 専門研修プログラムの施設群について
- 専攻医の受け入れ数について
- 施設群における専門研修コースについて
- 専門研修の評価について
- 専攻医の就業環境について
- 専門研修プログラムの改善方法とサイトビジット(訪問調査)について
- 修了判定について
- 専攻医が専門研修プログラムの修了に向けて行うべきこと
- Subspecialty領域との連続性について
- 総合診療科研修の休止・中断、プログラム移動、プログラム外研修の条件
- 専門研修プログラム管理委員会
- 総合診療専門研修特任指導医
- 専門研修実績記録システム、マニュアル等について
- 専攻医の採用
その他
1. 総合診療専門研修はどのようにおこなわれるのか
1) 研修の流れ
総合診療専門研修は、卒後3年目からの専門研修(後期研修)3年間で育成されます。
■1年次修了時には、患者の情報を過不足なく明確に指導医や関連職種に報告し、健康問題を迅速かつ正確に同定することを目標とします。主たる研修の場は内科研修となります。
■2年次修了時には、診断や治療プロセスも標準的で患者を取り巻く背景も安定しているような比較的単純な健康問題に対して的確なマネジメントを提供することを目標とします。主たる研修の場は総合診療研修Uとなります。
■3年次修了時には、多疾患併存(multimorbidity)で診断や治療プロセスに困難さがあったり、患者を取り巻く背景も影響したりしているような複雑な健康問題に対しても適切にマネジメントでき、かつそれらを指導できることを目標とします。主たる研修の場は総合診療研修Tとなります。
■また、日常遭遇する疾病と傷害等に対する適切な初期対応や、必要に応じた継続的な診療を提供するだけでなく、地域のニーズを踏まえた疾病の予防、介護、看取りの場面まで、保健・医療・介護・福祉活動に取り組むことが求められますので、18ヵ月以上の総合診療専門研修T及びUにおいては、後に示す地域ケアの学びを重点的に展開することとなります。
■3年間の研修の修了判定には以下の3つの要件が審査されます。
・定められたローテート研修を全て履修していること
・専攻医自身による自己評価と省察の記録、作成した経験省察研修録(ポートフォリオ:経験と省察のプロセスをファイリングした研修記録)を通じて、到達目標がカリキュラムに定められた基準に到達していること
・研修手帳に記録された経験目標が全てカリキュラムに定められた基準に到達していること
様々な研修の場において、定められた到達目標と経験目標を常に意識しながら、同じ症候や疾患、更には検査・治療手技を経験する中で、徐々にそのレベルを高めていき、一般的なケースで、自ら判断して対応あるいは実施できることを目指していくこととなります。
2) 専門研修における学び方
専攻医の研修は臨床現場での学習、臨床現場を離れた学習、自己学習の大きく3つに分かれます。それぞれの学び方に習熟し、生涯に渡って学習していく基盤とすることが求められます
(1) 臨床現場での学習
職務を通じた学習を基盤とし、診療経験から生じる疑問に対して、EBMの方法論に則り文献等を通じた知識の収集と批判的吟味を行うプロセスと、総合診療の様々な理論やモデルを踏まえながら経験そのものを省察して能力向上を図るプロセスを両輪とします。その際、学習履歴の記録と自己省察の記録を、経験省察研修録(ポートフォリオ:経験と省察のプロセスをファイリングした研修記録)作成という形で全研修課程において実施します。場に応じた教育方略は下記の通りです。
ア) 外来医療
経験目標を参考に幅広い経験症例を確保します。外来診察中に指導医への症例提示と教育的フィードバックを受ける外来教育法(プリセプティング)などを実施します。また、指導医による定期的な診療録レビューによる評価、更には、症例カンファレンスを通じた臨床推論や総合診療の専門的アプローチに関する議論などを通じて、総合診療への理解を深めます。また、技能領域については、習熟度に応じた指導を提供します。
イ) 在宅医療
経験目標を参考に幅広い経験症例を確保します。初学者は経験ある指導医の診療に同行して診療の枠組みを理解し、次第に独立して訪問診療を提供し経験を積みます。外来医療と同じく、症例カンファレンスを通じて学びを深め、多職種と連携して提供される在宅医療に特徴的な多職種カンファレンスについても積極的に参加し、連携の方法を学びます。
ウ) 病棟医療
経験目標を参考に幅広い経験症例を確保します。入院担当患者の症例提示と教育的フィードバックを受ける回診及び多職種を含む病棟カンファレンスを通じて、診断・検査・治療・退院支援・地域連携のプロセスに関する理解を深めます。指導医による診療録レビューや手技の学習法は外来と同様です。
エ) 救急医療
経験目標を参考に、救急外来や救命救急室等で幅広い経験症例を確保します。外来診療に準じた教育方略となりますが、特に救急においては迅速な判断が求められるため救急特有の意思決定プロセスを重視します。また、救急処置全般については技能領域の教育方略(シミュレーションや直接観察指導等)が必要となり、特に、指導医と共に処置にあたる中から経験を積みます。
オ) 地域ケア
地域医師会の活動を通じて、地域の実地医家と交流することで、地域包括ケアへ参画し、自らの診療を支えるネットワークの形成を図り、日々の診療の基盤とします。さらには産業保健活動、学校保健活動等を学び、それらの活動に参画します。参画した経験を指導医と共に振り返り、その意義や改善点を考え、より良い地域ケアの実装につなげます。
(2) 臨床現場を離れた学習
・総合診療の様々な理論やモデル、組織運営マネジメント、総合診療領域の研究と教育については、関連する学会の学術集会やセミナー、研修会へ参加し、研修カリキュラムの基本的事項を履修します。
・臨床現場で経験の少ない手技などについては、シミュレーション機器を活用して学ぶこともできます。
・医療倫理、医療安全、感染対策、保健活動、地域医療活動等については、学内の各種勉強会や日本医師会の生涯教育制度や関連する学会の学術集会等を通じて学習を進めます。地域医師会における生涯教育の講演会は、診療に関わる情報を学ぶ場としてのほか、診療上の意見交換等を通じて人格を陶冶する場として活用します。
(3) 自己学習
研修カリキュラムにおける経験目標は原則的に自プログラムでの経験を必要としますが、やむを得ず経験を十分に得られない項目については、総合診療領域の各種テキストやWeb教材、更には日本医師会生涯教育制度及び関連する学会におけるe-learning教材、医療専門雑誌、各学会が作成するガイドライン等を適宜活用しながら、幅広く学習します。
3) 専門研修における研究
専門研修プログラムでは、最先端の医学・医療を理解すること及び科学的思考法を体得することが、医師としての幅を広げるため重要です。また、専攻医は原則として学術活動に携わる必要があり、学術大会等での発表(筆頭に限る)及び論文発表(共同著者を含む)を行うこととします。
4) 研修の週間計画および年間計画
鹿児島大学地域枠卒業医師、自治医大卒業医師については、特に基幹施設での研修は現時点では、基幹施設(鹿児島大学病院)は必須ではありません。研修期間の3年間を全て義務勤務先で行えるように、鹿児島大学病院地域医療支援センターと協議しつつ、できるだけ希望に添ったプログラムを構築していきます(オーダーメイド)。
2. 専攻医の到達目標(修得すべき知識・技能・態度など)
1) 専門知識
総合診療の専門知識は以下の6領域で構成されます。
- 地域住民が抱える健康問題には単に生物医学的問題のみではなく、患者自身の健康観や病いの経験が絡み合い、患者を取り巻く家族、地域社会、文化などの環境(コンテクスト)が関与していることを全人的に理解し、患者、家族が豊かな人生を送れるように、コミュニケーションを重視した診療・ケアを提供する。
- 総合診療の現場では、疾患のごく初期の未分化で多様な訴えに対する適切な臨床推論に基づく診断・治療から、複数の慢性疾患の管理や複雑な健康問題に対する対処、さらには健康増進や予防医療まで、多様な健康問題に対する包括的なアプローチが求められる。そうした包括的なアプローチは断片的に提供されるのではなく、地域に対する医療機関としての継続性、更には診療の継続性に基づく医師・患者の信頼関係を通じて、一貫性をもった統合的な形で提供される。
- 多様な健康問題に的確に対応するためには、地域の多職種との良好な連携体制の中での適切なリーダーシップの発揮に加えて、医療機関同士あるいは医療・介護サービス間での円滑な切れ目ない連携も欠かせない。さらに、所属する医療機関内の良好な連携のとれた運営体制は質の高い診療の基盤となり、そのマネジメントは不断に行う必要がある。
- 地域包括ケア推進の担い手として積極的な役割を果たしつつ、医療機関を受診していない方も含む全住民を対象とした保健・医療・介護・福祉事業への積極的な参画と同時に、地域ニーズに応じた優先度の高い健康関連問題の積極的な把握と体系的なアプローチを通じて、地域全体の健康向上に寄与する。
- 総合診療専門医は日本の総合診療の現場が外来・救急・病棟・在宅と多様であることを踏まえて、その能力を場に応じて柔軟に適用することが求められ、その際には各現場に応じた多様な対応能力が求められる。
- 繰り返し必要となる知識を身につけ、臨床疫学的知見を基盤としながらも、常に重大ないし緊急な病態に注意した推論を実践する。
2) 専門技能(診察、検査、診断、処置、手術など)
総合診療の専門知識は以下の6領域で構成されます。
- 外来・救急・病棟・在宅という多様な総合診療の現場で遭遇する一般的な症候及び疾患への評価及び治療に必要な身体診察及び検査・治療手技
- 患者との円滑な対話と医師・患者の信頼関係の構築を土台として、患者中心の医療面接を行い、複雑な人間関係や環境の問題に対応するためのコミュニケーション技法
- 診療情報の継続性を保ち、自己省察や学術的利用に耐えうるように、過不足なく適切な診療記録を記載し、他の医療・介護・福祉関連施設に紹介するときには、患者の診療情報を適切に診療情報提供書へ記載して速やかに情報提供することができる能力
- 生涯学習のために、情報技術(information technology; IT)を適切に用いたり、地域ニーズに応じた技能の修練を行ったり、人的ネットワークを構築したりすることができる能力
- 診療所・中小病院において基本的な医療機器や人材などの管理ができ、スタッフとの協働において適切なリーダーシップの提供を通じてチームの力を最大限に発揮させる能力
3) 経験すべき疾患・病態
以下の経験目標については一律に症例数で規定しておらず、各項目に応じた到達段階を満たすことが求められます。(研修手帳参照)
なお、この項目以降での経験の要求水準としては、「一般的なケースで、自ら判断して対応あるいは実施できたこと」とします。
- 以下に示す一般的な症候に対し、臨床推論に基づく鑑別診断および、他の専門医へのコンサルテーションを含む初期対応を適切に実施し、問題解決に結びつける経験をする。(全て必須)
| ショック |
急性中毒 |
意識障害 |
疲労・全身倦怠感 |
心肺停止 |
| 呼吸困難 |
身体機能の低下 |
不眠 |
食欲不振 |
体重減少・るいそう |
| 体重増加・肥満 |
浮腫 |
リンパ節腫脹 |
発疹 |
黄疸 |
| 発熱 |
認知脳の障害 |
頭痛 |
めまい |
失神 |
| 言語障害 |
けいれん発作 |
視力障害・視野狭窄 |
目の充血 |
聴力障害・耳痛 |
| 鼻漏・鼻閉 |
鼻出血 |
嗄声 |
胸痛 |
動悸 |
| 咳・痰 |
咽頭痛 |
誤嚥 |
誤飲 |
嚥下困難 |
| 吐血・下血 |
嘔気・嘔吐 |
胸やけ |
腹痛 |
便通異常 |
| 肛門・会陰部痛 |
熱傷 |
外傷 |
褥瘡 |
背部痛 |
| 腰痛 |
関節痛 |
歩行障害 |
四肢のしびれ |
肉眼的血尿 |
| 排尿障害(尿失禁・排尿困難) |
乏尿・尿閉 |
多尿 |
不安 |
| 気分の障害(うつ) |
興奮 |
女性特有の訴え・症状 |
| 妊婦の訴え・症状 |
成長・発達の障害 |
- 以下に示す一般的な疾患・病態について、必要に応じて他の専門医・医療職と連携をとりながら、適切なマネジメントを経験する。(必須項目のカテゴリーのみ掲載)
| 貧血 |
脳・脊髄血管障 |
脳・脊髄外傷 |
変性疾患 |
脳炎・脊髄炎 |
| 一次性頭痛 |
湿疹・皮膚炎群 |
蕁麻疹 |
薬疹 |
皮膚感染症 |
| 骨折 |
関節・靱帯の損傷及び障害 |
骨粗鬆症 |
脊柱障害 |
| 心不全 |
狭心症・心筋梗塞 |
不整脈 |
動脈疾患 |
|
| 静脈・リンパ管疾患 |
高血圧症 |
呼吸不全 |
呼吸器感染症 |
| 閉塞性・拘束性肺疾患 |
異常呼吸 |
胸膜・縦隔・横隔膜疾患 |
| 食道・胃・十二指腸疾患 |
小腸・大腸疾患 |
胆嚢・胆管疾患 |
肝疾患 |
| 膵臓疾患 |
腹壁・腹膜疾患 |
腎不全 |
全身疾患による腎障害 |
| 泌尿器科的腎・尿路疾患 |
妊婦・授乳婦・褥婦のケア |
|
| 女性生殖器およびその関連疾患 |
男性生殖器疾患 |
甲状腺疾患 |
糖代謝異常 |
| 急性・慢性副鼻腔炎 |
アレルギー性鼻炎 |
認知症 |
| 依存症(アルコール依存、ニコチン依存) |
うつ病 |
不安障害 |
| 身体症状症(身体表現性障害) |
適応障害 |
|
不眠症 |
| ウイルス感染症 |
細菌感染症 |
膠原病とその合併症 |
中毒 |
| アナフィラキシー |
熱傷 |
小児ウイルス感染 |
小児細菌感染症 |
小児喘息 |
| 小児虐待の評価 |
高齢者総合機能評価 |
老年症候群 |
維持治療機の悪性腫瘍 |
| 緩和ケア |
|
|
|
|
※ 詳細は資料「研修目標及び研修の場」を参照
4) 経験すべき診察・検査等
以下に示す、総合診療の現場で遭遇する一般的な症候及び疾患への評価及び治療に必要な身体診察及び検査を経験します。
なお、下記の経験目標については一律に症例数や経験数で規定しておらず、各項目に応じた到達段階を満たすことが求められます。(研修手帳参照)
(ア)身体診察
- 小児の一般的身体診察及び乳幼児の発達スクリーニング診察
- 成人患者への身体診察(直腸、前立腺、陰茎、精巣、鼠径、乳房、筋骨格系、神経系、皮膚を含む)
- 高齢患者への高齢者機能評価を目的とした身体診察(歩行機能、転倒・骨折リスク評価など)や認知機能検査(HDS-R、MMSEなど)
- 耳鏡・鼻鏡・眼底鏡による診察
- 死亡診断を実施し、死亡診断書を作成
(イ)検査
- 各種採血法(静脈血・動脈血)、簡易機器による血液検査・簡易血糖測定・簡易凝固能検査
- 採尿法(導尿法を含む)
- 注射法(皮内・皮下・筋肉・静脈内・点滴・成人及び小児の静脈確保法、中心静脈確保法)
- 穿刺法(腰椎・膝関節・肩関節・胸腔・腹腔・骨髄を含む)
- 単純X線検査(胸部・腹部・KUB・骨格系を中心に)
- 心電図検査・ホルター心電図検査・負荷心電図検査
- 超音波検査(腹部・表在・心臓・下肢静脈)
- 生体標本(喀痰、尿、皮膚等)に対する顕微鏡的診断
- 呼吸機能検査
- オージオメトリーによる聴力評価及び視力検査表による視力評価
- 頭・頚・胸部単純CT、腹部単純・造影CT
※ 詳細は資料「研修目標及び研修の場」を参照
5) 経験すべき手術・処置等
以下に示す、総合診療の現場で遭遇する一般的な症候及び疾患への評価及び治療に必要な治療手技を経験します。
なお、下記については一律に経験数で規定しておらず、各項目に応じた到達段階を満たすことが求められます。(研修手帳参照)
(ア)救急処置
- 新生児、幼児、小児の心肺蘇生法(PALS)
- 成人心肺蘇生法(ICLSまたはACLS)または内科救急・ICLS講習会(JMECC)
- 病院前外傷救護法(PTLS)
(イ)薬物治療
- 使用頻度の多い薬剤の副作用・相互作用・形状・薬価・保険適応を理解して処方することができる。
- 適切な処方箋を記載し発行できる。
- 処方、調剤方法の工夫ができる。
- 調剤薬局との連携ができる。
- 麻薬管理ができる。
(ウ)治療手技・小手術
| 簡単な切開・異物摘出・ドレナージ |
止血・縫合法及び閉鎖療法 |
| 簡単な脱臼の整復、包帯・副木・ギプス法 |
局所麻酔(手指のブロック注射を含む) |
| トリガーポイント注射 |
関節注射(膝関節・肩関節等) |
| 静脈ルート確保および輸液管理(IVHを含む) |
経鼻胃管及びイレウス管の挿入と管理 |
| 胃瘻カテーテルの交換と管理 |
| 導尿及び尿道留置カテーテル・膀胱瘻カテーテルの留置及び交換 |
| 褥瘡に対する被覆治療及びデブリードマン |
在宅酸素療法の導入と管理 |
| 人工呼吸器の導入と管理 |
| 輸血法(血液型・交差適合試験の判定や在宅輸血のガイドラインを含む) |
| 各種ブロック注射(仙骨硬膜外ブロック・正中神経ブロック等) |
| 小手術(局所麻酔下での簡単な切開・摘出・止血・縫合法滅菌・消毒法) |
| 包帯・テーピング・副木・ギプス等による固定法 |
穿刺法(胸腔穿刺・腹腔穿刺・骨髄穿刺等) |
| 鼻出血の一時的止血 |
耳垢除去、外耳道異物除去 |
| 咽喉頭異物の除去(間接喉頭鏡、上部消化管内視鏡などを使用) |
| 睫毛抜去 |
|
※ 詳細は資料「研修目標及び研修の場」を参照
3. 各種カンファレンスなどによる知識・技能の習得
職務を通じた学習において、総合診療の様々な理論やモデルを踏まえながら経験そのものを省察して能力向上を図るプロセスとして、各種カンファレンスを活用した学習は非常に重要です。主として、外来・在宅・病棟の3つの場面でカンファレンスを活発に開催します。
(ア)外来医療
幅広い症例を経験し、症例カンファレンスを通じた臨床推論や総合診療の専門的アプローチに関する議論などを通じて、総合診療への理解を深めていきます。
(イ)在宅医療
症例カンファレンスを通じて学びを深め、多職種と連携して提供される在宅医療に特徴的な多職種カンファレンスについても積極的に参加し、連携の方法を学びます。
(ウ)病棟医療
入院担当患者の症例提示と教育的フィードバックを受ける回診及び多職種を含む病棟カンファレンスを通じて診断・検査・治療・退院支援・地域連携のプロセスに関する理解を深めます。
4. 学問的姿勢について
専攻医には、以下の2つの学問的姿勢が求められます。
■ 常に標準以上の診療能力を維持し、さらに向上させるために、ワークライフバランスを保ちつつも、生涯にわたり自己研鑽を積む習慣を身につける。
■ 総合診療の発展に貢献するために、教育者あるいは研究者として啓発活動や学術活動を継続する習慣を身につける。
この実現のために、具体的には下記の研修目標の達成を目指します。
(1)教育
- 学生・研修医に対して1対1の教育をおこなうことができる。
- 学生・研修医向けにテーマ別の教育目的のセッションを企画・実施・評価・改善することができる。
- 総合診療を提供するうえで連携する多職種への教育を提供することができる。
(2)研究
- 日々の臨床の中から研究課題を見つけ出すという、総合診療や地域医療における研究の意義を理解し、症例報告や臨床研究を様々な形で実践できる。
- 量的研究(医療疫学・臨床疫学)、質的研究双方の方法と特長について理解し、批判的に吟味でき、各種研究成果を自らの診療に活かすことができる。
この項目の詳細は、総合診療専門医専門研修カリキュラムに記載されています。
また、専攻医は原則として学術活動に携わる必要があり、学術大会等での発表(筆頭に限る)及び論文発表(共同著者を含む)を行うことが求められます。
臨床研究の実施にあたっては、必要に応じ、鹿児島大学大学院医歯学総合研究科地域医療学分野を中心に、 サポートをうけることができます。
5. 医師に必要な資質・能力、倫理性、社会性などについて
総合診療専攻医は以下4項目の実践を目指して研修をおこないます。
- 医師としての倫理観や説明責任はもちろんのこと、総合診療医としての専門性を自覚しながら日々の診療にあたることができる。
- 安全管理(医療安全/患者安全、感染症、廃棄物、放射線など)を行うことができる。
- 地域の現状から見出される優先度の高い健康関連問題を把握し、その解決に対して各種会議への参加や住民組織との協働、あるいは地域ニーズに応じた自らの診療の継続や変容を通じて貢献できる。
- へき地・離島、被災地、医療資源に乏しい地域、あるいは医療アクセスが困難な地域でも、可能な限りの医療・ケアを率先して提供できる。
6. 施設群による研修プログラムおよび地域医療についての考え方
本研修プログラムでは、鹿児島大学地域医療学分野を基幹施設とし、地域の連携施設とともに施設群を構成してします。専攻医はこれらの施設群をローテートすることにより、多彩で偏りのない充実した研修を行うことが可能となります。
- 総合診療専門研修は診療所・中小病院における総合診療専門研修Tと、病院総合診療部門における総合診療専門研修Uで構成されます。本プログラムでは、総合診療研修T(総診T)も総合診療研修U(総診U)も、さまざまな地域・二次医療圏に連携施設があり、専攻医の希望やニーズに応じて研修先を決定します。総診Tと総診Uは、それぞれ6ヶ月以上、合わせて18ヶ月以上の研修を必要とします 。
- 必須領域別研修として、内科6ヵ月、小児科3ヵ月、救急科3ヵ月の研修を行います。(※表1:連携施設一覧を参照)
施設群における研修の順序、期間等については、原則的に
図2に示すような形で実施しますが、総合診療専攻医の総数、個々の総合診療科専攻医の希望と研修進捗状況、各病院の状況、地域の医療体制を勘案して、本研修プログラム管理委員会が決定します
。
7. 専門研修プログラムの施設群について
本研修プログラムは基幹施設である大学病院を中心に、25の多様な連携施設施設群で構成されます。
連携施設は、鹿児島県内の全ての二次医療圏(鹿児島、出水、川薩、南薩、姶良・伊佐、曽於。肝属、熊毛、奄美)に位置しています。
【専門研修基幹施設】
鹿児島大学地域医療学分野が専門研修基幹施設となります。鹿児島大学病院は鹿児島県の鹿児島医療圏の都市部にあります。
【専門研修連携施設】
本研修プログラムの施設群を構成する専門研修連携施設は、以下の通りです。全て、診療実績基準と所定の施設基準を満たしています。
表1:連携施設一覧
| 医療機関 |
総診T |
総診U |
内科 |
小児 |
救急 |
選択 |
概要 |
| 垂水市立医療センター垂水中央病院 |
|
○ |
○ |
|
|
|
大隅半島の中核病院。高齢者比率が高く、高齢者総合診療に力を入れている。また、多くの救急患者も受け入れている。 |
| 鹿児島県立大島病院 |
|
○ |
○ |
○ |
○ |
|
奄美地方の中核病院。近年、救命救急センターが開設され、ドクターヘリなどを駆使した離島救急の中心病院でもある。 |
| 霧島市立医師会医療センター |
|
○ |
○ |
○ |
○ |
外科、整形 |
姶良・伊佐地域の中核病院であり、急性期疾患から地域のニーズに応じた包括的なケアまで対応している。 |
| 国立病院機構指宿医療センター |
|
○ |
○ |
○ |
|
|
薩摩半島の中核病院。救急患者も多く受ける。循環器診療を含めた拠点病院として地域完結型医療を実践している。 |
| 鹿児島赤十字病院 |
|
○ |
○ |
|
|
|
谷山地区と薩摩半島地区を結ぶ医療圏。膠原病診療では鹿児島トップの患者数を誇り、整形外科の手術数も多く、救急患者も多い。 |
| 今村総合病院 |
|
○ |
○ |
|
|
|
救命救急室(ER)に非常に力を入れている。総合診療体制としては鹿児島屈指の存在であり、症例数及び指導医の数が非常に多い。 |
| 出水郡医師会広域医療センター |
|
|
○ |
|
|
外科、整形、泌尿器 |
阿久根地域の中核病院、急性期疾患の対応だけでなく、回復期リハビリ病棟、地域包括ケア病棟、緩和ケア病棟など幅広く対応している。 |
| 川内市医師会立市民病院 |
|
|
○ |
|
|
外科、整形 |
地域医療支援病院として、多数の専門家を有しつつ、地域のかかりつけ医と連携しながら地域の健康を守る役割を担う。 |
| 肝付町立病院 |
○ |
|
|
|
|
|
外科、内科、泌尿器科、眼科、整形外科を標榜し、無医地区の岸良診療所にも週二回出張診療を行っている。地域の総合診療を担う。 |
| 卓翔会記念病院 |
○ |
|
|
|
|
|
内科・外科を中心とした地域の中核病院。病院の他に特別養護老人ホーム等、高齢者医療に関する全ての医療・介護・福祉施設を有す。 |
| 前原総合医療病院 |
○ |
|
|
|
|
|
内科・整形外科・眼科・耳鼻科の手術も行う。病院の他に高齢者に関する医療・介護・福祉施設を備えたメディカルタウンを形成。 |
| サザン・リージョン病院 |
○ |
|
|
|
|
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外科・内科・循環器等の各専門医が常勤し、がん診療や救急診療に力を入れる。地域の保健・医療・福祉に迅速に対応できる。 |
| 南さつま市立坊津病院 |
○ |
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南さつま市坊津町の町立病院。内科や整形外科を中心に入院と外来診療を行い、地域の総合診療を担う。 |
| 薩摩川内市下甑手打診療所 |
○ |
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内科、外科、小児科を幅広く診療。薩摩川内市下甑瀬々野浦出張診療所と薩摩川内市下甑片野浦出張診療所にも出張診療している。 |
| 薩摩川内市里診療所 |
○ |
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上甑島にある診療所。内科に加え、歯科の診療も行っている。地域の特別養護老人ホームの嘱託医も務め、地域の総合診療を担う。 |
| 薩摩川内市上甑診療所 |
○ |
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内科に加え、眼科や歯科も診療。入院診療も行い、上甑平良出張診療所や上甑浦内出張診療所にも出張診療を行う。 |
| 野間池診療所 |
○ |
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笠沙町にある診療所。内科と外科を幅広く診療。笠沙診療所においても半日ずつ週2回の診療を行い、地域の総合診療を担っている。 |
| 南大隅町立郡へき地出張診療所 |
○ |
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南大隅町立の佐多地区にある診療所。内科・小児科・整形外科と幅広く診療。大泊診療所においても週2 日の診療を行っている。 |
| 永田へき地出張診療所 |
○ |
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屋久島にある診療所。内科を中心に外来診療や在宅診療を行う。口永良部へき地出張診療所においても月2 日の診療を行っている。 |
| 瀬戸内町へき地診療所 |
○ |
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奄美大島にある有床診療所。内科・小児科・外科と幅広く診療。巡回診療や地域の特別養護老人施設の嘱託医も務めている。 |
| 奄美市住用国民健康保険診療所 |
○ |
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奄美大島にある診療所。内科・小児科・外科の幅広い外来診療と訪問診療に加え、歯科診療も行う。地域密着した診療を行っている。 |
| 医療法人南溟会 宮上病院 |
○ |
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徳之島において介護福祉施設も併設しつつ、プライマリ・ケアから専門医療まで、地域の健康を支える役割を担っている。 |
| 恒心会 おぐら病院 |
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外科、整形、リハ |
整形外科とリハビリテーションを中心に、県のへき地医療拠点病院として急性期から回復期、介護や在宅期まで地域を支えている。 |
| 鹿児島市立病院 |
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○ |
○ |
○ |
産婦人、泌尿器、皮膚、整形、眼、耳鼻咽喉 |
鹿児島市の中核病院。救急医療・周産期母子医療・がん診療を中心に、鹿児島の急性期医療を担っている総合病院である。 |
| 鹿児島医療センター |
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○ |
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婦人、泌尿器、皮膚、耳鼻咽喉 |
循環器・脳卒中・がん医療を中心に、鹿児島県屈指の高度医療を展開。救急医療にも力を入れ、鹿児島県全域から患者を受け入れる。 |
| 鹿児島大学病院 |
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○ |
○ |
○ |
リハ、眼、耳鼻咽喉、整形、精神、泌尿器、皮膚 |
鹿児島県唯一、全診療科を有する総合病院。県の高度医療を担う。総合臨床研修センターのシミュレーターも充実、教育体制も整っている。 |
※医師修学資金貸与制度(地域枠)の医師や、自治医科大学出身の医師については、規定の勤務医療機関を考慮して、研修先を決定します。
※各医療機関の指導医数などは、年度によって変更がありうるため、適宜確認ください。
【専門研修施設群】
基幹施設と連携施設により専門研修施設群を構成します。体制は図1のような形になります。
図1:研修体制
【専門研修施設群の地理的範囲】
本研修プログラムの専門研修施設群は鹿児島県にあります。施設群の中には、地域中核病院と診療所が入っています。
8. 専攻医の受け入れ数について
各専門研修施設における年度毎の専攻医数の上限は、当該年度の総合診療専門研修T及びUを提供する施設で指導にあたる総合診療専門研修特任指導医×2です。3学年の総数は総合診療専門研修特任指導医×6です。本研修プログラムにおける専攻医受け入れ可能人数は、基幹施設および連携施設の受け入れ可能人数を合算したものです。
また、総合診療専門研修において、同時期に受け入れできる専攻医の数は、指導を担当する総合診療専門研修特任指導医1名に対して3名までとします。受入専攻医数は施設群が専攻医の必要経験数を十分に提供でき、質の高い研修を保証するためのものです。
内科研修については、1人の内科指導医が同時に受け持つことができる専攻医は、原則、内科領域と総合診療を合わせて3名までとします。ただし、地域の事情やプログラム構築上の制約によって、これを超える人数を指導する必要がある場合は、専攻医の受け持ちを1名分まで追加を許容し、4名までは認められます。
小児科領域と救急科領域を含むその他の診療科のローテート研修においては、各科の研修を行う総合診療専攻医については各科の指導医の指導可能専攻医数(同時に最大3名まで)には含めません。しかし、総合診療専攻医が各科専攻医と同時に各科のローテート研修を受ける場合には、臨床経験と指導の質を確保するために、実態として適切に指導できる人数までに(合計の人数が過剰にならないよう)調整することが必要です。これについては、総合診療専門研修プログラムのプログラム統括責任者と各科の指導医の間で事前に調整を行います。
現在、本プログラム内には総合診療専門研修特任指導医が3名在籍しており、この基準に基づくと毎年最大で6名程度受け入れ可能になりますが、当プログラムでは、毎年2名定員としています。
9. 施設群における専門研修コースについて
図2に本研修プログラムの施設群による研修コース例を示します。
1年目の前半は、連携施設の垂水中央病院で総合診療Uの研修を行い、総合診療の実践の場として外来診療や病棟医療に従事します。後半は、基幹施設である鹿児島大学病院で内科研修を行い、内科の基本的スキルを修得します。
2年目は、1年を通して県立大島病院に勤務し、前半を小児科と救急科で研修を行い、後半は総合診療Uとして、1年目とは違った形で総合診療の実践に臨みます。
3年目は、1年間を通じて総合診療Tの研修を行い、地域に視点を広げた研修を行います。
図2:ローテーション例
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4月 |
5月 |
6月 |
7月 |
8月 |
9月 |
10月 |
11月 |
12月 |
1月 |
2月 |
3月 |
| 1年目 |
垂水中央病院 |
鹿児島大学病院 |
| 総合診療U |
内科 |
| 2年目 |
県立大島病院 |
| 救急科 |
小児科 |
総合診療U |
| 3年目 |
卓翔会記念病院 |
| 総合診療T |
【補足】
本モデルで示した研修ローテーションのパターンに加えて、鹿児島大学地域枠卒業医師並びに自治医科大学卒業医師は、必ずしも基幹病院での研修が必要ではありません。鹿児島大学病院で研修せず、専攻医研修を全て、知事指定の医療機関で構成する研修ローテーション例を図2(別)として下記に示した。
図2(別):ローテーション例
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4月 |
5月 |
6月 |
7月 |
8月 |
9月 |
10月 |
11月 |
12月 |
1月 |
2月 |
3月 |
| 1年目 |
垂水中央病院 |
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| 総合診療U |
内科 |
| 2年目 |
県立大島病院 |
| 総合診療T |
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小児科 |
救急科 |
| 3年目 |
あ |
| あ |
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4月 |
5月 |
6月 |
7月 |
8月 |
9月 |
10月 |
11月 |
12月 |
1月 |
2月 |
3月 |
| 1年目 |
垂水中央病院 |
| 総合診療U |
内科 |
| 2年目 |
霧島市立医師会医療センター |
| 小児科 |
救急科 |
総合診療U |
| 3年目 |
瀬戸内町へき地診療所 |
| 総合診療T |
10. 専門研修の評価について
専門研修中の専攻医と指導医の相互評価は施設群による研修とともに専門研修プログラムの根幹となるものです。
以下に、「振り返り」、「経験省察研修録作成」、「研修目標と自己評価」の三点を説明します。
1)振り返り
多科ローテーションが必要な総合診療専門研修においては3年間を通じて専攻医の研修状況の進捗を切れ目なく継続的に把握するシステムが重要です。具体的には、研修手帳の記録及び定期的な指導医との振り返りセッションを1?数ヶ月おきに定期的に実施します。その際に、日時と振り返りの主要な内容について記録を残します。また、年次の最後には、1年の振り返りを行い、指導医からの形成的な評価を研修手帳に記録します。
2)経験省察研修録作成
常に到達目標を見据えた研修を促すため、経験省察研修録(学習者がある領域に関して最良の学びを得たり、最高の能力を発揮できた症例・事例に関する経験と省察の記録)作成の支援を通じた指導を行ったりします。専攻医には詳細20事例、簡易20事例の経験省察研修録を作成することが求められますので、指導医は定期的な研修の振り返りの際に、経験省察研修録作成状況を確認し適切な指導を提供します。また、施設内外にて作成した経験省察研修録の発表会を行います。
なお、経験省察研修録の該当領域については研修目標にある7つの資質・能力に基づいて設定しており、詳細は研修手帳にあります。
3)研修目標と自己評価
専攻医には研修目標の各項目の達成段階について、研修手帳を用いて自己評価を行うことが求められます。指導医は、定期的な研修の振り返りの際に、研修目標の達成段階を確認し適切な指導を提供します。また、年次の最後には、進捗状況に関する総括的な確認を行い、現状と課題に関するコメントを記録します。また、上記の三点以外にも、実際の業務に基づいた評価(Workplace-based
assessment)として、短縮版臨床評価テスト(Mini-CEX)等を利用した診療場面の直接観察やケースに基づくディスカッション(Case-based discussion)を定期的に実施します。また、多職種による360度評価を各ローテーション終了時等、適宜実施します。
更に、年に複数回、他の専攻医との間で相互評価セッションを実施します。
最後に、ローテート研修における生活面も含めた各種サポートや学習の一貫性を担保するために専攻医にメンターを配置し定期的に支援するメンタリングシステムを構築します。メンタリングセッションは数ヶ月に一度程度を保証しています。
【内科ローテート研修中の評価】
内科ローテート研修においては、症例登録・評価のため、内科領域で運用する専攻医登録評価システム(J-OSLER)による登録と評価を行います。これは、期間が短くとも研修の質をできる限り内科専攻医と同じようにすることが、総合診療専攻医と内科指導医双方にとって運用しやすいからです。
12ヶ月間の内科研修の中で、最低40例を目安として入院症例を受け持ち、その入院症例(主病名、主担当医)のうち、提出病歴要約として10件を登録します。分野別(消化器、循環器、呼吸器など)の登録数に所定の制約はありませんが、可能な限り幅広い異なる分野からの症例登録を推奨します。病歴要約については、同一症例、同一疾患の登録は避けてください。
提出された病歴要約の評価は、所定の評価方法により内科の担当指導医が行います。 6ヶ月の内科研修終了時には、病歴要約評価を含め、技術・技能評価、専攻医の全体評価(多職種評価含む)の評価結果が専攻医登録・評価システムによりまとめられます。その評価結果を内科指導医が確認し、総合診療プログラムの統括責任者に報告されることとなります。
専攻医とプログラム統括責任者がその報告に基づいて、研修手帳の研修目標の達成段階を確認した上で、プログラム統括責任者がプログラム全体の評価制度に統合します。
【小児科及び救急科ローテート研修中の評価】
小児科及び救急科のローテート研修においては、基本的に総合診療専門研修の研修手帳を活用しながら各診療科で遭遇するcommon diseaseをできるかぎり多く経験し、各診療科の指導医からの指導を受けます。 3ヶ月の小児科及び救急科の研修終了時には、各科の研修内容に関連した評価を各科の指導医が実施し、総合診療プログラムの統括責任者に報告することとなります。 専攻医とプログラム統括責任者がその報告に基づいて、研修手帳の研修目標の達成段階を確認した上で、プログラム統括責任者がプログラム全体の評価制度に統合します。
【指導医のフィードバック法の学習(FD)】
指導医は、経験省察研修録、短縮版臨床評価テスト、ケースに基づくディスカッション及び360度評価などの各種評価法を用いたフィードバック方法について、指導医資格の取得に際して受講を義務づけている特任指導医講習会や医学教育のテキストを用いて学習を深めていきます。
11. 専攻医の就業環境について
基幹施設および連携施設の研修責任者とプログラム統括責任者は専攻医の労働環境改善と安全の保持に努めます。
専攻医の勤務時間、休日、当直、給与などの勤務条件については、労働基準法を遵守し、各施設の労使協定に従います。さらに、専攻医の心身の健康維持への配慮、当直業務と夜間診療業務の区別とそれぞれに対応した適切な対価を支払うこと、バックアップ体制、適切な休養などについて、勤務開始の時点で説明を行います。
研修年次毎に専攻医および指導医は専攻医指導施設に対する評価も行い、その内容は鹿児島大学病院総合診療専門研修管理委員会に報告されますが、そこには労働時間、当直回数、給与など、労働条件についての内容が含まれます。
12. 専門研修プログラムの改善方法とサイトビジット(訪問調査)について
本研修プログラムでは専攻医からのフィードバックを重視して、研修の改善を行うこととしています。
1) 専攻医による指導医および本研修プログラムに対する評価
専攻医は、年次毎に指導医、専攻医指導施設、本研修プログラムに対する評価を行います。また、指導医も専攻医指導施設、研修に対する評価を行います。専攻医や指導医等からの評価は、専門研修プログラム管理委員会に提出され、専門研修プログラム管理委員会は改善に役立てます。このようなフィードバックによって、研修をより良いものに改善していきます。
なお、こうした評価内容は記録され、その内容によって専攻医に対する不利益が生じることはありません。 専門研修プログラム管理委員会が必要と判断した場合、専攻医指導施設の実地調査および指導を行います。評価にもとづいて何をどのように改善したかを記録し、毎年3月31日までに日本専門医機構に報告します。
また、専攻医が日本専門医機構に対して直接、指導医やプログラムの問題について報告し改善を促すこともできます。
2) 研修に対する監査(サイトビジット等)・調査への対応
本研修プログラムに対して、日本専門医機構からサイトビジット(現地調査)が行われます。その評価にもとづいて、専門研修プログラム管理委員会で研修の改善を行います。プログラム更新の際には、サイトビジットによる評価の結果と改良の方策について日本専門医機構に報告します。
また、同時に、総合診療専門研修プログラムの継続的改良を目的としたピアレビューとして、総合診療領域の複数のプログラム統括責任者が他の研修プログラムを訪問し観察・評価するサイトビジットを実施します。その際には専攻医に対する聞き取り調査なども行われる予定です。
13. 修了判定について
3年間の研修期間における研修記録にもとづいて、知識・技能・態度が専門医試験を受けるのにふさわしいものであるかどうか、症例経験数が日本専門医機構の要求する内容を満たしているものであるかどうかを、専門医認定申請年の5月末までに専門研修プログラム統括責任者または専門研修連携施設担当者が専門研修プログラム管理委員会において評価し、専門研修プログラム統括責任者が修了の判定をします。 その際、具体的には以下の4つの基準が評価されます。
- 研修期間を満了し、かつ認定された研修施設で総合診療専門研修TおよびU各6ヶ月以上・合計18ヶ月以上、内科研修12ヶ月以上、小児科研修3ヶ月以上、救急科研修3ヶ月以上を行っていること。
- 専攻医自身による自己評価と省察の記録、作成した経験省察研修録を通じて、到達目標がカリキュラムに定められた基準に到達していること。
- 研修手帳に記録された経験目標が全てカリキュラムに定められた基準に到達していること。
- 研修期間中複数回実施される、医師・看護師・事務員等の多職種による360度評価(コミュニケーション、チームワーク、公益に資する職業規範)の結果も重視する。
14. 専攻医が専門研修プログラムの修了に向けて行うべきこと
専攻医は、研修手帳及び経験省察研修録を、専門医認定申請年の4月末までに専門研修プログラム管理委員会に送付してください。専門研修プログラム管理委員会は、5月末までに修了判定を行い、6月初めに研修修了証明書を専攻医に送付します。専攻医は、日本専門医機構の総合診療科専門医委員会へ、専門医認定試験受験の申請を行ってください。
15. Subspecialty領域との連続性について
様々な関連するSubspecialty領域については、連続性を持った研修が可能となるよう、現在進行中で検討されていますので 、その議論を参考に当研修プログラムでも計画していきます。
16. 総合診療科研修の休止・中断、プログラム移動、プログラム外研修の条件
様々な関連するSubspecialty領域については、連続性を持った研修が可能となるよう、現在進行中で検討されていますので 、その議論を参考に当研修プログラムでも計画していきます。
(1)専攻医が次の1つに該当するときは、研修の休止が認められます。
研修期間を延長せずに休止できる日数は、所属プログラムで定める研修期間のうち通算6ヶ月までとします。
なお、内科・小児科・救急科・総合診療T・Uの必修研修においては、研修期間がそれぞれ規定の期間の2/3を下回らないようにします。
(ア)病気の療養
(イ)産前・産後休業
(ウ)育児休業
(エ)介護休業
(オ)その他、やむを得ない理由
(2)専攻医は原則として1つの専門研修プログラムで一貫した研修を受けなければなりません。
ただし、次の1つに該当するときは、専門研修プログラムを移籍することができます。
その場合には、プログラム統括責任者間の協議だけでなく、日本専門医機構への相談等が必要となります。
(ア)所属プログラムが廃止され、または認定を取消されたとき
(イ)専攻医にやむを得ない理由があるとき
(3)大学院進学(博士課程)など専攻医が研修を中断する場合は専門研修中断証を発行します。再開の場合は再開届を提出することで対応します。
(4)妊娠、出産後など短時間雇用の形態での研修が必要な場合は研修期間を延長する必要がありますので、研修延長申請書を提出することで対応します。
17. 専門研修プログラム管理委員会
基幹施設である鹿児島大学地域医療学には、専門研修プログラム管理委員会と、専門研修プログラム統括責任者(委員長)を置きます。専門研修プログラム管理委員会は、委員長、副委員長、事務局代表者、および専門研修連携施設の研修責任者で構成されます。研修プログラムの改善へ向けての会議には専門医取得直後の若手医師代表が加わります。専門研修プログラム管理委員会は、専攻医および専門研修プログラム全般の管理と、専門研修プログラムの継続的改良を行います。専門研修プログラム統括責任者は一定の基準を満たしています。
【基幹施設の役割】
基幹施設は連携施設とともに施設群を形成します。基幹施設に置かれた専門研修プログラム統括責任者は、総括的評価を行い、修了判定を行います。また、専門研修プログラムの改善を行います。
【専門研修プログラム管理委員会の役割と権限】
- 専門研修を開始した専攻医の把握と日本専門医機構の専攻医の登録
- 専攻医ごとの、研修手帳及び経験省察研修録の内容確認と、今後の専門研修の進め方についての検討
- 研修手帳及び経験省察研修録に記載された研修記録、総括的評価に基づく、専門医認定申請のための修了判定
- 各専門研修施設の前年度診療実績、施設状況、指導医数、現在の専攻医数に基づく、次年度の専攻医受け入れ数の決定
- 専門研修施設の評価に基づく状況把握、指導の必要性の決定
- 専門研修プログラムに対する評価に基づく、専門研修プログラム改良に向けた検討
- サイトビジットの結果報告と専門研修プログラム改良に向けた検討
- 専門研修プログラム更新に向けた審議
- 翌年度の専門研修プログラム応募者の採否決定
- 各専門研修施設の指導報告
- 専門研修プログラム自体に関する評価と改良について日本専門医機構への報告内容についての審議
- 専門研修プログラム連絡協議会の結果報告
【副専門研修プログラム統括責任者】
プログラムで受け入れる専攻医が専門研修施設群全体で20名をこえる場合、副専門研修プログラム統括責任者を置き、副専門研修プログラム統括責任者は専門研修プログラム統括責任者を補佐します。
【連携施設での委員会組織】
総合診療専門研修においては、連携施設における各科で個別に委員会を設置するのではなく、専門研修基幹施設で開催されるプログラム管理委員会に専門研修連携施設の各科の指導責任者も出席する形で、連携施設における研修の管理を行います。
18. 総合診療専門研修特任指導医
本プログラムには、鹿児島大学地域医療学分野に3名の総合診療専門研修特任指導医がいる他、関連施設の各医療機関にも在籍しております。
指導医には臨床能力、教育能力について、7つの資質・能力を具体的に実践していることなどが求められており、本プログラムの指導医についても総合診療専門研修特任指導医講習会の受講を経て、その能力が担保されています。
なお、指導医は、以下の(1)〜(7)のいずれかの立場の方で卒後の臨床経験7年以上の方より選任されています。
(1) 日本プライマリ・ケア連合学会認定のプライマリ・ケア認定医、及び家庭医療専門医
(2) 全自病協・国診協認定の地域包括医療・ケア認定医
(3) 日本病院総合診療医学会認定医
(4) 日本内科学会認定総合内科専門医
(5) 大学病院または初期臨床研修病院にて総合診療部門に所属し総合診療を行う医師(日本臨床内科医会認定専門医等)
(6) 5)の病院に協力して地域において総合診療を実践している医師
(7) 都道府県医師会ないし郡市区医師会から≪総合診療専門医専門研修カリキュラムに示される「到達目標:総合診療専門医の7つの資質・能力」について地域で実践してきた医師≫として推薦された医師
19. 専門研修実績記録システム、マニュアル等について
【研修実績および評価の記録】
プログラム運用マニュアル・フォーマットにある実地経験目録様式に研修実績を記載し、指導医による形成的評価、フィードバックを受けます。総括的評価は総合診療専門研修カリキュラムに則り、少なくとも年1回行います。
鹿児島大学地域医療学分野にて、専攻医の研修内容、目標に対する到達度、専攻医の自己評価、360度評価と振り返り等の研修記録、研修ブロック毎の総括的評価、修了判定等の記録を保管するシステムを構築し、専攻医の研修修了または研修中断から5年間以上保管します。
20. 専攻医の採用
【採用方法】
鹿児島大学病院総合診療専門研修プログラム管理委員会は、毎年7月ごろから説明会等を行い、総合診療科専攻医を募集します。
プログラムへの応募者は、10月1日までに研修プログラム責任者宛に所定の形式の『鹿児島大学病院総合診療専門研修プログラム応募申請書』および履歴書を提出してください。原則として11月中に書類選考および面接を行い、採否を決定して本人に文書で通知します。
応募者および選考結果については12月の鹿児島大学病院総合診療専門研修プログラム管理委員会において報告します。
申請書は、(1)電話で問い合わせ(099-275-6898)、(2) e-mailで問い合わせ(ecdr-jimu@umin.ac.jp)、の方法で入手可能です。
【研修開始届け】
研修を開始した専攻医は、各年度の5月30日までに以下の専攻医氏名報告書を、鹿児島大学病院総合診療専門研修プログラム管理委員会(ecdr-jimu@umin.ac.jp)に提出します。
● 専攻医の氏名と医籍登録番号、専攻医の卒業年度、専攻医の研修開始年度(様式1)
● 専攻医の履歴書(様式2)
● 専攻医の初期研修修了証
専門医研修内容
1.専攻医の受入数について
当プログラムでは、毎年2名定員としています。今後増員を考えています。
2.施設群における専門研修コースについて(
図2)
専門研修は、大学病院をはじめ垂水中央病院、県立大島病院、鹿屋医療センター、 霧島市立医療センターなどで主に総合診療Uや内科の研修を行います。専門研修2年目は、垂水中央病院や鹿児島県立大島病院など、比較的規模の大きい総合病院の総合診療部門において、総合診療専門研修Uや、市立病院や霧島市立医師会医療センターなどで小児科や救急科の研修を行います。3年目からは、下甑手打診療所、里診療所、上甑診療所、野間池診療所、郡へき地出張診療所、永田へき地出張診療所、瀬戸内町へき地診療所、奄美市住用国民健康保険診療所、南さつま市立坊津病院、肝付町立病院、卓翔会記念病院、サザン・リージョン病院、宮上病院において、総合診療専門研修Tを行います。希望があれば6ヶ月は、それまでの研修で習得できていない知識や技能を補うために、内科・小児科・救急科以外の領域別選択研修も行えます。なお、総合診療専門研修TとIIの施設の中には、内科、小児科、救急科を研修できる施設もあります。
なお、地域枠や自治医科大学出身 の先生の場合は、義務を早期に終了するために鹿児島大学病院での研修を行わず、例えば1年目に鹿児島県立病院群で総合診療U、小児科、救急科の研修を行い、2年目と3年目に総合診療Tと内科の施設で研修することにより、義務を果たしながら、総合診療専門医を取得することも可能です。(
図2(別))
郷中プログラムの研修期間は3年間としていますが、修得が不十分な場合は修得できるまでの期間を延長することになります。
3.専門研修の評価について
専門研修中の専攻医と指導医の相互評価は施設群による研修とともに専門研修プログラムの根幹となるものです。
以下に、「振り返り」、「経験省察研修録作成」、「研修目標と自己評価」の三点を説明します。
1)振り返り
多科ローテーションが必要な総合診療専門研修においては3年間を通じて専攻医の研修状況の進捗を切れ目なく継続的に把握するシステムが重要です。
具体的には、研修手帳の記録及び定期的な指導医との振り返りセッションを数ヶ月おきに定期的に実施します。その際に、日時と振り返りの主要な内容について記録を残します。また、年次の最後には、1年の振り返りを行い、指導医からの形成的な評価を研修手帳(J-GOAL)に記録します。
2)経験省察研修録作成
常に到達目標を見据えた研修を促すため、経験省察研修録(学習者がある領域に関して最良の学びを得たり、最高の能力を発揮できた症例・事例に関する経験と省察の記録)作成の支援を通じた指導を行ったりします。専攻医は、7つの資質・能力に関し所定の書式で経験省察研修録を作成することが求められますので、指導医は定期的な研修の振り返りの際に、経験省察研修録作成状況を確認し適切な指導を提供します。また、施設内外にて作成した経験省察研修録の発表会を行います。
3)研修目標と自己評価
専攻医には研修目標の各項目の達成段階について、研修手帳を用いて自己評価を行うことが求められます。指導医は、定期的な研修の振り返りの際に、研修目標の達成段階を確認し適切な指導を提供します。また、年次の最後には、進捗状況に関する総括的な確認を行い、現状と課題に関するコメントを記録します。
また、上記の三点以外にも、実際の業務に基づいた評価(Workplace-based assessment)として、短縮版臨床評価テスト(Mini-CEX)等を利用した診療場面の直接観察や、ケースに基づくディスカッション(Case-based
discussion)を定期的に実施します。また、多職種による360度評価を各ローテーション中に、適宜実施します。これらは実務評価の実際として修了判定に必須となっています。
更に、年に複数回、他の専攻医との間で相互評価セッションを実施します。
最後に、ローテート研修における生活面も含めた各種サポートや学習の一貫性を担保するために専攻医にメンターを配置し定期的に支援するメンタリングシステムを構築します。メンタリングセッションは数ヶ月に一度程度を保証しています。
【内科ローテート研修中の評価】
内科ローテート研修においては、症例登録・評価のため、内科領域で運用する専攻医登録評価システム(Web版研修手帳:J-OSLER)による登録と評価を行います。これは、期間が短くとも研修の質をできる限り内科専攻医と同じようにすることが総合診療専攻医と内科指導医双方にとって運用しやすいからです。
12ヶ月間の内科研修の中で、最低40例を目安として入院症例を受け持ち、その入院症例(主病名、主担当医)のうち、提出病歴要約として10件を登録します。分野別(消化器、循環器、呼吸器など)の登録数に所定の制約はありませんが、可能な限り幅広い異なる分野からの症例登録を推奨します。病歴要約については、同一症例、同一疾患の登録は避けてください。
提出された病歴要約の評価は、所定の評価方法により内科の担当指導医が行いますが、内科領域のようにプログラム外の査読者による病歴評価は行いません。
12ヶ月の内科研修終了時には、病歴要約評価を含め、技術・技能評価、専攻医の全体評価(多職種評価含む)の評価結果が専攻医登録・評価システムによりまとめられます。その評価結果を内科指導医が確認し、総合診療プログラムの統括責任者に報告されることとなります。 専攻医とプログラム統括責任者がその報告に基づいて、研修手帳の研修目標の達成段階を確認した上で、プログラム統括責任者がプログラム全体の評価制度に統合します。
【小児科及び救急科ローテート研修中の評価】
小児科及び救急科のローテート研修においては、基本的に総合診療専門研修の研修手帳を活用しながら各診療科で遭遇するcommon diseaseをできるかぎり多く経験し、各診療科の指導医からの指導を受けます。
3ヶ月の小児科及び救急科の研修終了時には、各科の研修内容に関連した評価を各科の指導医が実施し、総合診療プログラムの統括責任者に報告することとなります。
専攻医とプログラム統括責任者がその報告に基づいて、研修手帳の研修目標の達成段階を確認した上で、プログラム統括責任者がプログラム全体の評価制度に統合します。
【指導医のフィードバック法の学習(FD)】
指導医は、経験省察研修録、短縮版臨床評価テスト、ケースに基づくディスカッション及び360度評価などの各種評価法を用いたフィードバック方法について、指導医資格の取得に際して受講を義務づけている特任指導医講習会や医学教育のテキストを用いて学習を深めていきます。
4.終了判定について
3年間の研修期間における研修記録にもとづいて、知識・技能・態度が専門医試験を受けるのにふさわしいものであるかどうか、症例経験数が日本専門医機構の総合診療科研修委員会が要求する内容を満たしているものであるかどうかを、専門医認定申請年の5月末までに専門研修プログラム統括責任者または専門研修連携施設担当者が専門研修プログラム管理委員会において評価し、専門研修プログラム統括責任者が修了の判定をします。
その際、具体的には以下の4つの基準が評価されます。
- 研修期間を満了し、かつ認定された研修施設で総合診療専門研修TおよびU各6ヶ月以上・合計18ヶ月以上、 内科研修12ヶ月以上、小児科研修3ヶ月以上、救急科研修3ヶ月以上を行っていること。
- 専攻医自身による自己評価と省察の記録、作成した経験省察研修録を通じて、到達目標がカリキュラムに定められた基準に到達していること。
- 研修手帳に記録された経験目標が全てカリキュラムに定められた基準に到達していること。
- 研修期間中複数回実施される、医師・看護師・事務員等の多職種による360度評価(コミュニケーション、チームワーク、公益に資する職業規範)の結果も重視する。
5.Subspecialty領域との連続性について
様々な関連するSubspecialty領域については、連続性を持った研修が可能となるように、2019年度を目処に各領域と検検討していくこととなりますので、その議論を参考に当研修プログラムでも計画していきます。
専門医研修施設
本研修プログラムは鹿児島大学病院を基幹施設とし、様々な地域の多様な連携施設で構成されます。施設は全て鹿児島県内に位置しています。
【専門研修基幹施設】
鹿児島大学病院が専門研修基幹施設となります。
【専門研修連携施設】
郷中プログラムの施設群を構成する専門研修連携施設は
表1の通りです。全て、診療実績基準と所定の施設基準を満たしています。
【専門研修施設群】
基幹施設である鹿児島大学病院と上記のように鹿児島全域の連携施設により専門研修施設群を構成します。体制は
図1のような形になります。
研修の中止・中断、プログラムの異動、プログラム外研修の条件
(1)専攻医が次の1つに該当するときは、研修の休止が認められます。研修期間を延長せずに休止できる日数は、所属プログラムで定める研修期間のうち通算6ヶ月までとします。なお、内科・小児科・救急科・総合診療T・Uの必修研修においては、研修期間がそれぞれ規定の期間の2/3を下回らないようにします。
- 病気の療養
- 産前・産後休業
- 育児休業
- 介護休業
- その他、やむを得ない理由
(2)専攻医は原則として 1 つの専門研修プログラムで一貫した研修を受けなければなりません。ただし、次の 1つに該当するときは、専門研修プログラムを移籍することができます。その場合には、プログラム統括責任者間の協議だけでなく、日本専門医機構・領域研修委員会への相談等が必要となります。
- 所属プログラムが廃止され、または認定を取消されたとき
- 専攻医にやむを得ない理由があるとき
(3)大学院進学など専攻医が研修を中断する場合は専門研修中断証を発行します。再開の場合は再開届を提出することで対応します。
(4)妊娠、出産後など短時間雇用の形態での研修が必要な場合は研修期間を延長する必要がありますので、研修延長申請書を提出することで対応します。
専門医資格の更新条件
(1)有効な医師国家資格および臨床研修修了実績を有する者
(2)下記の資格書類審査が認められる
A. 認定プログラム、またはカリキュラム制を定めた認定施設における研修修了の証明書
B. 研修の実績証明
C.研修の達成度評価記録(修得すべき知識・技能・態度などの到達目標を達成したか否かについての評価)
D.教育研修修了実績(日本専門医機構が認定する共通講習)
※総合診療専門研修のプログラム期間中に、他の基本領域の専門医の更新の際に受講した共通講習は、総合診療専門研修プログラムの教育研修として認める
E.学術業績(総合診療における学会発表や論文等)
F.医師免許証(写し)
※B.および C.については、J-GOAL、総合診療版 J-OSLER を使用する。ただし、2018 年度、2019 年度研修開始者については別途定める。
※特任指導医が移行措置を経て認定される場合に必要な書類については別途定める。
(3)総合診療専門医認定試験に合格している。筆記試験、面接試験などによる資格審査
(4)日本専門医機構の専門医管理システム(JMSB Online System+)上で研修実績が承認されている
(5)専門医認定料を支払っている